第11話 高憧家にて⑤
「ちょっとお父さんどういうこと、明日香を私から引き離さないで、バイト帰りに明日香吸いする私の日課が私の生き甲斐なの」
未来さん……
それ今度僕も参加してもいいですか。
「未来、姉妹愛強いのはいいけどもうちょっと抑えようね。明日香が引いてるよ。それにちゃんと理由があるから聞きなさい」
「有村君、君も知ってると思うけど明日香は昔、白血病を患っていてね、中学生2年生になって学校に行って保健室で授業を受けれるくらいにはなったんだ。治ってから2年くらい経ったし、今はもう再発の可能性もほとんど無いから高校から普通に通うことになったんだけどね。ただ心臓に疾患が少し残っているんだ。」
明日香に心臓疾患……あまり激しく運動は出来ないということか
「中学はすぐ近くだったからそこまで歩かなくても良かったんだけど、高校は結構遠くて、毎日通うとなるとリスクが大きくてね、僕としては心配だったんだ。」
「有村君の家は高校から近いみたいだし、今日会ってみて君なら安心して明日香を任せられると思ってね。もちろん生活費も渡すし、定期的に様子を見に行かせて貰うよ」
明日香と僕にとって悪くない話……いやむしろとっても良い話である。
明日香は体への負担を減らせて、僕は明日香のことをより深く知ることが出来る。
断る理由がないだろう。
「俺は構いません。しっかり責任を持って娘さんを預からせていただきます。明日香もその方がいいでしょ」
「……」
明日香さん?なんでなにも言わないの
めっちゃ顔赤いんですけど
「お父さん、急にプロポーズしたよこの少年」
「有村君ちょっとそれは早いかな」
……あ
確かに娘さんを私にくださいみたいなこと言ってる。
ち、違うんだそういう意味ではないんだ。
「……いいよ。わ、私も優の家からの方が助かるし」
明らかに動揺しながらも明日香は承諾してくれた。
「よし、じゃあ決まりだね。これからよろしく頼むよ有村君」
明日から明日香と同棲……こんな美少女と四六時中一緒にいて僕の理性は大丈夫だろうか、少し心配になってきた。
そういうことに興味があるかないかでいったらある。
一応、男の訳だし……
「ああそうだ。羽目を外すのも良いけど、学生の範囲内でね。そこだけは注意して」
先生も仁さんもだけどエスパーなの?
そんなに分かりやすいかな僕。
話し合いが終わり解放された僕はとりあえずお風呂に入り、用意されていた明日香のスウェットに着替える。
サイズ感は全く問題が無いが、着てみて1つ気になることがあった。
すっごい明日香の匂いがする。
女の子ってすげぇなぁと思いながら、包装されたアメニティの歯ブラシを開け、洗面台で歯を磨くのだが、手を動かす度にふわっと
なにこの歯磨き、ずっとしてたい。
「優、そろそろ歯磨き止めた方がいいよ」
いかんいかんこれでは未来さんと大して変わらないじゃないか、教えてくれてありがとう明日香。
……ん?明日香?
思わず二度見した。
脱衣場の入り口に明日香が立って笑いながらこちらを見ていた。
「泡立て過ぎてカニみたいになってるよ」
本当だ。
歯ブラシを動かすことに夢中になり過ぎて気づかなかった。
口をゆすぎ、続けてうがいをする。
良かったどうやら明日香にはスウェットの香りを
にしても僕はこんなに変態だっただろうか。
同年代の女の子とはこれまで交流がなかったとはいえ、
男の
「ほら、私の部屋に行こ。もうお布団も敷いてあるからさ」
また、明日香に手を引かれて2階に向かう。
本当に同じ部屋で寝ても大丈夫なのだろうか、考えたら緊張してきた。
明日香の部屋に入るとテーブルが端っこの方に移動してあり、布団が二枚敷かれていた。
明日香にはベッドがあるのに二枚?
すると明日香が片方の布団に座りもう片方の布団をポンポンと叩く。
膝枕の時も思ったけどこの仕草すごく良い。
「ほら、優はこっち」
「明日香はベッドで寝ないの?僕に合わせなくてもいいのに」
明日香の頬がぷくっと膨れる。
「私がこうしたいの、いいから横になって」
この子はいちいちかわいいんだから本当。
諦めたように僕は明日香の隣の布団に入る。
「電気消すね」
明日香がシーリングライトのリモコンを押し、部屋が暗くなる。
いつもと違う天井、いつもと違う布団、そして隣には明日香がいる。
本当に僕は今、明日香の部屋で寝ているんだなと実感した。
改めて思うけど再会して二日目だ。
たった二日なのに告白され、相合傘をして、両者の家に互いに入って、同棲も決定して、そして今、明日香の部屋で二人きりで寝ている。
どこのラブコメ主人公だよと自分のなかで勝手につっこむ。
進展速度が異様である。
漫画とかなら1巻で完結しちゃうよこの物語。
ふと明日香の方を見る、どうやら明日香も疲れていたらしい、既に目を閉じて寝息を立てていた。
守りたいこの寝顔。
おやすみとこっそり呟き、明日香のいる方と反対側を向いて目を閉じた。
その瞬間、背中になにやら柔らかい感触が……
これもしかしなくてもあれだよね、なんで急に抱きついてきてるの明日香さん。
「なんでそのまま寝ちゃうかな、ちょっとくらいいたずらしてくれても良かったのに」
これがASMRっ!
ぞわぞわするけど耳が幸せ。
「ふふっ、固くなってるよ優、びくびくしちゃって」
体がね!あれじゃないよ、体だからね!
あれもちょっと反応してるけどね。
すると僕の首筋にくっついたまま深呼吸する明日香
「私、優の匂い好き、優も私の匂い好きだもんね。スウェット気に入ってくれた?」
小悪魔モードの言い方だ。
やっぱり、歯磨きの時バレてたのか……
「言ってくれればいくらでも嗅いでいいのに……」
まじすか明日香さん、公式から明日香吸いの許可!
未来さんに命狙われないか心配になる。
「私、優のこと思ったよりも好きみたい。今日も優のことをずっと考えちゃっててさ、重くないかな私、優の負担になってない?」
「負担には全然なってないよ。明日香がいてくれるから余計なことを考えなくて済んでるし、むしろ今の俺は明日香がいないとダメだと思う」
実際、明日香がいなかったら今頃、つまんなそうに学校に通い、友達もできずぼっちで過ごし、家に帰っては一人きりで生きる寂しさを、押し殺して寝るだけの日々だっただろう。
「明日香には感謝してる。俺を助けてくれてありがとう」
これは僕が明日香に対して今一番伝えたかったことだ。
「……良かった。ちゃんと優の助けになれてたんだ私。嬉しいな」
ちょっと涙声が混じっている。
もしかして泣いている?
気になったので後ろを振り向こうとしたら
「今は見ちゃだめ」
と明日香に左手で遮られてしまった。
だめと言われたら見たくなるもので、明日香の方を向き、視界を遮ってる左手を持ち上げた。
そこには涙を右手で拭う明日香がこちらを向いて笑顔を見せていた。
「見ちゃだめって言ったのに」
この瞬間、僕は確信した。
高憧明日香という1人の女の子ことが心から好きだと。
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