第116話 街を見に行くことにしました。
何とかならんかね。
そう考えた俺は、
「ノワル、グレア、ベアトリス、ドリス、ウルでここを守っていてくれないか?」
と五人を集めて言った。
急に言い出した俺の言葉に意味がわからない五人。
「俺は帝国の町を覗きに行きたいんだ。
獣人の子供が奴隷として居ると言う町をね。
それで情報を得て、生きている者だけでも助けたい」
「私は無理ですが、他の誰か一人だけでも連れていって下さい」
とベアトリス。
本当は全員で守ってもらいたいんだが……。
「それでは、ノワル頼む」
と俺は言った。
「了解じゃ」
頷くノワル。
しかし、
「ご主人様,ここは私では?」
とグレアが俺を見た。
「不服か、グレア」
と聞くと、
「そうではないのですが……」
グレアが言葉を濁す。
そこで、
「俺がノワルを選んだのは、ノワルが完全に人化できるからだ。
グレアの人化は、耳と尻尾が残る。
俺は好きだが、帝国の町に行けば獣人は差別される。
俺はグレアが悲しむのは見たくない。
それに、ノワルかグレアのどちらかにはこの場所に居て欲しい。
やっぱりノワルかグレアが俺を除いた最大戦力だからな」
と説明をすると、
「しかし、奴隷化された獣人たちが、ご主人様や完全に人の姿をしたノワル様が声をかけたとして納得できるでしょうか?
私が街に行き、差別されながらも獣人を探し出し保護するほうが獣人たちにとって安心できるのではないでしょうか?」
珍しくグレアが反論してきた。
すると、
「確かにグレアの言うことも一理あるのう。
獣人にとって敵である人間がの姿の者が話をするよりは、獣人に見えるグレアが話をするほうが安心できるかもしれん。
アリヨシよ、我らはパスで繋がっておる。
アリヨシが呼べばその場まで
アリヨシ以外の最大戦力である
ノワル頷く。
確かにグレアの言うこともノワルの言うことも一理あるな。
「そうだな、二人が言う通りグレアを連れて行くよ。
ノワルはここの防衛と何かあった時の援護を頼む」
と言うと、
「ご主人様、かしこまりました」
「アリヨシよ、心得たのじゃ」
二人は納得して頷いた。
ふと、視線を感じると、そこにはアリーダ。
「イーサの町に行くんだろ?
俺も行く!
私が行ったら知ってる子たちが安心するよ。
俺はアリヨシの奴隷って立場でもいいよ。
だって、あのままだったら死んでたんだから」
アリーダの目には強い意思があった。
「ダメだ、ミカルさんは俺と行っていいと言ったのか?」
「お父さんは『アリヨシ様の役に立つことをしなさい』と言った。
だから、俺はアリヨシと一緒に街に行く。
仲間を取り戻す」
と言って聞かない。
俺はアリーダを連れてミカルさんのところに行き、
「アリーダが俺と『帝国の町に行きたい』と言っているがいいのか?」
と聞いてみた。
「アリーダがそれを望むなら、やらせてもらえませんか?
あの子はあなたを好きなようだ。
役立ちたいと思っている。
たとえそのせいで死を迎えようとも笑うんじゃないでしょうか」
うんうんと頷くミカルさん。
そういう重いの要らないから……。
ミカルの言葉が肩に重くのしかかる。
期待した目でアリーダが俺を見上げた。
そりゃ確かに顔見知りが居るのは大きいよな。
「仕方ない、連れて行くか」
俺がアリーダを見て言うと、
「やったー!」
と言って俺に抱きつく。
「遊びじゃないんだぞ。
そして見たくないものを見るかもしれない。
俺とグレアが守るとはいえ怪我をするかもしれない。
もしかしたら死ぬかも!
それでも来るのか?」
体を抱えて離すと、
「うん」
アリーダはニコリと笑うと頭を大きく振って頷くのだった。
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