第98話 バターとヨーグルト
エルフがよく働くので、牛乳の在庫が増えつつある。
このままでは腐らせるだけになってしまう……。
そこで加工することに決めた。
で……牛乳の加工と言えばバターとヨーグルトとチーズ。
バターは調理に、ヨーグルトは健康に、チーズは酒にも合うので、好まれるかもしれない。
まずはバター。
うちの牛乳で作れば美味しいのは確定。
ということで、煮沸消毒したツボに牛乳を入れて蓋をして振った。
シェイキングである。
結果内部に固形物が。
布で濾し取り、残った水分は低脂肪乳として、皆でいただきました。
固形物から更に水分を抜いて、塩を添加。
容器に入れて出来上がりである。
満足していると、
「何をなさっているのですか?」
とベアトリスがやって来た。
「ん? パンの付け合わせ。
この辺はパン食が多いからね。
パンに付けるバターを作っていた」
「バター?」
首を傾げるベアトリスに、
「パンある?」
と聞くと、
「少しお待ちください」
と馬車のほうへ。
中から硬そうなパンを持ってくる。
「これでいいでしょうか?」
と差し出されたパンをナイフで薄く削ぐとそこにバターをつけて差し出した。
ベアトリスがハムり。
「あっ……ねっとりとした中に塩が効いていて美味しいです。
硬いパサパサとしたパンが食べやすくなります」
確かに、この世界のパンは硬い。
二次発酵とかしているのだろうか……
その辺も今後の改善点かもなぁ……。
そんなことを考えていると、
「これはどうするので?」
とベアトリスが近寄ってくる。
「量ができていないからね。
うちだけでいいんじゃない?
ベアトリスの交渉の道具にしてもいいし……」
というと、
「他の貴族も知らないでしょうし、これならお母さまも喜ぶでしょう。
お任せください」
ベアトリスが頷いた。
さて、次はヨーグルトか……。
体にいいし、モッツァレラチーズとか作る時にあるといいんだよなぁ……。
で、乳酸発酵させる必要がある。
菌なら植物、木の精霊ってことで……。
俺はホールに戻ると、ウルを探した。
クルツと話をしているところを見つけると、
「ヨーグルトを作りたい。
食べるものだ。
木の精霊に、カビからとれる酵素で牛乳を発酵させるようなものは無いか聞いてみてくれないか?」
と聞いてみた。
「人が食べるものだから、毒性のないものがいいんだが……」
というと、話を始めるウル。
そして、
「魔力をいただければ、ヨーグルトなる食べ物を作ってくれるそうです」
ウルが言った。
「了解だ!」
早速準備をする俺。
煮沸消毒した容器に牛乳を入れると人肌より少し熱い程度に。
ここは火の精霊任せ。
風呂の温度ぐらいかな……。
あとは木の精霊任せ。
精霊さん万能です!“
昼頃に作り始めて日が暮れるころ……。
ツボの中を見るとヨーグルトっぽい匂いが……。
スプーンで掬って食べると、
「ヨーグルトだね」
満足して頷いてしまった。
「それがヨーグルトですか?」
ウルが聞いてくる。
「そそ、牛乳を発酵させた奴だね」
「少しいただいても?」
というので、俺は一掬いしてウルに差し出した。
少し悪い顔をしたウルがスプーンをパクリ。
そして、スプーンを舐る。
「舐めるのはやめたほうがいいかもな」
というと、
「これは私のご褒美ですから……」
とニコリ。
「まあ、いいけどよ……」
苦笑いする俺だった。
早速次の日の朝食にはヨーグルトとバターが並ぶ。
そして、「美味しい」の声を聞きながら、食事をする俺たちだった。
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