第13話 友達ができたのじゃ!

 いいのう……二人は仲が良さそうじゃ。


 われはアリヨシとグレアを見て思った。

 われも仲良くしてくれるかのう?

 もしかして、既に仲良くしてもらっているのじゃろうか……。


 そんなわれの視線を感じたのか、アリヨシが、

「なんだ?

 何かあるのか?」

 と聞いてきた。


 われはアリヨシとグレアが羨ましかった。

「お前たちは楽しそうじゃのう」

 と聞いてしまう。

「はい、ご主人様と一緒だと楽しいです!」

 無条件に嬉しそうに言うグレア。

「まあ、俺も一人よりもグレアと居たほうが楽しいぞ」

 そう言ってグレアを撫でるアリヨシ。


 うっ、羨ましい……。

 あの撫で……。


 われは知らぬうちに体をモジモジと体を揺すってしまっていた。

 そして、小さな声で我の事を話してしまう。

「あのな、えとな、なんじゃ、その……われはな、一人なのじゃ」

 話を聞いたアリヨシとグレアがウンウンと頷く。

「山の洞窟に一人でな、たまに来る冒険者を相手にする程度なんじゃ」

 再びアリヨシとグレアは頷く。

「冒険者はわれを殺すことしか考えておらん。

 楽しくないのじゃ」

 そう言い終わった後、われはアリヨシとグレアを見た。


 すると、アリヨシは納得したように、

「ふむ……要は寂しいのか?

 ボッチって奴だな」

 と聞聞いてきた。

 心を見透かされたようで恥ずかしいのじゃが、

「そうじゃ、寂しいのじゃ」

 と言うわれ


 続いて、われはアリヨシとグレアを感じた時のことを話し始めた。

われは魔力が感知出来てのう、急にこの辺に大きな魔力を持つものが現れたのじゃ。

 それもわれより大きな魔力。

 そして、その後それよりは小さいが大きな魔力を持つものが一緒になった」

「その後、何か作り上げて、そこに魔力が溜まったのじゃ。

 多分誰かの魔力が流込んで溜まったのじゃろうな」

 われはアリヨシをチラチラと見てしまう。

「それは、俺の魔力が流れ込んでいるんだろうな」

 アリヨシが苦笑い。

「ご主人様の魔力は優しい魔力ですぅ!」

 それを尻尾フリフリでアリヨシを見上げるグレア。

 話を続けて、

「ちょっと気になっての、飛んで来たらの、良質の魔力が溜まった温泉だったのじゃ。」

 と言うと、

「回りくどいな。遠回りしすぎだろ?」

 アリヨシがフンとため息をついた。

 そして、

「要は寂しいから友達になって欲しいと?」

 と再び、われの心を読んだように言った。

「えっ、まあ、何だ、そういう事になるかの」

 われは友達になってくれるかどうかもわからず、なんだか不安で体を揺らし続けた。

 すると、

「いいぞ?」

 アリヨシは答えた。

 まさか……でも……。


「いいや、無理にとは言わないのじゃ」

「だから、いいぞ?」

「いいや、無理にとは言わないのじゃ」

「いいって言ってるだろ?

 な、グレア」

 とグレアに聞くアリヨシと、

「はい、友達になりますよ?」

 尻尾を振るグレア。

 そしてアリヨシとグレアがわれを見る。

 思わず、

「良いのじゃな、われと友達になってくれるのじゃな?」

 と念押しして聞いてしまうわれに、

「だーかーらー、良いって言ってるだろうに!

 くどいぞ!」

 アリヨシはイライラして頭を掴んできた。

 われの頭がミシミシと鳴る。

 あとで聞くに、アイアンクローと言う攻撃だそうな。


「イダダダダ、痛いのじゃ」

 われがアリヨシの手から逃れようと暴れると、

「友達になってやるから、いつでも遊びに来い!」

 そういうアリヨシに

「わかったのじゃ、遊びに来るのじゃ」

 われが言うと、アリヨシが手を外した。

 

 このままでは帰らねばならん。

 でも、われはこの場所が気に入った。

 だから、

「ちなみに泊まっても良いのか?」

 と聞いてみると、

「おう、泊まればいい。

 お前が来るとホールが狭くなりそうだが、それなりに広いんで何とかなるだろう。

 とアリヨシが頷いたあと、

「ただ、食べるものは無いぞ?

 グレアと何とかしてくれ。

 解体ぐらいはする」

 思わず、

「アリヨシわかったのじゃ」

 と頷くわれ


 これは友達じゃ。

 やった!

 われの初めての友達。

 友達ができた!

「友達ができたのじゃ!

 嬉しいのじゃぁー!」

 われは思わず羽をはばたかせ宙を舞ってしもうたが、そんなわれを見上げてアリヨシもグレアもニコニコしていた。


 数日後……。

「なんであれからずっと俺の所に居る?」

 困った顔でわれを見るアリヨシとグレア。

「泊っていいのだろ?

 そう言っていたではないか!」

 われは間違っておらん。


「そうは言ったが、あれから家に帰らず、ずっと泊まり続けるってどういう事?

 お前の家はどうなっているんだ!」

 と聞くアリヨシに、

「我が家より居心地がいいのじゃ。温泉もあるしの。

 温泉は最高じゃ」

 と言いながら温泉を思い出して空を見上げるわれを見て、

「まあ、友達って言った手前もあるが、たまには家に帰れよ?」

 とわれを見るアリヨシ

「考えておくぞ」

 とわれは言うが、帰る気はない。


 だって帰れば一人じゃし……。


 そんなわれの考えを見抜いたのかアリヨシが盛大なため息をつくのじゃった。

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