第38話 開墾しました。

 ノワルに依頼して村長に開墾する意思があるかを確認しに行ってもらった。

 俺は結局暇なので、横になって傍で横になるグレアの頭を撫でる。

「ご主人様、気持ちいいです」

 グレアがそう言って体をすり寄せてくる。

 ウルはグレアの腹の上で横になっていた。

「ウル、グレアの腹の寝心地はどうだ?」

「アリヨシ様、最高です。

 ドリス様が準備してくれた服もいいですね」

 ちなみにウルはドリスに貰った村娘風の服を着ている。

 そして、フワフワのグレアの腹でゴロゴロするウル。

 そういや、俺たち基本ゴロゴロだな。


 そんなことをしていると、

「アリヨシ、村長は『開墾できるなら助かるが、人手が足りないと思う』と言うておったぞ。

『もしアリヨシがそこを開墾するのなら、好きにしてもよい』とも言うておった」

 ノワルは俺を見つけるとそう言った。

「んー、暇なんだよね。

 時間はあるから開墾するか……」

 俺は立ち上がると、ナイフを持って先日作った壁に向かう。ウルは俺の肩に乗り、グレアとノワルは元の姿でついてくる。

 今日はやることがある。

 それがちょっと嬉しかった。


 巨人である俺の前にドラゴンのノワル、フェンリルのグレアが並ぶ。

 ちなみにウルは俺の肩。

 そして、

「今日は開墾をします。

 俺とノワルは木の伐採。

 多分引き抜けると思います」

 と言うと、

「わかったのじゃ」

 返事をするノワル。

「グレアは、開墾する場所の周囲でおしっこしてもらえる?」

 と頼むと、

「おしっこですか? なぜ?」

 首を傾げて聞いてきた。

「それは、この辺をグレアの縄張りだと主張してもらいたいんだ」

「ああ、縄張りをつくるんですね。

 最近ではこの辺を縄張りにしていますけど、追加でやっておきます」

 グレアは納得する。

「そう、そうすれば弱い魔物が近寄って来ないだろ?」

「確かに、縄張りを作れば弱い魔物は近寄ってきませんね。

 わかりました、やっておきます」

 グレアがやる気満々で頷いた。


「ウルはどうする?

 とりあえず俺の肩に居て、できそうなことがあったら言って」

 と言うと、

「わかりました」

 ウルは頷く。

 結局俺の肩で待機という事になった。


 壁の前に来ると、俺は草を引くように木を引き抜く。

 ノワルは俺を手伝い、グレアは壁の向こう側に消えていく。

 マーキングに行ったのだろう。


 意外と簡単に抜けるもんだな……。


 邪魔になりそうな木を引き抜き、引き抜いた木は並べて置いておく。

 後で木材にすればいいだろう。

「アリヨシ、燃やせばいいんじゃないのか?」

 ノワルが聞いてきたが、

「確かに灰は肥料になるかもしれないが、木材として売るほうがお金になったり、村で建築に使われるかもしれない。

 後で村長に聞こう」

 俺が作った防壁の内側に広大な平地ができた。そこをサッカーコート位に区切る。六面できた。

「土地を起こしたり畝を作ったりするのは村人にお願いするかな」

 俺がそう言うと、

「私が耕します」

 俺の肩でウルが呪文を唱え始めた。

 区切った地面がボコボコと動き出す。

 ああこれは畑を魔法で耕しているのか。

「精霊に手伝ってもらったのか?

 魔力は大丈夫か?」

「アリヨシ様、凄いんです。

 温泉に入ってから魔力が上がってるんです。

 魔力があるから地の精霊たちがよく話を聞いてくれるんです」

 興奮気味のウル。

「なんで?」

 俺が聞くと、

「アリヨシ、あの温泉はお主の魔力が溶け込んでおる。

 その温泉に浸かっておるのじゃ。

 エルフは半精霊と言われておる、何ぞ影響があってもおかしくあるまい?」

 ノワルが言う。


「ってことは、

 下流で魔物とかが温泉を飲んだら影響があるとか?」

 と聞きなおすと、

「影響が無いとは言えんの。

 ただ、魔物が温泉を飲むことは無い。

 水源が無くどうしても喉が渇いたときぐらいではないかの」

 ノワルが言った。

「あっ、そう言えば水不足の後にギガントベアが出ただろ?

 それも関係してるとか?」

「それはわからぬ。

 しかし、たまたまじゃろうて」

 穴掘り魔法のメイピと塹壕魔法のディトでそれぞれの土地で水が使えるように溜池と水路を作る。

 あとは俺んちの水路とこの土地の溜池を繋いだ。


 おお、水が溜まるねぇ。


 水路と溜池は石化魔法のメイスで石化しておいた。

 人がやったらどのくらいかかるのやら……と思うことを俺は数時間で終わらしてしまう。

 農業用として俺は凄いんだろうな。


 ふと壁向こうを見て、


 そう言えば、壁で仕切られていた街道はどうなってるんだろ。

 物流が滞っていなければいいんだが……。


 そんなことを思ってしまい、

「ノワル、村長じいさんは街道の事は何か言ってなかったか?」

 と聞くと、

「いいや、特に何も言うておらんかったぞ」

 とのこと。


 って事は、あまり重要な街道ではないのかな? 

 そのままでいいか……。


 と考えていると、

「ご主人様、終わりました」

 グレアが帰ってきた。

「ありがとな。これで弱い魔物は近寄って来ないだろう」

 満足である。


 ウルのお陰で土の中に空気が入りふかふかの畑ができた。

 ただ、まだ春までは時間がある。

「何か食いたい野菜はある?」

 ノワル、グレア、ウルに聞いてみた。

 すると、

われは野菜は好かん」

「ご主人様、私も苦手です」

 ノワルとグレアが言う。


 フェンリルのグレアが玉ねぎ食ったら大変なことになるのだろうか?

 食べさせないほうがいいだろうな。


「私は小麦や大麦を作りたいです」

 おお、唯一まともな意見のウル。

 ウルが言うんだから小麦や大麦はあるんだな。

 大豆ができれば、豆乳や豆腐……味噌に醬油。

 調味料が充実する。

 わくわくしてしまう。


 野菜系は前の世界のものがあると考えていいのだろうか?

 デカい土地で三圃制をやるのも有りか。ただ土地が痩せている。

 肥料とかも無いからなぁ。

 今の時期なら牛糞でも漉き込んだら少しは違うような気がするんだが……。

「あとで、ドリスに聞いてみよう」

 結局ドリス頼みの俺たちであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る