第32話 ドリスに聞いてみることにしました。
エルフと人が戦い、エルフ側が劣勢だったのはインストールされた知識で知っているのだが、その後は知らない。
というか、その戦争からどのくらい経ったのかもわからないのだ。
で、今のエルフの立ち位置ってどういう感じなんだろう……。
「グレア、ノワル、エルフってどういう立場?」
「ご主人様、私にはわかりかねます」
「
その昔人とエルフが戦争をしたというのは聞いたことがあるが……」
とグレアとノワルが困った顔。
「こういう時は、ドリスだね」
政務に勤しんでいたら申し訳ないが……。
「おーい、ドリス。今、大丈夫」
パスで声をかけると、
「あっ……」
というドリスの焦った声のあと、
「ええ、大丈夫です」
少し落ち着いた声で返事が返ってくる。
「『あっ』が気になるんだが……」
「ちょっと手紙を失敗してしまいました」
ドリスの残念そうな声が聞こえる。
「申し訳ないな。
大事な手紙じゃなきゃいいんだけど」
「書き直しはできますので……」
と明るいドリスの声が聞こえる。
何とかなるならいいのだが……。
そのあと、
「それで、用事なんですよね」
と聞いてきた。
「そうそう、聞きたいことがあるんだが」
「何でしょう?
答えられることだといいのですが……」
少し自信なさげである。
早速、
「この世界のエルフの立場ってどんな感じなのか知りたいんだが」
と聞いてみた。
「エルフ?
どうかなさったので?」
ドリスが聞き返すので、
「ちょっとエルフを拾ってしまってね。
現在のエルフの扱われようを知りたかったんだ」
と俺が言うと、しばらく沈黙が続く。
そして、
「そうですね……。
五百年前の人とエルフで争った前大戦でエルフ側が負けたのち、生き残ったエルフたちはバラバラになり森深くの集落に数十人単位で固まって住んでいることが多いと聞きます。
元々エルフの数は増え辛いうえに、魔法などの技術も廃れているため、危機とは思われず放置されている感じです。
ただ、人が勝利して以降はエルフを見下す傾向があるのは否めません」
俺の研究が放置されてから五百年以上も経つのか……。
「街に出てもエルフは差別されるわけだな」
「すべての人がそうではありませんが、差別する者は居るでしょうね。
エルフは見雌麗しいので、権力者が奴隷として囲うこともあります」
狩られる立場?
「エルフをどうしたらいいと思う?」
と聞くと、
「私にはわかりません」
と返ってきた。
確かに、俺が決めることだろうな……。
「ただ、グレア殿やノワル殿のようにアリヨシ様の巫女として置いておけば問題ないのでは?」
ドリスが提案してくるが、
「それは別にいいんだが、食事とかがなぁ。
服とかも無いし。
金も無い」
いろいろ問題がある。
「そうですねぇ、エルフの服は私が準備しましょう。
あと食事は調理道具があればなんとかなるのではないですか?」
「それはわからない」
「調理道具も準備します。
私も少しぐらいは料理ができるので、もしそちらに行った時使うこともあるでしょう」
ドリスが提案してきた。
「そうしてもらえると助かるな」
と言うと、
「お任せを!」
と嬉しそうな返事。
そして追加で、
「お金に関しての提案があるのですが……」
とドリスが言ってきた。
「ドリス、提案って?」
「あのー、アリヨシ様、冒険者登録なさいませんか?」
「冒険者?」
「はい、私の村にも小さいながら冒険者ギルドがあります。
そこで冒険者登録して依頼をこなせばお金が入ります。
ノワル殿を従えるアリヨシ様ならドラゴンでも討伐できるでしょう?
ついでにグレア様もノワル様も冒険者登録しておけばいいのです。
ギルドカードは身分証明としても使えますから便利ですよ?」
ほう、金が入るか……。
そうだなぁ、熊スーツだけってのも問題ありなんだよなぁ。
おとがいに手を当てて考える。
熊スーツは暖かく冬場は最高の服ではあるが、洗い替えが無く困っていた。ちょっと臭くなっている気がする。
春になれば再び裸の〇将ルックで動くことになるだろう、横チ〇モード再開となる。
せめてズボンぐらいは欲しいのだ。
「食材とかも買えるし、お金は必要だな。
わかった、冒険者になろう」
「やった!これで、アリヨシ様がこの村に足を運ぶ理由ができる」
ドリスの声が聞こえたあと、「ドン!」勢いよく何かに当たりガタガタと何かが落ちる音。
「あぁ……」
と悲しげな声が聞こえてくる。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です」
本当に大丈夫かよ?
少し心配になる。
「それにしても『やった!』って何?」
と聞くと、
「いや、こっちの話です」
何だか顔を赤くしてモジモジしているドリスが思い浮かぶが、
「いい性格じゃないな」
と苦笑い。
「それじゃ、明日にでも皆で村に行かせてもらうよ。
その時にエルフの服を調達できるといいんだが」
「わかりました、こちらで準備しておきます。
お待ちしてますね」
妙に弾むドリスの声を気にしながらパスを切ったのだった。
さて、なんでエルフとパスがつながったのかね……。
メイド・イン・エルフだからかね……。
そんなことを考えながらのんびりする俺だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます