第105話 魔物の価値は……。
時間はちょっと遡る……。
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私はクルツ。
巨人の村で働くエルフをまとめている者と言えばわかりやすいな。
いつも通りアリヨシ様の畑や家畜の世話、砂糖の製造、岩塩の採掘の見回りをしていた時、ノワル様が帰って来て何かを置いた。
確かドリス様という騎士の治める村まで道を作る手伝いに行ったはず。
そんなことを思って見ていると、
「ノワル様、どうかなさったので?
道を作りに行ったはずでは?」
私と同じことを考えたのかベアトリス様がやって来た。
「ゴールドゴートを捕まえてのう……。
価値がある魔物なら家畜にするも良し、そうでないのならば食べればいいと思ったのじゃ」
ノワル様は手に掴んだゴールドゴートを地面に置くと人の姿に戻った。
「ゴールドゴートですか!
ゴールドゴートの毛と言えば細い毛並みでその毛で布を作れば冬温かく夏は涼しい万能の下着になると聞きます。履き心地も最高だとか……。
しかし、人里離れた山奥に居るため、めったに見つからず、王族でさえめったに手に入れることができないとか……。
貴重な下着のため、何代にもわたって使われることもあるほど……」
ベアトリス様がそう言った後、何かに気付いたようだった。
「しかし、なぜゴールドゴートが居るようなところに?
道など作る予定の場所ではないはず」
ベアトリス様に聞かれ、
「そうなのだがのう……。
ドリスが欲しがっておるものを捕まえに行こうとアリヨシが言いだしてのう……。
それが居る場所が、
申し訳なさそうに言うノワル様。
すると、
「ドリス様が欲しがっているものとは?」
ベアトリス様に言われ、
「スレイプニルじゃ。
今はグレアとアリヨシが探して居る。
これを届けたら、
とノワル様は言った。
ベアトリス様は大きくため息をつくと、
「ゴールドゴートは冒険者に狩られるのが常。
生きたまま山奥運ばれるのは難しいでしょう。
生きたままのゴールドゴートなら……」
と溜めた後、
「クルツさん?」
と言って私を見た。
えっ……気付かれていた?
私は森に生きるエルフだぞ?
気付かれないように気配を消していたのに……。
私は驚いてしまい、
「あっ……はい」
と変な返事をしてしまう。
「ゴールドゴートの毛で布を作ることはできますか?
ウルさんがエルフは布も作ることができると言っていました」
「はい、可能かと思います。
見たところ体毛も長いので、その毛から糸を取り、布にすれば問題ないかと……」
「わかりました」
ベアトリス様がノワル様を見る。
そして、
「ノワルさんそういうことですので、ゴールドゴートの毛には価値があります。
ですから、家畜としてここ飼うことにします」
ベアトリス様が言った。
何だか重いものを感じてしまう。
「畏まったのじゃ。
それでは、
と言うと、
「こりゃ、逃げんとのう……」
小声で言った後、ノワル様は全速力で飛んでいったのだった。
「そんなに急がなくてもいいのに……」
ノワル様の勢いで巻き上がったほこりを払いながらベアトリス様が言う。
「にしても、ゴールドゴートなんて……。
普通に肉と毛皮を売るだけでも一財産なのに、捕まえてくるとは……」
と呟いた後、
「クルツさん、後のことはお願いします。
できればルンデル商会が品物を納めに来る前に少量でもいいのでゴールドゴートの布を作っておいてもらえると助かります」
私のほうを見て言った。
私は、
「かしこまりました」
と頭を下げるしかなかった。
「もう、ドリス様のためにやるのはいいですが、私にも一言あっていいはず。
パスがあるのですから……。
しかし、考えようによってはこれも実績ですね。
ここにお金が集まるのはいいことです。
私もアリヨシ様のために頑張らねば!」
ベアトリス様の雰囲気が変わるのだった。
結局のところ、ベアトリス様がアリヨシ様に、
「もう何頭かゴールドゴートが居ると助かります」
と頼んでいた。
「はい!」
とアリヨシ様の顔が少し怯え、ノワル様と共にゴールドゴートを捕まえてくる。
ゴールドゴートってそんなに簡単に見つかるものなのだろうか……。
一生に一度見られればいいような魔物だったはず。
それもエルフがである……。
十頭ほどになったゴールドゴートは広げられた牧場の一角で飼われることになった。
そして我々エルフたちはその毛を刈り、布を作ることになる。
人員って、今のエルフの人数で足りるのだろうか……。
仕事が増えてちょっと心配である。
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