第50話 餌はどうしよう。
「餌は、何なんだ?」
俺は腕を組む。
そして、
「とりあえず虫?
多分、葉っぱも食べるんだよな」
言ってみるものの、思い浮かぶものが無い。
よく考えれば、別の世界から来たわけで、ランニングバードの餌のことなど知らないのだ。
草関係は精霊に頼んでみるか……。
ということで、
「木の精霊、この辺にこいつらが食べそうな草はある?」
柵の中の何カ所かから芽が出てくるとタイムラプスのように成長して低めの木になる。
その間、俺の魔力が少しなくなるのを感じた。
特には問題ない量。
「アリヨシ様、木の精霊が言うに、『柵の中にある種ならこの辺じゃないかな?』と言う事です」
ウルが言う。
木の精霊も大体らしい。
「『この辺』って適当じゃない?」
と聞いてみるものの、ランニングバードは、青々とした葉を見つけると啄んで食べ始めた。
木にあった結構な量の葉が無くなる。
「そういえばウル、精霊と話せるのか?」
ちょっとした疑問。
「何となくですが、精霊は見えますし話ができます」
「そうか、じゃあこの草……と言うか木?
魔力補給すれば元の量ぐらいまで葉が増えるか聞いてもらえない?」
と聞いてみると、しばらく宙を見るウル。
何度か頷いていた。
そして、
「アリヨシ様、育つそうです。
もっと魔力が貰えるならもっと木を大きくして葉を増やすことができるみたいです」
とのこと。
「了解だ。ありがとうって言っておいて」
と言うと、再び宙を見て、
「魔力がもらえるなら問題ないと言っています」
と教えてくれるのだった。
「虫も餌として要るんだよなぁ。
タンパク質は重要だと思う」
腕を組んで考えていたが、
「タンパク質が何かはわかりませんが、虫を得るなら地の精霊に頼んでみては? 地力が上がればミミズなどの小動物が増えます。
その小動物をランニングバードの餌にするという手があります」
俺は考えながら呟いていたのか、ウルが教えてくれた。
えらい専門的だな。
ん?
知識が戻ってきた?
ああ、そういうことか……。
「お前、記憶戻ってるだろ?」
と言ってウルを見ると、スッと目をそらす。
「…………」
と無言。
肯定でいいんだろう。
「まあいいや、居たいなら居ればいい。
帰る場所があるなら帰ってもいい。
でもここに居るなら、俺を手伝ってくれよ?」
と言うと、
「わかりました。『ずっと』ご厄介になります」
ウルがにこりと笑う。
そこは『しばらく』じゃないんだ……。
俺は地の精霊に地力を上げてもらう。凄い魔力を吸われた気がした。
するとランニングバードを入れた地面一杯にウネウネとミミズが発生する。
いや、それだけでなく開墾した農地全体がウネウネしていた。
見た目はあまりいいものではない。
「地の精霊が頑張ったそうです」
握りこぶしを作ってウルが言う。
「頑張り過ぎだろ!
俺の魔力すっげー減ったぞ?」
ランニングバードたちも大量のミミズを見て引いていた。
「こんだけミミズが居たら餌は大丈夫だな。
絶対食えよ!」
俺がランニングバードたちを睨みつけるとチラリと俺を見て渋々ミミズを食べ始める。
まあ、ミミズは農地を耕してくれる。
柔らかい土になる。
だから「良し」なのだろうな。
そんなことを思う俺だった。
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