第124話 あれ? 思ったより……。

「アリヨシ様、その辺のことを説明していただきましょうか」

 と言って近づいてくると耳を引っ張る誰か。

 振り向くと、そこには仁王立ちで俺の耳を持ったベアトリスが居た。

 ちょっと怒ってる。

 そのまま俺はベアトリスの家へ引っ張られていった。

 耳が痛いわけじゃないけども、なんだか心が痛い。

 中に入ると、なぜかノワル、グレア、ドリス、ウルまで待っていた。

 裁判?


「えーっと、何か?」

「アリヨシよ『アデラ』というのは何物じゃ?」

 ノワルが聞いてきた。

「あー、帝国の司令官だね。

 第何か知らないが王女らしい。

『龍血』という二つ名を持ってる。

 ドリスにはパスで聞いたから知ってるだろ?」

「はい、質問があったので教えました」

 ドリスは頷く。


「グレアさんに聞いたのですが、なぜ、そのお方が協力者になったのでしょうか?」

 ベアトリスが聞いてきた。

「それは、砂糖で揉めた時に『がー』って言って噛みついてきたから、『キャーン』って言わせたら懐かれた。

 プリンも効果があったようだ」

 擬音語で誤魔化す俺。

「何じゃ、われと同じか」

 自分に重ねたのか諦め気味のノワル。

 一応今の説明でわかったようだ。

「とりあえず、月イチでイーサの町へ砂糖を卸すことになったから。

 このリュックで一杯分。

 その際にアデラの伝手を使って獣人の子が見つかっていたら、その子を連れて帰ることになっている。

 会ってもその時ぐらいだなぁ。

 こっちには攻めてこないってさ、壁になるって言ってた」

 結婚させられそうになったら亡命するって言ってたのは黙っておこう。

「獣人の子たちのこともありますし、収入が増えるのは良い事です。

 ただ壁になってもらわなくてもいいんですけどね」

 ベアトリスがため息をつきながら言った。

 グレアは尻尾を振っている。あまり気にしていないらしい。

 現場に居たしな。

 ウルもあんまり気にしていないかな? 

「その人の胸は……」

 と聞いてきたので、

「ウルと同じくらいかな?」

 と言ったら、

「やった!」

 と喜んでいた。

 そういや、ノワルが進化してツルペタ枠がベアトリスとウルになっていたな。

 ドリスは、

「『龍血』ってどんな感じでしたか?

 強かったですか?」

 とアデラに興味津々である。

 思ったよりも追及は少なく、話は終わった。


 さて、話も終わった事だし、温泉へ行く。

 俺の温泉は気持ちいい。

 巨人サイズで温泉に入っていると、ベアトリスが裸のままウル用の温泉に入ってきた。

「どうした?」

 俺が聞くと、

「やっと、あなたとの婚約が認められました」

 そういえばベアトリスの実家の手紙は今回見てなかった。

「えっ、実積は?

 収入の維持ということではまだ期間は短いと思うが」

 というと、にこりと笑い、

「兄のところに子ができました。

 それはあなたのメモを参考にした結果。

 あなたは伯爵家の懸念の一つを解決したのです。

 これ以上の実績はありません。

 ちなみにあのメモは、家宝となるようです」

 とベアトリスが言う。

 学校の性教育で習う程度なんだがねえ……と苦笑い。


「それと継続して、砂糖、岩塩の販売を続けるようにと手紙に書いてありました」 

 とのこと。

「更に実積を上げ続けろと言うことね」

 了解である。

「そして、私もやっとみんなに追い付きました。今後ともよろしく・・・・お願いしますね」

 ん?

 やってもいいよってことらしい。


 俺は人サイズに戻ると、ベアトリスを抱きの小さい温泉に入った。

「お風呂っていいですね。

 ここに来てはじめて思いました」

「まあ、うちのは温泉だから余計だろうね」

 ベアトリスは俺の胸に頭を載せると、

「恥ずかしながら、私はあなたをどう喜ばせればいいのかを知りません。

 だから、色々教えてください」

 真っ赤になって頭を下げた。

「気にしなくてもいいよ。

 ゆっくりやってこう」

 そのままの流れで、ベアトリスにも手を出すことになる。

 事が終わる頃には、ベアトリスの髪は濡れ、ストレートヘアになっていた。

 こっちもいいね。


 疲れてのぼせそうになっているベアトリスを軽く洗い、抱き上げ脱衣所にあった服を着せると、ベアトリスの部屋へ連れていって寝かせた。

「ベアトリス、水は要るか」

 と聞くと、コクりと頷いた。

 俺はコップに冷水を入れベアトリスに渡す。

 ん? 首を横に振る。

 ちゅーってするベアトリス。

「ちゅーって口移しか?」

 今度は頷く。

 冷えてたほうが体にはいいと思うが、俺は冷水を口に含むと、ベアトリスを抱き上げ口移しした。

 コクコクと喉が動き水を飲むベアトリス。

 ただ、口からも冷水が線を引きベッドを濡らす。

「甘えすぎだ。

 ほら、こぼれてしまった」

 俺は魔法で乾燥させる。

「いいんです。甘えたかったのですから。

 甘えてもいい人がやっとできました。

 私は面倒くさいですよ」

 と言ってベアトリスが笑う。

「自分から『面倒くさい』と言うのも問題ありだと思うが、なんとか受け止めるよ。

 他に甘えることはないか?」

「では、添い寝をお願いします」

 俺はベアトリスの横に入り腕枕をした。

 体をゆっくりと同じリズムでトントンと叩く。

 ベアトリスは疲れていたのか、間もなくスースーと寝息をたてて眠り始める。

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