第114話 税って?

 獣人たちの家も出来上がり、 俺とベアトリスが散歩していると、仮住まいの入口付近に籠があり、その籠の中にフランスパンぐらいの大きさの芋虫が飼われていた。

「何でしょうね、あれは?」

 ベアトリスが聞く。

「俺もわからないや。ちょっと聞いてみるか」

 近くに獣人の女性を見つけると、

「ちょっと聞きたいんだが、あれは何?」

 と籠を指差し聞いてみた。

「アリヨシ様!

 ああ、あれはグレートモスの幼虫です。

 この森の周辺を歩いていたら見つけましたので捕まえました」

「何に使う?」

「この幼虫が好む木の葉を集めてきて与え、繭になるまで育てます。

 その後、その繭から糸を取り、布を作るのです。

 糸は白くきらきらと輝く、それは美しい布になるのですよ」

 養蚕的なものか……。

「アリヨシ様、報告してはいませんでしたが、布を作ってもよろしいでしょうか?」

 と申し訳なさそうに女性が言ってきた。

「いいよ。ここに新しい産物ができるのは嬉しいことだ。

 他にも前の村でしていて、ここでもできそうなことはしてもらっていいから」

 許可を出すと、女性は喜んだ。

「ルンデル商会も来るから、いいモノができたら見せてみるといいよ。

 買い取ってくれるかもしれない」

 と俺が言うと、

「勝手に売っていいのですか?」

 獣人の女性はなぜか驚く。

「えっ、作った物は作った人のモノじゃないの?」

 首を傾げる俺に、

「今までは、全て税として取られていました」

 という女性。

「税金?

 あんまり考えたことが無いんだよね。ベアトリス、税金とるの?」

 俺は傍に居たベアトリスに聞いてみる。

 すると、ベアトリスはおとがいに手を当て考え、

「現在は村としての形さえできてはいません。

 今は無理でしょう。

 でもアリヨシ様が爵位を貰い領主となるのでしたら税金を取らないといけませんね。

 ただ、我々のところには税収に勝る岩塩と砂糖というものがあります。

 形だけの税になり、その税率は低くなるのではないでしょうか?」

 と言う。


「そうだなあ、流れ的にはルンデル商会の買い取り代金の一割を税にって感じかなぁ。

 税金もルンデル商会で回収してもらえば手間は少なくなるし、支店ができてからそのうち相談してみるか」

 俺が言うと、

「アリヨシ様、一割の税金などという場所はございません。

 それでいいのですか?」

 ベアトリスが驚いている。


「ベアトリス的にはどうしたい?

 俺は領地を持ったことが無いから、どうすればいいのかわからないんだ。

 こういうのは貴族の娘であるベアトリスのほうが知っているだろ?」

 と聞いてみると、

「えっ、そう言われましても」

 と焦るベアトリス。

「要は俺もはっきりしていない。

 もっと俺の爵位なり何なりがはっきりしてからでいいんじゃない?

 それまでは税金はとらないってことで」

 と言うと、

「はっ、はあ……わかりました。

 税を徴収するとなれば、私一人では難しいでしょうから」

 ベアトリスは諦めたように言った。

 渋々ってところだね。


 とはいえ、そういう事務的なことをできるものも必要になってくる。

 ベアトリス一人では小規模な村程度とはいえ大変だ。

 いろいろ考えないとなぁ……。


 そんなことを考えているとミカルさんがやって来る。

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