第48話 求めているものと別のものを見つけました。

 卵確保のためにランニングバードを探すことにする。

 ノワル曰く、

「ランニングバードは人化したわれと同じぐらいか、それよりちょっと大きい位の高さで、走るのは速いが飛べない鳥じゃ。

 地面に巣を作り定期的に数個の卵を生む。飼うにはぴったりじゃろう?」

 自信を持っているのだろう、人化してない胸を張りながら言う。

 話を聞くに、ダチョウを小型化したサイズかな? 

「で、どこにそのランニングバードは居るんだ?」

「ご主人様、ランニングバードは平原と山の境あたりに居ますね。私も何度か狩ったことがあります。雄一羽と雌数羽、そして雛という感じで行動しています」

 グレアが言った。

「そうじゃ、よく知っておるの。

 じゃから群れの一つを捕まえてしまえば、卵は手に入ったも同然となるのじゃ」

「それでランニングバードは何を食べる?」

「ランニングバードが食べるもの?」

「そう、ランニングバードが何を食べているか知らないと飼えないだろ?

 食べさせないと死んでしまう」

「む……」

 ノワルの言葉が詰まると、

「虫や木の実、草だったと思います」

 グレアがフォロー。

「そうじゃ、そんな感じだったぞ!」

 グレアの言葉に頷くノワル。


 ノワル、お前知らんかっただろ?

 言わんけど。


「とりあえず、数羽確保するか……」

 ランニングバードを探すために、俺んちの方から山沿いに移動する。

 そういや俺んちも山際である。

 グレアもノワルも以前見たのが山の方だと言っていた。


 信用するしかないか……。

 俺の肩にはウル。今回はグレアとノワルに人化を解いてもらい、グレアには臭いで、ノワルは上空から監視してもらった。

 俺のレーダーは魔物の種類がわからないので参考程度である。

 グレアもノワルも真剣に探してくれる。


 山沿いにしばらく歩くと、ふと岩の壁の部分に薄いピンク色の結晶が露出していた。

 そういえば、何かのテレビで岩塩が出てたよな。あれが薄いピンク色だった気がする。

 確か不純物により少し色が変わるとか……。


 軽く削り取って舐める。

「おぉ塩だねえ」

 ウルも俺の手についていた結晶を舐めた。

「塩ですね」

「地の精霊、岩塩をきれいに見せてくれる」

 我ながら、適当な指示。

 それでも地の精霊に頼むと、結構な大きさの結晶が露出してきた。


 でかいね。


「どうしよっか」

 肩に居るウルに聞くと、

「ドリスさんに聞いてみては?」

 と言う。

 確かに、ドリスが知ってそう……。

「いい意見。そうしよう」

 俺はさっそくドリスにパスを繋いだ。


「おーいドリス、今、大丈夫?」

 俺は声をかける。

 ドタンバタンと音が聞こえると、

「あっ、何でしょう?」

 とドリスの声が聞こえた。

 急に声をかけたのだ、それは驚くだろう。

「すまんな、驚かせたか?」

「いいえ、私はアリヨシ様の声が聞きたくて待っていました」

「私用でもパスで連絡してもらってもいいからな」

 そう言うとドリスの、

「はい」

 という嬉しそうな声が聞こえる。


 さて、

「塩ってこの辺じゃ高価なの?」

 ドリスに聞く。

「塩ですか?

 内陸部のこの場所では塩は海から持ってくるしかありませんから、必然的に高価になります」

 とドリスが答えた。

「岩塩の鉱脈みたいなの見つけたんだけど、どうしよっか?」

 再び聞くと、

「えっ、それは大変なことです」

 明らかに焦った声が聞こえる。

「私には扱いかねますね。ベアトリス様に聞いてみては?」

 と提案された。


 おう、ベアトリスね。

 確かに、上役に聞くのが筋か……。

 若干たらいまわしだが……。


「一度パスを切るぞ」

「わかりました」

 ドリスの返事が聞こえたらパスを切った。


「ベアトリス。

 今、大丈夫?」

 パスを繋ぐ。

「あっ、はっはい。大丈夫です」

「なんかしてた?

