第119話 役場で交渉をしました。

 リュックを置くと、俺たちは受付で場所を聞き、役場へと向かう。

 役場へ向かう途中、

「アリーダは奴隷だ。だから友達に会えたからと言って喜んではいけない。

 喜ぶのはみんなを買えたあと。いいかい?」

 コクリとアリーダは頷いた。

 入り口を入り、近くに居た職員に「ロルフさんの紹介で来た」と告げると、すぐに獣人たちの檻に連れて行かれる。

 体など洗っていないのだろう、その部屋からは異臭がした。

 目はうつろで、体もダルそうだ。

 子供は十人。

「アリーダ。なぜ」

 獣人の一人がアリーダに声をかけた。

「ニコ、私は今このアリヨシ様の奴隷。

 よくしてもらっている。

 獣人の奴隷を増やしたいというから、ここに連れてきたの」

「でもアリーダは……」

「村に居たはずじゃないの?」と言いたいのだろうが、その言葉を言う前に

「私は奴隷だから、アリヨシ様の言うことを聞かないといけない」

 と言って言葉を遮るアリーダ。


 すると、責任者らしき男が現れた。

「私がこの子たちを担当しているゴールと言います。獣人の奴隷を探しているとロルフに聞きましたが、間違いありませんか?」

 宿の主人をロルフと気軽に言うところを見ると知り合いらしい。

「それにしても元気が無いな」

「先日、子の獣人たちの村が消滅したというのは知っていますか?」

「ああ、宿屋で聞いた」

「そのせいで、親を亡くしたこの子たちの元気が無いのです」


 それだけでなく、体も洗わせず、食事も最低限なのも原因のようだがね……。


「では、この十人を全て買いたい。

 獣人は主人の言うことをよく聞くのでね。

 できれば、荷馬車を一台、用立ててくれ。

 その荷馬車にこの子たちを乗せて移動する」

「荷馬車は馬一頭?

 それとも二頭?」

「馬二頭で頼む」

「荷馬車は中古でもよろしいでしょうか?」

「問題ない」

「畏まりました。

 我々もこのまま奴隷商人に売っても買い叩かれ税金の足しにもならない可能性がありましたので助かります」

 揉み手のゴール。

 早く売り払いたかったようだ。タイミング的に良かったのだろう。


「代金は?」

「子供たちの価格が一人銀貨五十枚で金貨五枚。

 馬車は馬一頭が金貨二枚。

 馬車本体が中古なので金貨一枚と銀貨五十枚。

 金貨十枚と銀貨五十枚になりますが勉強させていただいて金貨十枚でどうでしょうか?」

 妥当なのかどうかはわからないが、買えなくはない。

「代金は即金でいいか?」

 懐から金貨を十枚取り出した。

「はっはい、すぐに契約書を作ります」

 そう言うと、ゴールという男は役場の方へ戻っていった。


「アリーダ、なんで奴隷なんかに」

 ゴールが居なくなると、アリーダに声がかかる。

「今は言えない。この街を出るまでは言えない」

 何か含みがあることに気付いたのか、獣人の子供たちは頷くと静かに座る。


 ゴールが書類を持って戻ってくる。

「アリヨシ様、ここにサインをしていただけますか?」

 二枚同じ書類があり、お互いに所持することで契約が成立するようだ。

 俺がサインをしてゴールさんに渡すと、ゴールさんはその書類にサインをして、一枚を俺に渡した。

「荷馬車の準備は明日朝になります。

 この子たちの引き取りも明日でよろしいでしょうか?」

「ああ、それで頼むよ」

 俺は書類を懐に入れるのだった。

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