第103話 スレイプニルたちを連れて行きました。
「いいのですか?」
グレアが心配そうに聞く。
「本気の俺とグレアとノワルを普通の人間が相手にできると思うか?」
すこし考えた後、
「ちょっと、攻めてきた側がかわいそうになりました」
「一応、俺って一応決戦兵器だからな。エグイ魔法も持ってる。まあ、使う気は無いがね……」
話を終えると、俺の周りにスレイプニルが集まってきた。
フンフンと甘噛みしてくる。
このタイミング?
と考え、
「お願いがあるんだ。
ドリスという女の馬になってもらえないか?
悪い奴じゃない。
さっきの奴らのように痛めつけるような奴でもない、だから頼むよ」
俺が頭を下げると、一番大きな父親の馬?
が俺の頭を舐めた。
「いいのか?」
『ブルル』と言いながら縦に頭を振る
「悪いな。俺の我儘を聞いてもらって」
ブルルルっと頭を振り否定する。
気にするなって事らしい。
そんな言葉のない会話をしていると、ノワルが戻ってくる。
「お待たせなのじゃ。
アリヨシ、スレイプニルを手懐けたのじゃな」
「いろいろあってな。手懐けはできたが、後でベアトリスに怒られそうだ」
「ゴールドゴートの毛で作った織物は価値があるらしいぞ。
ただ、ちょっと怒っておったのう。
とはいえ、アリヨシがあの場所のために頑張っておるのは知っておるはず。
なんとかなるじゃろうて……」
ノワルが苦笑い。
「だといいんだがね」
というと、
グレアがノワルの背に乗り、続いて俺がノワルの背に乗ろうとすると、一番大きなスレイプニルがひざをつき待機する。
「乗れって?」
そのスレイプニルを見ると、
「ブルル」
と頭を縦に振る。
肯定らしい。
俺がスレイプニルに乗ると立ち上がり駆け始めた。
俺は裸馬に乗ったことは無いが、気を遣ってくれているのか問題なく乗れる。
俺のあとからノワルと母スレイプニル?
と子スレイプニルが追いかけてきた。
「我よりは遅いようじゃな」
ノワルはニヤリと笑いいスレイプニルを見るが。
一番大きなスレイプニルが口角を上げ笑うと、一気に加速する。
「おお、やるのうではこれはどうじゃ?」
そう言った後、音速を越えた。
それを追うスレイプニル。
「ノワル、俺たちを置いていく気か?
俺が乗っているスレイプニルは早いかもしれないが、後の二頭はついて行けんぞ?
そこを考えられないと……ベアトリスのような奴ができる」
パスで言うと。
「アリヨシ、調子に乗りすぎていたのじゃ。
みんなと一緒にオセレ村に向かうのじゃ」
そう言うとノワルは速度を落とす。
そして、ノワルと三頭のスレイプニルが共に飛び、オセレ村に到着した。
ノワルと共に俺とグレア、そしてスレイプニルたちがオセレ村の入口に降りる。
村人たちは慣れたもので、「また来た」って感じである。
グレアがノワルの背から降りるとノワルは人化した。俺もスレイプニルから降りる。
そのままドリスの館の方へ歩いていくと、報告を受けたのかドリスが走り出てきた。
「アリヨシ様、ようこそお越しくださいました」
ハアハアと呼吸が深い。
そんなに急いで来んでも……。
「おう、来たぞ」
グレアとノワルは後ろでニヤニヤしている。
「アリヨシ様、その馬は?」
スレイプニルだと気づいているのか、期待した顔。
「ああ、オセレ村の領主様が依頼していたものです」
俺はわざとらしく言った。
一番デカいスレイプニルが俺に横に出てくる。
「八本足の巨馬……まさか本物のスレイプニル?」
驚くドリスの前に跪いた。
「乗れって言ってるぞ?」
俺が言うと、
「えっ、いいの?」
ドリスはスレイプニルたちを見た。
クイクイと頷く父スレイプニル。
恐る恐るドリスはその背に乗った。
するとスレイプニルが立ち上がる。
「わわっ。思ったより高い」
スレイプニルが急に走り出すとドリスが振り落とされた。
「おっと」
俺は近寄ると落ちる前に抱えあげる。
「さすがです」
「さすがじゃの」
グレアとノワルが俺とのドリスを見てニヤニヤ継続だった。
「ブヒヒヒン」
スレイプニルたちも歯茎を出して笑っているように見える。
「ちょっとしたイタズラらしいな。
でもスレイプニルとしてもこのくらいは軽く乗りこなして欲しいんじゃないか?」
すると、ドリスは厳しい顔をして
「悔しいですね。
でも乗りこなしてみせます」
と言った。
んー、気づいてない?
「で、そろそろ降ろしていいかな?」
今の状況を理解したドリスの顔が真っ赤になる。
「私ならば、もう少しご主人様に抱き上げていて欲しいですね」
「
集まってきた村人たちもちょっと笑っている。
真っ赤な顔をしていたが、勢いをつけ首に手を回して抱きついてきた。
そのままドリスを放置していると、ばつが悪くなったのか、そろりと回した手を離し、
「降ります」
と言うので、ドリスを降ろした。
「もちょっと頑張るかと思ったがのう」
ノワルがからかうが
「恥ずかしいです」
と下を向き小さな声でドリスが呟いた。
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