第97話 アヤメシア
「どう……かな?」
「「「……」」」
西堀さんの問いかけに対し、味見をした全員が沈黙し、その後、一心不乱にオムライスをかっこみだした。
どうやらとても美味しいらしい。
明日香なんてもう、おかわりしてる。
その様子を見て、西堀さんはホッと胸を撫で下ろしていた。
「絢ちゃん、これで本当に原価150円なの?」
「うん、ご飯は一回炊いて、冷凍したやつ使ってるし、チキンライスの鶏肉も業務用のやつを細かくして使ってるから卵は最低でも2個必要だからそこだけで40円くらいかかっちゃうから、変わりに玉ねぎは抜いたんだけど……あんまり気にならないでしょ?」
「
「アヤメシア様ぁ~」
「やめ、やめなさいって……もう……私に続きなさい、親愛なる子供達よ」
結局乗るんかい……。
まぁ、ここまで西堀さんが
ガタイの良い男子にもメイド服を着せるため、メイド服を多めに注文したところ、食事を提供するための資金が少なくなってしまい、どうしようかとしていたところを見かねた西堀さんが助け船を出してくれた。
内装はむしろ、高校の教室のまま方が男性ウケが良いだろうということで一切手を加えず、店前にメニューボードを設置するくらい、材料費は色々な豆知識を駆使して原価率25%をキープ。
おかげで予算はなんとか持ちそうということで、こんな教祖みたいになっているという訳である。
西堀家の家計を支えているだけあって、こういう節約テクニックは流石としか言えない。
加えて男心も分かりすぎてる。
高校の教室にメイドがいるってワカってるよなぁ。
俺もアヤメシア様に感謝のお祈りをしておこう。
ありがたや。
……にしても西堀さん変わった。
春先よりも明らかに陰から陽寄りになっている。
こういう強引なノリにも乗ってこれるようになったし。
やっぱ、福とのことが原因なんだろうか。
定期テストから進展は無さそうだし、今回の文化祭でそろそろ、なんかあるんじゃないかと勝手に思っている。
でも、あの福だしなぁ……。
花火大会の時も結果的に福の気持ちは西堀さんに伝わったが本人は告白を出来た訳ではない。
そのことは福も心残りのはず……でも、あまりにもそこから行動が無さすぎる。
福は本当に西堀さんのことが好きなのだろうか。
それともやっぱり……未来さんの方に……。
もし、福と未来さんが結婚したら、福がお兄さんになるのか……それで弟は恋。
……親友って言ったって、俺達仲良すぎだろ。
まぁこんなことを考えていたって全く意味がない。
結局は福がどのような結論を出すか、なのだ。
こればっかりは福次第だしね。
俺も恋みたいに仕事に戻ろう、とした時、肩をトントンと叩かれる。
「ねぇ、アリソン。この後話せる」
福だ。
断る理由も無いし、俺は素直にうんと頷く。
「じゃあさ、後で屋上来て、待ってるから」
そう告げると、福は立ち去ってしまった――。
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