 だったら切るけど」

「いいえ、大丈夫です」

「じゃあ、聞きたいんだけど。

 岩塩の鉱脈ってすごいの?」

 俺が聞くと、

「えっ……」

 ベアトリス声がしばらく止まる。


 多分凄いらしい……。

 

 復旧まで暫く待っていると、

「莫大な富を得ることができますよ!

 内陸部のために塩が高価なこの周辺に売りさばくことができますから」

 とベアトリスが言った。

「んー。その鉱脈を見つけたみたいなんだ」

「えっ、そっそれは本当ですか?」

 ベアトリスの声が焦っている。

「間違いないと思う。

 塩辛かったしな」

「それはどこなのですか?」

「俺の家から山沿いへ歩いた先、そんなに時間はかからなかったけどどうする?」

「どうすると言われましても、お父様に相談しないと……」

「そうすると、俺の話が出る?」

「そういうことになりますね」

「ドリスが見つけたことにしていい?」

 と俺が言うとベアトリスは

「ハア……」

 とため息をつき。

「面倒なのでしょう?」

 とベアトリスの声が聞こえた。

 読まれている……。


「まあ、そういうこと。

 ドリスが従魔の俺の家に来ている時に見つけたってことにしよう。

 うんうん、それがいい」

 俺は見えないのに頷く。

「岩塩の鉱脈を見つけるなど、人であれば相応の地位が約束されると思いますが、アリヨシ様は巨人ですから……」

 と少し考えた後、

「ドリス殿が了承するなら、そういうことにいたしましょう」

 ベアトリスが言うのだった。


「おーいドリス」

 ドリスとパスを繋ぎ、三人で会話できるようにした。

「アリヨシ様何でしょう?

 先程の岩塩の件でしょうか?」


 おっ、話が早い。


「そう、その件でお願いがあるんだが」

「アリヨシ様からのお願い……もちろん受けます」


 決まっちゃったよ。

 でも一応話すか……。


「岩塩の鉱脈を見つけたのはドリスってことでお願いします」

 という。

「えっ、いいのですか?」


 あっ、声が焦ってるねぇドリス。


「もう、受けるって言ったんだから、よろしくお願いします」

「あっ、はい……」

「じゃあドリス殿、父上、つまりクルーム伯爵宛に手紙をお願いします」

 ベアトリスから今後の段取りの説明が入る。

「その後調査のために誰かが……多分私だと思いますが……派遣されるので、現場への誘導をお願いします」

「ベアトリス様了解しました」

 ドリスが了承した。

「あとはこちら側の仕事。

 現地確認後、間違いなく岩塩の鉱脈であり商業的に成り立つのであれば採掘の開始となります。

 そしてそんな岩塩の鉱脈を見つけたドリス殿には褒美があるでしょう」

 ベアトリスからの説明が終わった。


 ドリスが何か思いついたようだ。

「それならば、アリヨシ様の家と農地の周辺の土地を貰えるようにしたいですね。

 そうすれば一緒に暮らせます」

 おぉ、考えたねえ。

「ドリス殿、それはずるい。

 私だってアリヨシ様の家と農地をお父様にお願いしようと思ったのに」

 あなたもですか。

「俺的には、自分の土地にしたいかな」

「あっ」

「ん? どうしたドリス」

「いいことを思い付きました。

 アリヨシ様は私の従魔ですから見つけたのはアリヨシ様にして私が報告。

 それで褒美が出たときにアリヨシ様の家と土地を保証してもらう。

 ベアトリス様どうでしょう?」

「いいですね、私とドリス殿がアリヨシ様の保証人になれば、状況確認ということで家や農地に行けますから……」

「でしょう?」

 二人の意見が一致した。

「「それでいいですね?」」

 有無を言わさぬ勢いで二人が俺に聞いてくる。

「……はい」

 そして俺は二人の威圧感に負けた。


「ベアトリス様、早速手紙を書きます」

「こちらは、お待ちしています」

 早速、計画発動のようだ。

 まあ、ここが俺の土地になるなら問題ないけどね。

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