第123話 子供たちを連れて帰りました。

 街も見えなくなった頃、

「みんな聞いて」

 アリーダに子供たちの視線が集中した。

「村がなくなったのは本当だけど、みんな生きてるから。

 お父さん、お母さんは生きてるから」

 アリーダが言うと、すすり泣きが聞こえてきた。

 うれし泣きなのかどうかもわからない。

 ただ沈黙が訪れる。

「さあ、みんなのところへ帰ろうか」

 俺はそう言うと、馬に鞭を入れ速度を少し上げるのだった。


 俺は自分に問うた。

 

 行きは一時間ちょい、帰りは二日が我慢できる? 

 まあ、できないよなあ。

 ずっと下を向いた子供たち。

 んー、元気出して欲しい。

 そりゃさ、税金払えなかった親を怨む奴も居るだろうが、それでもさ……。

 それに、あー、馬車頼むんじゃなかった。

 俺んちで使えばいいかなと思って買ったんだけど遅っせーわこれ。

 最悪エルフのトラックもあったしなぁ……。

 

 悩む間に出た結果。


 もう俺が巨人化して連れて帰ったほうが早い!

 ヨシそうしよう。


 俺は急に馬車を停めると、

「アリーダ、面倒くさい。馬車が遅くてかなわん。そこで強引に連れて帰る作戦を行う!」

 という俺。

 急に言い出したことにアリーダが驚いたのか、

「アリヨシ、どうした?」

 と俺を見る。

「馬と子供たちはスリープクラウドをかけて寝かせ、俺が巨人に戻って俺の手に乗せて帰る。

 遅すぎる」

 再び言う俺。

「へ?」

 アリーダは理解できていないようだが、俺は気にせず荷台の方にスリープクラウドを唱えると、子供たちはそのまま寝てしまった。

 そして馬にスリープクラウドをかける。

 両手で荷馬車を抱えると、アリーダとグレアは俺の肩に乗る。

「それじゃ行くぞ」

 俺がそう言うと、二人はコクリと頷いた。

 揺らさないように走るが、一歩一歩が大きいぶん速度が全然違う。

 しばらく走ると壁に到着し、再びハードルのように壁を越え、俺の家まで走って帰った。

 手に持った荷馬車を置くと、アイーダとグレアを降ろし俺は人サイズに戻る。

 既に走って帰った俺を見た獣人らが何事かとホールの周りへ集まってきていた。

 我が子の確認をし、涙を浮かべている母親も居る。


 そして、スリープ状態を解除すると、荷台に居た子供たちは、きょろきょろと周りを見回す。

 風景が変わり周りに獣人が居るのに驚いているようだった。

「坊や~!」

「二度と会えないかと思っていたのに」

「ニコ、お帰り」

 獣人たちはそれぞれの子に抱きつき頬ずりをしていた。

 しかし我が子が居なかったのを確認しガックリとする獣人も……。


 ミカルさんが近寄ってくると、

「アリヨシ様ありがとうございました。

 子供が戻った親たちは喜んでいます」

「ああ、でも全員を連れて帰った訳ではないんだよな。

 喜んでいる者も居るが、それを見て悲しむ者も居る」

「アリヨシ様。すべての帝国内に散らばったかもわからない子供を探し出せというのは無理です」

 と俺に言うミカルさんだが、それはただの慰めの言葉。

「ただ、イーサの町に居たアデラって司令官に依頼して、奴隷商人を通して獣人の子を捜してもらえるように頼んであるから。

 それとなく言っておいて」

 と言うと、

「畏まりました。

 言っておきます」

 ミカルさんが頷いた。


「それにしても『龍血』ですか」

 ミカルさんが腕を組む。

「そういやそんな二つ名だったな」

 俺は上を見る。

「なぜ、そのような関係に?」

 と聞かれ、

「いや、色々とあってな……」

 言葉を濁す俺の背後に迫る者があるのだった。

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