第100話 予定が変わってしまいました。

 エルフの引っ越しを終え、落ち着いてきたので、続きの街道の整備計画を行うことにした。

 最終目的地はクルーム伯爵領都、オピオ。途中オセレを経由する。

 最終的にはアーネコス村からオピオまで道を繋いでもいいな。

 俺は一人で整備するつもりだったが、グレアとノワルのケモノーズが付いてきた。


 魔力ケーブル敷設時にもそうだったが、暇だったんだろうな。

 最近はエルフが働いてくれるのであまり仕事が無い。


 オセレ行きの道は意外と直線である。

 ただ、馬車一台がギリギリで通れる程度なので、地の精霊に言って俺の一歩幅でオセレまでの硬化した道を作ってもらった。


 おぉ、ごっそり魔力が減る。


「アリヨシ様! 道が!」

 急にドリスからパスが繋がった。

「おお、悪い悪い。

 街道の整備中なんだ。

 アーネコス村からオセレ村までの道って馬車一台でやっとって感じだったろ?

 だから、道を広げて道も石にしようかと思ってる。

 クルーム伯爵公認でやってるんだ」

「びっくりしました。

 村人が『道が急に広がった』と報告に来たのです。

 外に出ると、凄く道が広くなってて……」

「本当に悪かった。

 事前に言っておけばよかったな。

 そう言えば、代官が来る話は聞いてるか?」

「代官?」

 俺から言わなきゃいかんかったかな?

「オセレ村にはドリスの部下として代官が一人くるから。

 ドリスは俺んちに住んでもらう。

 表向きはベアトリスの護衛ね。

 だからみんなと住める」

「えっ、えっ。そんな話聞いていません」

「ん、もう少ししたら連絡が来るかもしれない。

 これももっと早く言っておけばよかったな」

「わかりました。

 素早く入れ替わりができるように準備しておきます」

「あと、その道、石敷きに変えるから、また村人が驚くかも」

「村人から連絡が来たら、『安心しろ』と言っておきます」

 パスが切れたので、今度はメイスを使い、出来上がった道を石敷きに変える。

 再びごっそり魔力が無くなった。

 パスをドリスに繋ぎ、

「ドリス、石敷きに変わったか?」

 と聞いてみた。

「はい、先ほど村人が報告に来まして、実際に私も確認しました。

 平らな見事な道です」

 ドリスちょっと興奮気味?

「よかった、それじゃそっち行くぞ」

「えっ、何でですか?」

「オセレ村から領都の間も道を整備するから、そっちに行かないといけない」」

「それじゃ待ってます」

 ドリスの嬉しそうな声が聞こえた。


「暇じゃの、久々にアリヨシの肩で行くか」

「私もご主人様の肩に乗ります」

 二人は人化し、飛びついて肩に乗った。

 俺はオセレ村へ向け歩く。

 魔力が結構減ったので、魔力回復のための時間を稼ぎたかったからだ。

「グレア、ノワル、お前等スレイプニルの居る所を知らないか?」

「ご主人様、私はわかりません」

 グレアは申し訳なさそうに言った。

 知らなければ仕方ないと思うのだが。

 そこがグレアらしいところなのかもしれない。

われは知っておるぞ?

 確か八本足の馬じゃったの。

 スレイプニルは魔力を足場に空を駆ける」

「ドリスもそんなことを言っていた」

 ピクリと反応するケモノーズ。

「ドリス?

 何でそこでドリスが出てくるのじゃ?」

「そうです、どうしてドリス様が?」

 ケモノーズが聞いてきた。

「ドリスが移動するときにはグレアかノワルに乗らないと移動できないだろ?

 一人で俺んちに来ることができないのを気にしていたんだ」

「ドリス様も、そのようなこと気にしなくてもいいのに。

 頼んでいただければすぐにでも向かいますのに……」

「じゃな、ドリスも気にしすぎじゃ。

 それにドリスも我らと一緒に暮らすのじゃろ?

 じゃったら馬なぞ要らんのでは?」

「そうだなあ、でも『誰かに会いに行きたい』とか『どこかへ行ってみたい』とか思った時に自由に行けない、誰かに頼らなければいけないのは嫌なんじゃないかな?

 だから移動手段が欲しかったんじゃない?」

「うーん、そうじゃのう。ドリスもアリヨシに会いたいのじゃな」

「ドリス様は一人離れていますから……ご主人様に会いたいのです」

 ケモノーズは頷いていた。


 面と向かって『俺に会いたいから』と言われると照れるな。


「まあ、そういうわけで、スレイプニルを手に入れたいんだ」

「しかしな、アリヨシよ、スレイプニルは気が荒い。

 ドリスが御せられるかな?

 それに慣れるまでに時間がかかるかもしれぬぞ?」

 ノワルは腕を組み、難しそうな顔をして言った。

「あいつなら乗りこなすよ。

 だって、あいつは騎士だぞ?」

「アリヨシはドリスを信用しておるのう」

「俺はドリスだけじゃない、グレアもノワルもウルもベアトリスも信用する。

 だからみんながやりたいことをできるように手伝いたいとは思う。

 無理なものは無理なんだろうけどね」

「私もアリヨシ様と皆を信用しています」

 尻尾ブンブンで答えるグレア。

「それを言うならわれもじゃ」

 ノワルが頷いた。


「で、スレイプニルはどこに居るんだ?」

われの元家の近くじゃの。

 数頭の群れでおったと思うぞ。

 われはそ奴らを食おうとしたが、すばしっこく逃げよった」

 と怒ったように言ったので、

「結局逃げられたわけね」

 というと、

「なっ、そんなわけがなかろう。

 逃がしてやったのじゃ。

 今のわれならすぐにつかまえられるぞ」

 ノワルが誤魔化す。


 んー、多分逃げられたな。


「ご主人様と私とノワル様で捕まえれば大丈夫ではありませんか?

 それこそ群れごと捕まえれば」

 グレアが言う。

「アリヨシよ、どうする?

 オセレに行くかわれの元家に行くか選べ」

 まあ、どっちにするかなどすでに決まっているが。

「ドリスが喜んで皆が楽しそうなのは……ノワルの元家じゃないか?」

 俺が笑いながら言うと。

「じゃな」

「ですね」

 ケモノーズの二人はニヤリと笑って同意した。


「ドリス、ちょっと用事ができてな。

 今から出かける。

 ちゃっちゃと終わらせてドリスのところに行くつもりだけど。

 遅くなっても心配しないように」

「わかりました。でも用事とは?」

 急遽予定変更になったのでドリスはちょっと心配しているようだ。

「内緒だ。

 でも悪いようにはしないから、期待して待っているように」

 というとドリスが納得したのか、

「はい、お待ちしております」

 と返事が返ってくるのだった。


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