第117話 街に入りました。
次の日、朝早く俺は縮小化しアリーダと共にグレアの背中に居た。
今回は珍しく熊スーツではなく、市民的な服を着る。
ベアトリスが見立ててくれた服だ。
帝国の町に溶け込みやすいということなのだろう。
グレアの背にリュックを三つ固定してある。
砂糖と塩を入れていた。
行商人として中に入るためだ。
ノワルの移動には負けるが、グレアの移動も速い。
体感で時速百キロ以上出ているんじゃないだろうか。
俺はアリーダを抱えるようにして、グレアの毛を掴んでいた。
アリーダの村があったクレーターを越えしばらく走ると丘が見えた。
その頂きから見下ろすと、円形の外壁を持った町が見える。
一応、王国の最前線だからなのか外壁が異様に高い。
巨人状態の俺の背ぐらいか。
入口は俺たちが来たアリーダの村側とその反対側、つまり帝国側にもう一つあるのが見えた。
「グレア、一度巨人に戻りたいから、森に入ってくれないか?
少しでも魔力を回復しておきたい」
量としては微々たるものだが、縮小化を続けると魔力を消費してしまう。
一日も居ないつもりだが慎重になる。
「わかりましたご主人様」
そう言うとグレアは森に入り体を伏せる。
俺はグレアから降り地面に仰向けになると巨人に戻り魔力を回復した。
立ったままだと木々の上に頭が出てしまうからだ。
そんな俺の上にアリーダがよじ登り胸の上で寝はじめる。
トト〇かね……。
やはり俺も巨人のままのほうが寝起きはいい。
魔力の回復を終えると、再び人サイズに戻る。
小さくなる途中でアリーダをお姫様抱っこで抱きかかえると、 何が起こったのかわからないアリーダは真っ赤になっていた。
「グレア、帝国側から町に入る」
「畏まりました」
グレアは俺たちを乗せて進み森が切れる所で、
「ここからは私も人化しますね」
グレアはフェンリルの姿から獣人の姿になる。
俺たちと三人はリュックを背負い、森を出て歩いた。
「下を見て、元気が無いように歩いてな」
俺は言う。
「アリヨシ、なんで?」
アリーダが首を傾げて聞いてきた。
「元気な奴隷って聞いたことは無いだろ?
歩き通しの旅をしてきた子供が元気なのも変だ」
アリーダを見ると、
「あっそうか」
アリーダは納得したようだ。
俺たちはイーサの町の入口に着いた。
入り口に並ぶ人は少なく、寂れた町
「街に入るには銀貨一枚、奴隷は一人につき銅貨五十枚。
銀貨二枚を渡せ」
と門番に言われた。
ベアトリスが言うには帝国も王国も貨幣は一緒らしい。
その昔、帝国と王国の中が良かった時に、流通を効率的に行うため貨幣の基準が決められ、そのまま使われているということだ。
ただ、時代によっては金属の含有率を少し下げたりして嵩増ししたものもあるらしく、比較的純度が安定している王国側の貨幣が好まれるということだ。
俺は胸元から銀貨二枚をだし、門番に渡してイーサの町の中に入るのだった。
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