第83話 エルフの家を作りました。

 ノワルに乗って帰る途中。

「ウル、お前、お姫様だったんだな。

 それも結構おてんば。一人でここまでくるなんて無茶するよ」

 俯いて何も言わないウル。

 図星かな?

「しかし俺が起動したことをどうやって知った?」

「父が亡くなる前『たぶれっと』というものを渡されていました」

 ウルはどこかの家に行くと、そのものタブレット端末のようなものを持ってくる。

 いつか見た端末にそっくりだ。

「『いつもは緑に光っているが、赤くなった時、巨人が復活する』と教わっていたのです。

 父もお爺様から教わったと言っていました」

「この『たぶれっと』が赤くなったから、復活した巨人を確認しようと俺んちに近づいたときにオークに襲われたってわけか」

「はい、その通りです。

 巨人そのものに助けられるとは思いませんでしたが……」

「俺が行かなかったら死んでたし。

 俺が行っても恐れて動けなくなっていたじゃないか。

 まあ、あの時はクマスーツだからなぁ……恐れるのは仕方ないけど」

 再び俯いてウルは静かになった。

 そして思い立ったように、

「アリヨシ様、私のことは全部話しました。

 クルツからも聞いたのでしょう?

 あとはよろしくお願いしますね」

 と言ってペコリと頭を下げるウル。

「よろしくとは?」

 ボッと赤くなるウル。


 そう言えばそんな事を言っていたなぁ。


「機会があればな」

 チョット遅れ気味のベアトリスの視線が痛い。

「一つ聞きたいんだが、ウル、エルフたちは精霊魔法が使えると考えていいのか?」

「はい、エルフの特徴は精霊魔法が使えることです」

「だったら地の精霊魔法は使えるんだな」

「そうなりますね」

「だったら、岩塩の採掘も畑を耕すのも大丈夫だな」

「個人差があるとは思いますが、大丈夫でしょう。

 しかし、魔法を採掘や農耕に使うとは……」

「使えるものを使わない手はない。

 収穫とかは手でやる必要があるが、わざわざ鍬を振って畑を耕す必要はないはずだ」

 俺は思ったことを言った。


「さあ、帰って飯にしよう。

 ウル、一緒に作ろうか」

「はい」

 その時ノワルはすでに家の前への降下に入っていた。


 ウルの村のエルフたちが俺のところへ来ることになった。

 準備しないとね。

 まずは家かぁ。

 ベアトリスの家も見た目はもう少しだけど大工はベアトリスの家で手一杯。

 俺が作るしかないんだろうなぁ。

 土の家になるなあ。

 大丈夫かな? 


 俺んちから少し離れたところの木々を引き抜くと、壁を作るメイウルで土壁を作る。厚さが十メートル、幅が十メートル高さが三メートルってとこ。その中を土の精霊に頼んで壁の分だけ残して除去。玄関と勝手口を作る。

 んー、ただのだだっ広い部屋でしかないな。

 土の精霊に再び頼み十字に壁を作って四部屋にした。


 ウンウンこれなら……。


 それぞれの壁を通れるようにするのも忘れない。

 窓も要るね。ガラスがないから、木戸の両開きってことで。

 木の精霊にちょうどいい木の板を作ってもらって嵌め込む。

 入り口と勝手口にも扉を忘れない。

 こんなもんかなあ……。

 最後に土の精霊に依頼して、出来上がった土の家を硬化してもらった。

 そしてメイスで石化する。

 俺は巨人に戻って家を踏みつけてみた。


「やっぱり〇ナバ、百人乗っても大丈夫」

 ボソリと言ってみる。


 面白くなさ過ぎて背筋が寒くなるな……。

 物置じゃねえし。

 まあ、俺の荷重に耐えられるなら、大丈夫か。


 同じことを十五回ほど繰り返すと、ちょっとしたゴーストタウンのようになった。

 木の精霊にふたたび依頼して、テーブルと椅子を作る。

 一軒にテーブル一つと、椅子二脚。

 なんと継ぎ目なし。強度はありそうだ。

 あとは、収納棚を一軒に一つ作ってと……とりあえず、家はこんなもんかなあ。


 洗い場上の水を分岐させて集落に行くようにして、洗い場も作る。

 ウンウン水回りはこんなもん。

 トイレは洋式、和式? まあ、簡単な和式かな?

 一応壁で囲ってと……。入口の扉も作っておこう。

 んー、わからん。あとは来てからってことで。


 あとは、ウルに見てもらってと……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る