第87話 今更ながら研究施設の中を漁ることにしました。
エルフの村からの帰りがけ、
「ウル、俺の起動を知るためのタブレット、勝手に持ってきたんだが良かったのか?」
と聞くと、
「私はにとってこれは巨人の起動についてを知る道具でしかありませんでした。
他は父から学んでいません。
扱い方を知らない私には必要ないものです。
アリヨシ様の役に立つのなら使ってください」
とウルがにこりと笑って言う。
適当な石に腰掛け、持って帰ったタブレット端末を触るとパスワードを求められる。
俺の頭の中にある最高位のパスワードを入力すると、画面が開いた。
デスクトップのアプリのようなものをタップしてみるが反応が無い。
タブレットに〇が表示され指を触れるように指示されたので、俺がその場所に触れると、
「魔力確認完了」
の表示が出た。
パスワードと認証が必要だったようだ。
と言うか俺の生体情報、いつどうやって登録されていたのやら。
まあ、使えたんだからいいけど……。
デスクトップを見て見ると、様々なフォルダーが制作されていた。
エルフ王家の家系図や法律。
武器や機材の使用方法などなど……。
使えると思ったものを急いで入れ込んだのか、統一性はない。
中には思わず押してしまいそうになる俺の自爆スイッチ。
「機動の段取りがあるとはいえ、こいつはデスクトップに置いておくのは怖い。
押すな押すなというものほど押したくなるもの……。
裏に隠しておこう。
皆に話しておいて、いつか俺が制御不能になったときに使ってもらうかね……」
と独り言を言いながら操作する俺。
そんな中、エルフの都市や基地、研究所などの位置が入った地図があった。
その位置をタップすると詳細が表示される。今俺がいるこの場所は、元々ペンドルト研究所と言う場所だということがわかる。
軍事と農業を掛け合わせて研究していたらしい。
研究施設内にあるものも写真で表示され、その中には農業機械があることもわかった。
兵器や武器もあるがその辺は後だな……。
「おっ……見たことがあるトラクターにハーベスター、乾燥機に脱穀機。
トラックなんかもあるな。
ただ、魔力を使うから、扱えるのはエルフだけかと思いきや、魔力タンクがあるため、一定の時間であれば魔力が無くても運転ができる。
整備マニュアルは俺の頭の中にあるな。
整備して使えるようになれば、大豆や麦の収穫も楽になる」
再び独り言。
「何をぶつぶつと……。
その手にあるのはウルさんがお持ちになった『たぶれっと』というものでは?」
ベアトリスが俺に聞いてきた。
「そうそう、これってエルフが繁栄していたころの知識が詰まっているんだ。
五百年の間にその知識は廃れたようだが、俺にはその知識があるからね。
中を見ていると、農作業に有用な機材があってね、俺が生まれた施設の中を探して使えるようにしようかと思ったわけだ」
「『そういえば、エルフの遺跡は使えないものばかり』とお父様がおっしゃっていたと思います。
使おうとすると魔力を吸われ、気絶するらしいのです」
「そりゃ、エルフ仕様の機器だからね。
魔力量ではエルフのほうが上でそれを基準にして作ってある。
だから、人間では扱いきれないんだろう。
魔力タンクの魔力が尽きた機械は運転者から魔力を得る設定になっているから、人間の少ない魔力だとすぐに魔力枯渇になるんだろうな」
こんな感じでベアトリスと話をしていると、
「私には無理でしょうか?」
ベアトリスが聞いてきた。
「今は無理。
今のところ身近で扱えるなら、俺かノワル、グレア、ウル、あと移住してくるエルフたちのような魔力を多く持つ者だろうな。
とはいえ、魔力を溜める部品に魔力を溜めればベアトリスでも扱えるかもしれない。
期待して待ってて」
「そうですか!」
期待の目で俺を見る。
「多分だからね。
でも、ベアトリスが使うならこういう機械じゃなくタブレットのほうかな。
もしかしたら、計算機のようなものもあるかもしれない。
ああ、そういえば中にパソコンがあったから、使えるかもしれない。
使えそうなら今度使い方を教えよう。
そうすれば事務処理が格段に速くなるだろう」
「はい、お願いします」
ベアトリスが頷いた。
「さて、大きな体では探せなかったホールの中を漁ってみますか」
俺は立ち上がると、
「私も行っても?」
ベアトリスにのぞき込まれた。
「まあ、変なものは無いと思うが……崩れたりするかもしれない、危ないぞ?」
と言うと、
「大丈夫です。
そんな時はグレアさんやノワルさんが居ますから」
ベアトリスが振り向くと、建物の影かからニッと笑ったグレアとノワルが現れる。
そして、ウルまで……。
「要は暇なんだな」
「「「「そうでーす」」」」
四人は頷いた。
結局五人で中に入ることになった。
ウルが光の精霊に頼んで周囲を照らすなか、廊下を歩いた。
「まずは魔力炉かな」
と言う俺に、
「なぜ、魔力炉なのじゃ?」
ノワルが聞いてきた。
「この施設に魔力を供給していたのは魔力炉。
それが生きていれば、この施設が生き返るわけだ。
想像だが、この施設を放棄するときに魔力炉は止めてあるはず」
「魔力炉というものを止めれば魔力供給がなくなるのじゃろ?
それなのに、アリヨシは五百年もの間どうやって魔力を得ていたのじゃ?」
「それは、魔力炉から発生した魔力を溜める魔力タンクがある。
その魔力タンクに溜まっていた魔力で俺は生きていたんだと思う。
それが尽きたから、俺は強制的に起こされたんだろう」
腐ってやがる。
早すぎたんだ……。
という状況でなくて良かった。
魔力炉を再起動して、魔力タンクにも施設にも魔力を流すことで生きている部分を使えるようにしたい。
そうすれば、エルフの農具が使えるようになるってわけ。
なんて言ってもうちの働き手はエルフだけ。
ならば機械を使って少ない人数でも広い畑を管理できるようにしないとね」
俺とノワルの話を聞いてベアトリスにウル、グレアもうんうんと頷いていた。
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