第107話 バレていました。

「ここでの取引はルンデル商会以外を使わないようにしたいんだが、何かあるか?」

 デニスさんを見ると、

「魔符であれば問題ないでしょう」

という。

「魔符?」

「登録された者同士が魔符に触れると青く光ります」

「登録されていない者が魔符に触れると赤く光ります。

 相手を登録する必要がありますが人を確認するにはいいと思います。

 次に来るときに準備しておきますしょう」

 デニスさんがニコリ。

 勘合符のような感じかね? 


「わかったよ、魔符のことはデニスさんに任せる」

 というと、

「畏まりました」

 とデニスさんが頭を下げた。

 これでルンデル商会とのつながりが強くなりそうだ。


 そんなとき、言い辛そうにしているデニスさんにきづいて、

「何かある?」

 と聞くと、

「あと一つお願いが」

 と言っておれを見る。

「お願い?

 デニスさん何?」

「早急にこの場所へルンデル商会の支店を作りたいと思うのですがよろしいでしょうか?」

 と聞いてきた。

「俺はいいと思うが、ベアトリスは?」

「私もいいと思います。

 日用品が常時手に入るのはいいことだと思います」

「デニスさん、こっちは問題ない。

 ただ、ここは人間が少ない場所だ。

 利益になるかわからないが『それでいいのなら?』という前提になるが?」

「私は商人です。

 品物が取引できるのであれば、巨人でも問題ありません」

 チラリと俺を見るデニスさん。

 ありゃ、バレてる。


「よく知ってるな」

 と目を細めると、

「先日、巨人が道を作ったと言う噂が立ちました。

 それもわざわざオピオからアーネコス村までの道でございます。

 しかしその巨人は今はおりません。

 考えられるとしたら、何らかの手段で人に化けているということ。

 そういえば、ベアトリス様が誰も使えない魔道具を二束三文で買われたと言う噂がありましたね。

 それは確か体の大きさを変えられるスプーン。

 消費魔力が大きく、使おうとしても使えず、結局確認さえできなかった魔道具だそうです。

 さて、誰がお使いなのでしょうか?」

 デニスは俺の首にかかったスプーンを見てニヤリと笑った。

 食えないオッサンだ。


「俺だよ」

 俺が素直に言うと思わなかったのかデニスは驚いていた。

「まあ、デニスさんが種族を気にしないのならばこちらは助かるよ。

 できれば今後もいい取引ができればいいな」

「はい、よろしくお願いします」

「こちらこそだ」

 俺はデニスさんと握手を交わす。

 そして、アーネコス村に数日間滞在して生活雑貨を売った後、砂糖と岩塩を引き取って帰っていった。

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