第51話 さあ、肉を食べよう。

 さて、そろそろワイバーンの肉も食べようか……。

 グラスレックスリーダーの肉もある。


 ワイバーンの肉をホールの奥に置いていたのだが、グレアとノワルがいつもそれを見て固まり涎を垂らすのだ。

 そして、

「ドリスさんが一緒に居たほうがいいのでしょうね」

「確かにのう……」

 と言って俺をチラリと見る。

 まさに、待ての状態。

「食べたいのか?」

 コクりと頷く二人。

「私も……」

 追従するウル。

 岩塩だが塩も手に入った。

 ただ焼いた肉に喜んだグレアだ、塩焼きなんかにしたら大喜びになるんじゃないだろうか? 

 約束したからドリスを呼んでこないとな、ベアトリスも来るかな? 


 ドリスにパスを繋ぐ。

「おーい突然だが、明日肉食いに来る?

 ワイバーンの肉を食べようかと思ってね」

 と軽い気持ちで聞いてみると、

「大丈夫です.

 行けまーす」

 と返ってくる。

 そして、

「今から明日の分の仕事を終わらせて準備しますね」

 嬉しそうな声が聞こえた。

 とはいえ、

「あんまり無理しないようにな」

 と言っておく。


 すると、

「何か持っていくようなものは?」

 とドリスに聞かれたので、

「こっちは野菜がなくて肉ばっかりになるだろうから、人族とエルフ用にパンとか簡単に食べられる野菜とかがあるといいかもね」

 と言うと、

「はい、わかりました」

 の返事があった。


「朝、グレアに迎えに行かせるから」

 と言うと、

「わかりました、待ってますね。

 みんなで食事、楽しみです!」

 ドリスの楽しそうな声が聞こえ、パスを切る。


 続いてベアトリスにもパスをつないだ。

「もしもし、ベアトリス?

 今、大丈夫?」

「あっ、えっ、ちょっと待ってくださいね……あっはい、大丈夫です」

 ちょっと焦った声。

「悪い、何かしてたか?」

「ちょっと、勉強を……でも、本当に大丈夫ですから」

 落ち着いた声が聞こえてくる。

 気を使わせてるなぁ。


「突然なんだが、明日空いてる?

 ワイバーンの肉を焼こうと思ってね。

 来てもらえるなら嬉しいかなと……」

 そう言った俺に、

「えっ、私が行ったら嬉しいんですか?」

 と聞いてくる。

「ああ、嬉しいぞ。

 美人が居ればそりゃ盛り上がる。

 あいつらも話し相手ができてうれしいだろうし……」

「だったら行きます。

 お父様に許可をもらわないと……どんな手を使おうかしら……」

 何かを巡らそうとするベアトリスに、

「ノワルが迎えに行くから……」

 と言うと、

「えっ、ノワル様ですか?」

 ベアトリスの少し焦る声が聞こえた。


 まあ、いろいろあったからね。


「ノワルも反省してるから、この前みたいなことは無いと思うよ」

 と言うと、

「確かにそうですね。

 私もちゃんと言うようにします。

 それで。用意するものはありますか?」

 ベアトリスが聞いてきた。

「ドリスにも言ったんだが、野菜がなくて肉ばっかりになるだろうから、人族とエルフ用にパンとか簡単に食べられる野菜とかがあれば口休めになるかも」

 と言った俺の言葉を聞かず、

「ドリス殿も来られるのですね。

 それで、野菜やパンのことを言ったのなら、ドリス殿は野菜やパンを持ってきますね。

 ならば、私が持って行くのはお酒でいいですか?」

 と聞いてくる。

「おっお酒?」

 俺の恐れる声に、

「どうかなさいましたか?」

 と聞くベアトリス。

「いや、ベアトリスはお酒弱いでしょ?」

 と言うと、

「私は強いですよ? 記憶がないだけです。

 次の日二日酔いになったことはありません」

 多分にこりと笑っている。


 そう言えばドリスの村から帰るとき「二日酔いではない」と言ってたな。

 頭が酒に弱くて体が強い。これって一番ダメなやつじゃん。


「ですから、お酒もお持ちしますね。

 そうそう、アリヨシ様は大きいですから、ワインを樽で準備しておきますね」

 なんだか嬉しそう。

 多分俺は飲まないと思う……。

 しかし、危険しかないように思う俺は、

「いや、いいから」

 と言ってはみたたが、

「あー楽しみ、ワイバーンのお肉をアリヨシ様と食べられるなんて」

 うれしそうな声が聞こえ、俺の意見を聞いちゃいないことがわかった。


 もうどうにでもなれ!

「それじゃ、ノワルが迎えに行くから」

 と言うと、

「わかりました、お待ちしていますね」

 というベアトリスからの返事を聞き、ベアトリスとのパスを切った。

 

 ただ、嫌な予感しかしない……

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