壊れかけの僕と最強メンタルの君
るふぇ
プロローグ
「これから何をしたらいいんだろ……」
いつもより広く感じるリビングで僕、
母が亡くなって2週間、お通夜に葬式、火葬。
石材店にいって墓石のオーダー、墓地の確保、保険会社に必要書類の提出。
とりあえず今やれることはやった感じがする。
本来ならばここに世帯主変更届の提出等があるのだが、もうこの家には僕1人しかいない。
自動的に残された僕が世帯主になるので提出の必要がないのである。
僕が小さい時に父の浮気が発覚し、父と母は離婚。
母はたった1人で僕を育ててくれた。
僕との時間を取るために夜勤をし、朝に帰ってきて僕を起こして朝食を準備し、送り出したら睡眠。
夕方は帰ってきた僕と遊んで、夕飯の準備、そのまま夜勤というハードスケジュール。
案の定、身体に異変が出たが病院に行かず、無理をし続けた。
その結果、僕が小学生3年生になる際にステージⅣの
手術と抗がん剤で奇跡的に治ったかに思えたが再発、病院と家への入院と退院を繰り返す日々が続き、長く続いた闘病生活の末、ついに母は限界を迎えてしまった。
僕は学校から帰ってきては母の看病をし、自分で買い物に行ってご飯を準備したり、掃除、洗濯をする。
いわゆるヤングケアラーというやつだった。
授業が終わってすぐ帰るものだから友達と遊ぶこともなかったため、まともに友達と呼べる存在もおらず、中学に入学した際にスマホがいるだろうと母に言われて契約したスマホには母と病院しか登録されてない。
周りから見たら、あの年齢で遊びにも行けずに家の事ばかりこなす可哀想な子。
そう思われていたのは僕自身分かっていた。
それでも僕は
僕のために働いて、世話をして、遊んでくれた。
大好きな母のために少しでも恩返しが出来ている、それだけで自分の存在が誇らしく思えていた。
それが一転、母はもうこの世にはいない。
離婚した父方の祖母は県外にいるが母方の祖母は既に亡くなっており、親族と言えるような人物は周りにいなかった。
誰にも相談も出来ず、自分が
ふとスマホを見ると今日は4月1日、高校の入学式が近づいていた。
母は高校を卒業して安定した職について安心させてと常々言っていたのでとりあえず高校には行こうと思う。
高校に行こうとは思っているのだが高校を卒業して職についたところで何になるのだろう。
母に楽をさせてあげたいという僕の小さな夢ですら叶わなくなってしまった今、モチベーションなんて上がるわけもない。
ただ、今やれることはそれしかない、そう自分自身に言い聞かせ、僕はスマホを閉じた。
――そして迎えた入学式当日。
勉強はそれなりに出来ていたが学力に問わず、高校は家と病院から近いところを選んでいた。
母に何かあってもすぐに対応出来るようにと、この
私立高校ではあるが、我が家の経済状況とそれなりの学力のお陰で独自の奨学金制度を使用でき、授業料は公立高校より多少掛かるもののバイトをすれば自分でも払っていけそうだと考えてはいたのだが、その判断は良かったらしい。
バイトをせずとも奨学金制度と母が残してくれた死亡保険金のお陰で授業料と生活費はなんとか払っていけそうだった。
正直、今バイトが出来る状態ではないことは僕自身一番分かっていた。
精神的にも肉体的にも完全に疲れきっており、生ける
亡くなってからも助けてくれる母には本当に頭が上がらない。
生徒会長や校長からの長い挨拶が終わり、割り振られたクラスに入り、名簿順になっている席順を確認。
名字が有村なので最初の方だよなと勝手に納得しながら、教室に入って前から3番目の自分の席に座ると、突然クラスメイトがざわざわしだした。
どうやら今しがたクラスに入ってきた女子がかわいいとか。
まぁ、僕には関係の無い話だし、早く帰って寝よう等と考えていると、何故か視線を感じる。
なにやらその渦中の女子がこちらじっとを見ていた。
黒髪で長さは首もと位までのショートヘア、顔はかなり整っていて、モデルと言われても疑わない確かにかわいい女の子だった。
僕が視線に気づいたことを察すると、少し考えてから、にやりと口角を上げて、こちらに近づいてきた。
「君、名前は?」
「有村優」
と素直に返答した。
名前を聞くと彼女は目を輝かせ口を開く。
「一目惚れです。優、私と付き合って」
「は、はい……はい?」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」
にっこり笑顔の彼女、戸惑う僕、沸くクラスメイト。
これが僕、有村優と彼女、
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