第65話 ノワルが変です。
大工たちが作業しているのを見ていると、ドラゴンの姿のノワルが俺の前に来た。
「アリヨシよ、我は一度戻ろうと思う。
我はここに住む。
いいのじゃろ?」
ノワルが不安そうに俺に聞いてくる。
「今更だろ?」
と俺は一言。
「じゃから巣を片付けてこようと思うのじゃが。待っていてくれるか?」
言い方が仰々しいのは何かあるのかね?
ノワルの様子が明らかに変だ。
「何か心配でもあるのか?」
「いや……無いが……」
雰囲気からして何かあるだろ?
「んー、一緒に行こうか?
ノワルなら速いだろ?
まあ正直どんなところに住んでいたのかが気になるし」
「えっ、
嬉しそうなノワル。
でも何か悩んでいる。
「ああ、今のところ鳥の世話ぐらいしかないからな。
たまには二人で移動してもいいだろう?」
「わかった、一緒に行くのじゃ」
ノワルが頷く。
「グレア、ノワルが前の巣を引き払うらしいんだ。
ちょっと引っ越しを手伝ってくる。
あまり時間はかからないと思うけど留守番頼むよ」
と丁度近くに居たフェンリル状態のグレアに声をかけた。
「ノワル様と二人っきりですか?」
「そうなるな」
「そうですか……私はウルと二人っきり……」
ちょっと不服なのかな? 確かに周りに人が増えてグレアの相手をすることが少なくなってる。
グレアが不服そう。
「帰ってきたらグレアも一緒に散歩しようか。
二人っきりでな」
と案を出すとグレアの耳がピンと立つ。
「聞きましたよ。
だったら我慢します。
ホントに散歩お願いしますね」
言質を取り、念を押すグレア。
「ああ、わかった」
そう言うと、スキップしながらグレアは離れていった。
「帰ってきたら二人でお散歩………きゃっ」
妄想しすぎたのか、壁に軽くぶつかる。
大丈夫かお前……。
俺は縮小化してノワルの背に乗る。
「じゃあ、行くのじゃ」
そう言うと、羽をはばたかせ、ノワルは空へ飛んだ。
後ろをチラチラ見て気にしている。
あー、ベアトリスでやらかしているから、気にしているのかな?
「思いっきり飛ばしてくれ。
最高速でな」
「了解なのじゃ!」
ノワルはニヤリと笑うと翼を小さく畳み速度を上げる。
数瞬の後、「ドン」という音がした。
音速を越えたか……
ノワルの後方には飛行機雲が流れる。
エンジンのような動力が無いので機械音はしない。
下を見ると風景がものすごい速さで流れていた。
本来なら鱗の表面が空気の摩擦熱を持ちそうだが、そこは魔法の力が働いているんだろう。
背に乗る俺は何の影響もなく、受ける風もそう強くはなかった。
「アリヨシよ、あの山が
ちょっと緊張する。女性の家に初めて遊びに行く感じか……。
みるみる山が近づき、山頂近くにある穴が見えてきた。
んー減速遅いよね。
漫画の山岳基地に降りるように、ノワルは穴に突っ込むと足を滑らせて止まった。
洞窟の終点ギリギリである。
「よく、ぶつからなかったな」
「大丈夫なのじゃ」
そういや、最初に俺んちに来た時も派手に突っ込んで来たな。
「結界を解くのじゃ」
すると、終点と思われた壁が無くなり、俺の家のホールぐらいの高さと広さの空間が広がった」
「やるじゃろう?
空間を誤魔化す魔法じゃ」
「やるねぇ、それじゃお邪魔しますよ」
俺が誉めると、口角が上がった。
俺はノワルの背を降りて元の大きさに。
そんな時ノワルの口から、
「間におうたの」
と言う言葉が出た。
「間に合った?」
と聞くと、
「そうじゃ、」
頷くノワル。
何のことだか訳が分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます