第19話 魔物襲来

 あの後だが干ばつの影響もなく作物は順調に育っているらしい。

「お陰で秋が楽しみです」と爺さん(村長らしいのだが)が二人に言ったそうだ。

 まあ手を貸して結果が出るって言うのは嬉しいことだ。


 あと気づいた事はレーダーのレンジが変えられるようになったことだ。

 お陰で索敵範囲が広がったので来客や魔物の接近に気付くのが早くなった。

 村のある場所も光点が集まっているのでわかる。

 俺は兵器なんだなぁ……とちょっと思った。


 おっ? 赤い光点。

 村に向かっているが大丈夫かね?


「何か村に向かっているみたいだがちょっと様子を見に行くか?」

「はい、付き合います」

 俺は鞘に入ったナイフを持って村へ向かうと、入口付近に体高でグレアぐらいの大きさの黒いクマが村人を追いかけていた。

 逃げる村人の姿も見える。

「あれ、ヤバい奴?」

 グレアに聞くと、

「確かギガントベアと言う名だったと思います。

 クマでは最大級になるものですがご主人様の力なら瞬殺です」

 確かに気配からするとグレアに遠く及ばない。

「ちなみに人なら?」

「まあ人では勝ち目はないですね。

 村が襲われたら食べられて全滅になると思います」

 って事らしい。

 

 村人には天災級なのね。

 

 おっと、村に入る直前に俺の気配に気付いたクマがこちらに走ってきた。

 自分が出せると思われる一番の力で足を踏ん張って加速すると一瞬で熊の背後に回ることができる。

 俺を見失ったクマは立ち上がり周囲を見回す。

 背後に俺が居ることに気付いたようだがもう遅い。

 振り返るより早く、首にナイフを突き立て一気に引く。

 誰が作ったナイフかは知らないが相変わらずの切れ味だ。

 首の半分が切れ、切り口から血が噴き出すと、崩れるようにクマは倒れた。

 戦いを見ていた村人から歓声が上がる。


「やはり瞬殺です」

 自分の予想が当たっていた事を喜ぶグレア。

「グレアの言う通りになってしまったな」

 体に記憶させられた動きなんだろうが意のままに動く体に俺は驚いた。


「さて、このクマどうする?」

「服が欲しいんでしょう?

 ちょうどいいではありませんか、鞣(なめ)して毛皮として使えば服代わりに使えると思います」

「おお、いい考えだ。

 ただ、皮を剥げても鞣(なめ)すのは無理だぞ?」

 俺には皮を鞣(なめ)す知識は無い。

 その時ワイワイ言いながら村人が近づいてきた。代表は村長の爺さんか。

「グレア、相手してもらえるか?」

「はいです」

 そう言うとグレアが白い巫女姿になり村人の方へ向かって行った。


「この度は、危ないところを助けていただきありがとうございます。何かお礼をしたいのですが何か有りますかの?」

 グレアがパスを使って会話を流してくれるので内容が筒抜けだ。

「お礼ねえ……。

 毛皮の鞣(なめ)し方を教えてもらえないか村人に聞いてもらえないか?

 服として使うって事も言っておいて」

 グレアが再度村人と話を始める。

「いえいえとんでもない、我々が巨神様の毛皮の服を作りますのでお任せ下さい」

 服が調達できたのは助かる。

「グレア、お願いしておいてくれ。

 丁寧にな。

 あと、皮は剥いで置いていくって事も頼む」

 村長との会話が続く。

「なにぶん大きいので時間がかかりますが、できるだけ早く鞣(なめ)して服にして祠へお持ちします」

 村ではホールのことを祠と呼んでいるらしい。

「よろしくと言っておいて」

 グレアが村長に伝える。

「話が纏まりましたね」

「グレアありがとう」

 俺が礼を言うと嬉しそうに笑った。


 早速皮を剥ぐ。

 俺の頭には解体の知識もあるようだ。

 戦地の食糧確保のためだろうか。

 切れ味のいい俺のナイフを使えばあっという間に解体できた。

 剥いだ皮を村人に指定された場所に置き、肉と内臓は持って帰る。

 帰りはグレアを俺の手の上に乗せ、肩に熊肉を担いで帰ったのだが、グレアのギガントベアの肉を見る目線が鋭い。

 人化状態のグレアはスッゲー綺麗な女性なんだけど、そんな女性ががよだれを垂らす姿……残念さが凄かった。


「帰ったら食べさせるからちょっと待て。

 ちなみに焼きと生どっちがいい?」

「焼きでお願いします」

 最近はグレアもノワルも肉は焼く方がいいと言う。

 俺はここ数ヶ月食べてはいないが、肉を食うならタレが欲しい。

 原料があるなら作ってみるかな。

 

 焼き肉にタレをつけハフハフと食べて喜ぶグレアとノワルの顔が目に浮かんだ。

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