第11話 何かが来ました。
たまにレーダーに映る魔物を狩って温泉に入るか、何も無ければその日はのんびりグレアと温泉に入るのが日課になる。
魔物を狩るのはグレアの仕事。
それにしても俺もグレアも長々と風呂に入っているのにのぼせないのはなぜ?
この日も特に何の目的もなくこの日もグレアとのんびり温泉に入っていた。
前の俺には無かった時間。
「さて、そろそろ出るかな、グレアも出るか?」
「はいです!」
「ブルブルは向こうでやってくれよ?
終わったらこっちへ来い拭いてやるから」
俺は脱いだ下着で体を拭き、ホールに入って新しい下着に着替える。
できたら上に羽織るような服も欲しいんだが……。
人から見上げられたら、まず間違いなく隙間からチ〇コが見える。
苦笑いしながら下着を着替え終わったころ、
「ご主人様、ブルブルは終わりました」
と言うグレアの報告。
「おう、俺の下着で悪いが体を拭くぞ」
グレアの体をごしごしと拭いた。
一度魔法で何とかしようとしたが丁度いい温風が出ず、グレアがヤケドしかけたので、結局拭き上げは俺の下着になっている。
ただ、
「あぁ、ご主人様の匂いで包まれます……」
と恍惚の表情のグレア。
そこで目が細くなる理由って……。
温泉入っているから臭いはしないはずなんだがねぇ……。
まあグレアは銀狼だからにおいに敏感なのかもな。
グレアの様子を見ながら拭き終わる。
「はい、終わり」
「えっ、もうおわり?」
「ああ、ほぼほぼ乾いたからな」
「残念です」
ついでに下着を軽く洗って、よく絞ってその辺の木に引っかけておく。
「グレアの毛って最初のころは灰色に見えたんだが、本当は奇麗な銀色なんだな」
フワフワになった毛が銀色に輝く。
「私は銀狼ですよ。
進化するとフェンリルになれるんですよ?
銀色でなくてどうするんです?」
ドヤ顔になるグレア。
そんなグレアを見ながら、
「フェンリルか……カッコいいな」
と言うと、
「魔法も使えるようになります。
お父さまはフェンリルだったんです。
水や雪の魔法を使ってかっこよかったんです。
狩られてしまいましたが……」
グレア悲しい事を思い出したのか目を伏せた。
「悪い。
嫌なこと思い出したか」
俺が聞くと、
「いいえ大丈夫です。
今はご主人様も居て一人じゃありませんから」
顔を上げるグレア。
「かわいいのう、褒美じゃ」
俺はグレアの体をワシワシと撫でた。
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ここ最近大きな魔力を感じるのじゃ。
多分、魔物じゃな。
しかし、ポンとその場に現れたのう。
それも
なぜじゃ?
ん? 小さな魔力が一緒になった。
二つの魔力はくっついたり離れたりしておる。
何だか楽しそうじゃ。
あれ? 何か魔力が濃い場所ができたのじゃ。
濃厚な魔力。
小さな魔力が少しずつ大きくなる。
気になるのう……。
どうせ暇なのじゃ。
行ってみるのじゃ!
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おっと、レーダーに反応。結構な速さ。
白だから特に敵対心はないらしい。
とはいえ、警戒しないとな。
「グレア、何かがこっちに来てる」
俺はグレアに言った。
「ハイです!
どうすればいいですか?」
「向こうから来てくれるんだ、待ってればいい」
何かが来る方を見ると小さな黒い点が見えた。それがどんどん大きくなる。そして、
「温泉じゃあ!」
と言う声と共に何かが温泉に飛び込んで爆発する。
俺とグレアは水しぶきで濡れ鼠になってしまった。
もうもうと上がる湯気の中、湯船の中に何かの影を確認する。
しばらくすると湯気は消え、そこには俺の胸ぐらい、んーっと十五メートル程度の黒いドラゴンが居た。
おお、初ドラゴン。
異世界っぽくていいが何事?
とは思うが、湯船の半分以下に温泉の量が減っている惨状を見しまった。
怒りが込み上げる。
俺はそのドラゴンへ近づくと
「誰だ、俺の温泉にかけ湯もしないで入るな!」
声を上げて怒ると、
「ご主人様、かけ湯はそんなに重要ですか?」
するとグレアが首を傾げて聞いてくる。
「重要だ! 次に入る人が困る」
「次の人って、私たち以外に居ないのに」
冷静に答えてくるグレアに俺の怒りが覚める。
「でもな、あのドラゴンが入った後、俺らが入る可能性があるぞ?
あれ見ろ、結構汚れてないか?」
ドラゴンに付いていた汚れみたいなのがうっすらと浮いていた。
見たこともないような虫も浮いて蠢いている。
寄生虫か?
「確かにあんな風になるなら、かけ湯は必要です」
顔を顰め浮いたゴミや虫とドラゴンを見比べる。
「納得できたか?」
と聞くと、
「はい」
ウンウンとグレアは頷くのだった。
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