第61話 ドリスを村に帰しました。

 まあ、簡単な食事なので、すぐに朝食が終わる。

「ちょっと言いたい事があるんだ。

 と言っても知らないのはドリスとウルだけかな?」

 皆が俺に注目する。

「俺の事を言っておこうと思う。

 今居るのは俺の大事な人だから。

 俺はこの世界に来る前、別の世界に住んでいたんだ。

 そこで事故をして、魂だけ飛んできてそんで巨人になった。

 色々知ってるのは前の世界の知識と巨人になった時に刷り込まれた知識を使ってる。

 わかった?」

「ご主人様、別にあなたがどこから来ていてもいいのです。

 あなたは強く優しいですから。

 あなたと一緒に居たいのです」

「じゃのう、アリヨシは強く優しくなければ、意味がない」

「オークに襲われ、もう犯され殺されるしかなかった私を助けてくれました」

「アントン様の無茶な条件に困っている私を、助けてくれました」

「賊に襲われていたのを助けてくれました。要は、皆あなたと一緒に居たいんですよ」

 ベアトリスが言う。


 そんな感じなのはなんとなくわかっていたが……。

 こういう時は……ちゃんと……意思表示。


「みんなの意志はわかった。

 ちなみにグレアとノワルには言っていたんだが、家を作ろうと思う。

 皆が住める家をね。

 皆が腹を決めてるのに、俺だけダラダラって訳にもいかないだろう?

 まずは、ここの土地と農地を手に入れないと」

 と話すと、

「岩塩鉱山がどうなるか楽しみですね。そう言えばドリスさんの手紙が来ていたようです。

 そろそろ、動きがあるかもしれませんね」

 ベアトリスが言った。

「さあ、解散だ。

 ノワル、俺とドリスとベアトリスの三人を乗せることはできるか?」

「簡単じゃ」

 ノワルは無い胸を張る。

「じゃあ、ノワルと俺は、ドリスとベアトリスを送る」


「じゃあ私は?」

「私もです」

 グレアとウルが聞いてくるので、

「グレアとウルは留守番。

 時間があったら農場を見ておいて」

 と言うと、

「ご主人様、了解です」

「アリヨシ様、わかりました」

 頷いた。

 そして、俺たちはノワルの背に乗りドリスの村へ向かう。


 ドリスとベアトリスの事を心配しているのか、いつもよりゆっくりなノワル。

 逆にそのお陰で、感じる風が心地よかった。

 とはいえかなりの速度でノワルは飛んでいる。

 遠くに見えた村がどんどん大きくなり、いつも俺が待機している門の前に降りた。

「ドリス様ぁ、お泊りになるなら先に言っておいてください、わたくし心配しましたぞ?」

 下男が走り出てくる。

「すまん、ちょっと飲み過ぎてな。

 帰れなくなってしまった」

「まあ、ドリス様もお年頃ですから、楽しんでこられたのなら良かったです」

 俺をチラチラ見る下男。


 熊スーツを着た俺がいつもの巨人だとは思わないようだ。

 コスプレしているとでも思ってるのかね? 


「じゃあ、行くぞ。何かあったらパスでな」

 と言うと、

「ありがとうアリヨシ、楽しかった」

 すれ違いざまにドリスがキスをすると、ノワルから降りる。

 俺を見送るその顔は赤い。


 すれ違いざまが多いな……。


 そして、ノワルが羽ばたき領都にむかうのをドリスは手を振りながら見送ってくれた。

「ドリスさん、やりますね」

「確かにやるのう」

 ウンウンとノワルとベアトリスが頷いているのだった。


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