第23話 魔物の群れが現れたようです。

 ある日、ふと気づくと俺のレーダーに敵性がある赤い光点が帯のようになって近づいて来ていた。

「ノワル?

 すごい数のなにかがこちらに向かっているようなんだが?」

「たまに何らかの理由で膨大な魔力を得ることで魔物が増殖することがある。

 もしかしたらそれかもしれんな」

 俺は知らなかったが、この世界の魔物はたまに異常発生するらしい。

 特にスライムやゴブリンのような底辺にある魔物が異常発生する傾向があるらしい。

 蝗害というトノサマバッタの異常発生みたいなものだろうか?

 膨大な魔力……そういえば、あの辺ですっきりしたことがあったな……。

 もしかしたら俺の魔力で……ということは考えないことにしよう。


「グレア、爺さん村長に魔物が近づいていると連絡してきてくれ。

 村の対処方法があるだろう。

 後は俺とノワルで時間を稼ぐ」

「ご主人様わかりました」

 そう言うとグレアが村へ向かう。


「ノワル、上空から魔物の確認を頼む」

 と言うと、

「わかったのじゃ」

 ノワルは魔物に向けて飛んで行った。


 さて、俺はと……。


 走って村と魔物の間に入り、そこでメイウル(壁を作る魔法)をぶちかます。

 厚さ二メートル、高さ十メートル長さ視界から消えてるけど……どれくらい? な壁が出現した。

「アリヨシよ、やりすぎじゃ!

 川まで届いておったぞ?」

 ノワルが呆れている。万里の長城とまではいかないが壁ができたようだ。

「んー魔力の加減がわからんのだ。

 申し訳ない」

 仕方ないので頭を掻く。

「まあ、敵はゴブリンだったがの。

 あの壁のお陰でこちらには入れんようじゃ。

 あとはアリヨシと殲滅じゃな」

「お待たせしましたご主人様。

 村長に連絡が終わりました」

 風のように走ってきたグレア。

「おう、相手はゴブリンらしいからな、皆に暴れてもらおうかね」

 巨大な狼のグレアがゴブリンを蹴散らしながら走ると、その周りの温度が低下し凍結する。

 ブラックドラゴンのノワルが上空からブレスを吐けば、周囲のゴブリンが燃え上がる。

 俺はというと、踏みつぶしている感じ。


 んーなんかカッコ悪い。

 レイ?

 ふとそんな言葉が頭に浮かんだ。


 レーダー上に浮かぶゴブリンと思われる赤い光点に〇(まる)が付く。

 エースコンバッ〇みたいにロックオンしたような……。

 ここに魔法が当たるのか?


「レイ!」

 そしてゴブリンたちの上にレンズのようなものができる。

 そこに俺の魔力が飛び、収束、ピンポイントで頭を魔力の光が貫通した。

 体から何かが抜ける感覚……これが魔力を使うって感じかね?

 今まで感じなかった感覚と言うことは、この魔法は結構な魔力を使うらしい。


「アリヨシ、何やった?」

 目を大きく開け、驚いた顔のノワルが下りてくる。

「レイって魔法を使ったんだが……」


 んー戦術的魔法?

 戦略的魔法?

 どっちなんでしょ。

 農作業用巨人には必要ないものだよな……。


「さすがご主人様、ゴブリンたちは全滅です」

 尊敬のまなざしで俺を見上げるグレア。

「出鱈目な強さじゃな!あの数を一撃とは」

 ノワルも驚いていた。

「思い浮かんだ魔法を使ってみただけなんだがねぇ。

 まあ、村に何事もなかったってことでいいんじゃない?」


「これどうするよ?」

 見えないところまで広がる十メートルの高さがある壁。

 それを見たノワルが、

「まあ、この壁があれば村側が安全になるじゃろうの。さっき周辺の魔物を殲滅したじゃろ?」

 ノワルがそう言う。

「ほう、確かにな。

 周辺に魔物が居なければこの辺は安全か……」

「でも、ゴブリンの死肉を求めて大きな魔物が来る可能性があります」

 グレアが意見してきた。

「どうすればいい?」

 俺が訊ねると、

「ご主人様、そう言いましても、私やノワルさん、ご主人様にかなう魔物は出てくることが無いでしょう。

 とりあえず監視でいいのではないでしょうか?

 程々の魔物であれば、私やノワルさんの食事になります」

 現状維持ね。

「わかった。

 悪いがグレア、ゴブリンは何とかなったと爺さん村長に連絡してきてくれ」

「ハイです! 行ってきます」

 そう言ってグレアが村の方へ走り去った。


 俺の周りを見渡すと壁の村側には針葉樹林と街道沿いにある平野。

「とりあえず開墾するにはいい場所になったって訳か」

「そういう事じゃな。水源もおぬしの所があるからの」

 壁から遠くに見える村を眺めながら、

「一度村長に声掛けするかなぁ。

 人手が居ないで開墾……なんてのは困るだろうしね」

 と言うと、

「そうじゃのう。

 でもお主なら、木を引き抜くことも容易かろう?」

 ノワルが俺の顔を覗き込む。

「俺が開墾しろと?」

「そういう事じゃ、目的が無く暇なんじゃろ?」

 と言って口角を上げた。


 見抜かれてるね。


「まあ、何もすることが無くてゴロゴロしているよりはいいか」

 そう言うと俺はホールに帰るのだった。

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