第18話 勘違いされました。

 それからしばらくして、暑い夏も終わり涼しげな風が吹くようになってきた。

 実りの秋だ。

 涼しくなってきたと言っても、今のところ下着だけで何とか過ごせている。

 それでも温かい服は欲しい。

 グレアの体を撫でながらそんなことを考えていた。

 珍しくノワルは家に帰っている。

『巣の結界の点検』とか言っていたな。

 最近、グレアが白の巫女、ノワルが黒の巫女って村人に慕われているようだ。

 

 ただ、美人な二人。

 ある日、村の力自慢で勘違いした男二人が力ずくでグレアとノワルを手籠めにしようとした。

 それも俺の目の前で。


 グレアを襲った男に、

「ダメですよ」

 とにこりと笑ってグレアがボディーに一発。

 前のめりになった男をチョークスリーパーで落とす。

 ノワルを襲った男に、

われはアリヨシの物じゃ!」

 と言いながら足払いをすると、馬乗りになってマウントを取ってビンタ数発。

 手を抜いた数発。

 本気だと首から上がもげる。

 とはいえみるみる頬が腫れる。

 すでに気絶していたが、顎を持って立ち上がるとそのまま地面に叩きつけた。

 五センチほどバウンドする男。

 それを見た別の村人が走る。

 

 あー、村長爺さんに言いに行ったか。

 過剰防衛でなきゃいいが……。

 二人……死んでない?

 というか、この二人に手を出す勇気が凄い。 


 黙って治療しておく。

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「村長!

 白の巫女と黒の巫女に手を出したバカがいます!」

まとめ役の一人が家に飛び込んできた。

「何!

 それは誰だ!」

「ノロウとガレワです」

「村の力自慢の奴らだな!

 何を基準にあの巫女たちに勝てると思ったのだ!

 あの巨神と巫女のお陰でこの村がどれほど助かっているのか知らないのか!」

儂が怒りをあらわにしていると、

「まずは白の巫女と黒の巫女、そして巨神に謝罪しないと……」

まとめ役に言われ、

「チィ……儂の気も知らずに」

と言うと、儂は村人たちに声をかけ、巨神の前に集めた。


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が村の者が巫女様にご迷惑をおかけしてすみませんでした」

 村長爺さんが先頭で頭を下げる。

「巨神は巫女がケガをさせていないか心配しておる」

 とノワルが言う。

 転がる男二人を村人が確認し頷くと、

「問題ないようです」

村長爺さんが言った。

「巨神は怒っておられる。

 この村の者たちが巨神に仕えるものをないがしろにしようとしたことを……。

 豊富な水源が要らないのであれば、巨神はすぐに止められるぞ?」

 ここはノワルの脅し。

 俺は何も言っていない。

 その辺は経験したことがあるのかもしれない。

「いっ……いえ。

 この水源のお陰で干ばつを乗り切ることができました。

 このままこの水源を使えば、畑に使う水の量を増やすことができます。

 水の取り合いで揉めることも少なくなります」

「それならば、なぜこのようなことに!」

 ノワルが強く言うと、

「白の巫女と黒の巫女の美しいお姿に我慢できなくなったのでしょう」

 と言われ、ノワルがすこしニヤけてしまっていた。

「とはいえ、これはこちらの落ち度。

 どのようにすれば」

 村長爺さんが聞いてくる。

「巨神はこちらからも手を出している。

 今回はこれで手打ち。

 今後はこのようなことが無いようにとおっしゃっています。

 もし、また起こるのであれば……」

グレアが言うに合わせて、誰もいない場所にヘルフレアを打つ。

すると巨大な火炎が起こり、爆風が村まで届いた。

唖然とする村人たち。

「「次はないぞ!」」

 とグレアとノワルが言うと、ハハー!と頭を下げる村人たち。

「はい、村の者たちに言い含めておきます」

村長爺さんは地面に頭を擦り付けて言うのだった。


 このあとこの陰で二人にちょっかいを出す者は居ない。


 ノワルとグレアに、

「ここまでしなくて良かったかな?」

 と俺が聞くと、

「神が舐められてはいかん!」

 とノワルが怒っていた。


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