第129話 顔合わせをしました。
俺はアデラを肩に乗せ換えると、家へ向かう。
ワイバーンは俺の上を飛んでいた。
「『来ちゃった』じゃないだろうに」
「それは……ワイバーンに乗ってたら……道を外れて……気が付いたらここに来てた」
「何で俺見つけて突っ込んできた」
「居るはずのないアリヨシが居たから……」
「無理な言い訳だな……要は会いに来たんだろ?」
アデラはコクリと頷いた。
「アリヨシ、あのドラゴンは?
私が倒したドラゴンなんか比じゃない。
羽が四枚あるドラゴンなんて聞いたことがない」
「あいつ、バハムートだからな」
「伝説級じゃないか!
あんなのがあなたの傍に居る?
バハムートって一度、この世界を破壊し尽くしたって物語があるのだぞ!」
アデラは驚いて目を丸くする。
「ノワルはブラックドラゴンからバハムートに進化したから、その物語のバハムートとは違うな。
八百歳を超えている程度らしい。
だから現有戦力で帝国を潰せるって言っただろ?
ちなみにフェンリルとエルフ、あと人が二人居る。
女房がたくさんいると言ったはずだ。
アデラ、押しかける気なら気合入れておけよ」
まあ、まだ女房じゃないけどな。
ホールの前にたどり着くと、ノワル、グレア、ベアトリス、ドリス、ウルの五人が揃っていた。
ノワルはバハムートの、グレアはフェンリルの姿で座っていた。
威圧感満載である。
俺はその真ん中にアデラを降ろすと俺も人サイズに戻る。
すると、俺の後ろにワイバーンも降りてきた。
「この前話に出た、アデラだ。帝国の姫様で『龍血』の二つ名で呼ばれる騎士だな」
俺が言う。
それを聞くベアトリスは静かなる怒りをたたえているように見えた。
「アリヨシ様、それは聞きましたし、覚悟もしておりました。
ただ、早すぎます。
結婚を強要された時に亡命をしてくると聞いておりましたのに……。
この女性……アデラ様はワイバーンに乗ってきたと言っておりましたが、そのワイバーンを与えたのがアリヨシ様だとノワルさんから聞いております。
どういう意図でワイバーンをお与えになったのですか?」
うわ、怖い。
「砂糖を納品に行った時に、ウラノスに乗って行った訳だ。
ノワルに聞いたかもしれないが、スレイプニルを仲間にしたときに会った騎士にここの事とかを言われた訳だ。
まあ、俺はアデラにそこら辺の事を言ってなかったから、『嘘は無いか?』と聞かれたので、巨人の姿を見せるために森に行った。
そこにウラノスに乗って行った時、空を飛べる魔物が欲しいという話になってな。
たまたま近くに居たワイバーンを手懐ける結果になった訳だ」
「要するに、会いに来る要因を作ったのはアリヨシ様なのですね」
「まっまあ、そういうことになるな」
あっ、やっぱり怒ってる……。
「アリヨシ様、イーサの町からここまで来るのに数日かかります。
アデラ様はその町の騎士たちの司令官と聞いています。
常識として司令官が何日も不在になるわけにはいきません。
時間が壁になりアデラ様はここに来なかったのでしょう」
ウンウンと頷いているアデラ。
あっ、こいつ敵に回った。
裏切りやがったな。
でも、俺もこの状況ならベアトリスにつくだろうなぁ……。
「それなのに、空を飛ぶ魔物を手に入れ、少し飛べばここに来られるようになれば、アリヨシ様を好いているアデラ様が我慢できるとお思いですか?
見たところ、常識はあっても少々筋肉系のようです。
思い立ったら我慢できなかったのでしょう」
再び頷くアデラ。
「そう、ワイバーンという魔物を得て、思うように飛べるようになったら、どうしても欲が出てくる。
アリヨシに会いたくなってな。
慣熟飛行という名目でここまで来てしまったのだ。
ベアトリス様、お騒がせして申し訳ない」
アデラは ベアトリスに頭を下げた。
あっ、こいつベアトリスの軍門に下った。
孤立無援だ。
「いいのです。ワイバーンを渡したアリヨシ様が悪いのです。
アリヨシ様は優しいですから、こうなることも考えてワイバーンをあなたに渡したのでしょう……ねっ、あなた」
ベアトリスの視線が突き刺さる。
「あっ、ああ。アデラの性格だ、近日中来るだろうとは思っていたが、ここまで早いとは思っていなかったがね」
ワイバーンを渡して一週間も経っていない。
その間は思い通りに飛べるようになるため、かなり練習したのだろう。
「それでは、紹介をします。
私がこの辺りを統治するクルーム伯爵の娘、ベアトリス・クルームと言います。
このバハムートがノワル。ノワルさん人化を……」
ベアトリスがそう声をかけると、ノワルが真っ黒なゴスロリ姿に戻った。
「
腰に手を当て、見下ろすようにノワルは言った。
「そして、こちらのフェンリルがグレア。
グレアさん人化を」
グレアも白のゴスロリ姿に戻る。
「グレアです、よろしくです」
グレアは仲間が増えるのが嬉しいのか尻尾をブンブンと振る。
「この二人は巨神……つまりアリヨシ様の巫女として動いてもらっています」
ノワルとグレアが頭を下げた。
「こちらがドリス。騎士です」
ベアトリスが言うと、
「ドリスです。『龍血』の噂はかねがね」
ドリスはアデラと握手をした。
「そして、こちらのエルフがウル」
「ウルです。私と同じですね。
嬉しいです」
ウルはアデラを見て何かに喜んでいた。
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