第98話 アリソンだよ
放課後になり、全校生徒が再び文化祭準備を進める。
いつもは部活や自主勉、下校と散り散りになるが、流石にこの時期は準備に追われているようだ。
だからこそ楽しくて、だからこそ揉めてしまう。
クラス全員が1つの物事を成功させるために頑張る行事って文化祭くらいだもんね。
体育祭って運動苦手な人からしたら、中止にならんかなって思う行事だし。
そういう意味では文化祭というのは誰でも一番楽しみやすい行事かもしれない。
そりゃ熱も入る訳だ。
勝手に納得しながら、屋上の扉のドアノブに手をかける。
福の話ってなんだろう。
もしかして、西堀さん絡みだろうか。
「待ってたよ、アリソン」
ドアノブを回して扉を開けた途端、福が声をかけてくる。
その声はいつもより元気がなさそうで、その顔はいつもよりも暗い。
明らかに様子がいつもと違う。
「話って?」
「うん……」
……そんなに?
そんなに深刻な話なの?
文化祭が上手くいったら、俺、告白するんだ……みたいな話だと思ってたんだけど、なんか違う感じ出てきてない?
そこまで深刻な話だと思わなかったから、こっちも改めて気を引き締めないといけない気がしてきた。
「アリソンはさ、高憧さんのこと好き?」
「え、そりゃ、好きだよ。じゃなきゃ付き合ってないでしょ」
「……だよね」
なんで今さらこんなことを聞くんだろう。
「じゃあ、西堀さんは?」
「それは……友達として好きだよ」
「……そっか」
「なんでそんなこと、聞くの?」
すると福はこちらに背を向け、転落防止の金網に手をかける。
「俺さ、花火大会の時、西堀さんに告白しなかったじゃん」
「うん」
「あれさ、西堀さんに好きな人がいることが分かったからしなかったんだよ」
……そういえば、明日香も言ってた。
福が西堀さんに告白するって事を言った時、明日香は「多分ダメだと思うな、絢ちゃん、好きな人いるし」って。
勝手に福の勇気が出なくて、告白しなかったと思っていたけど、そんなことが……。
「それで、西堀さんは誰のことが……」
福は何も言わない。
何も言わずに振り返り、ゆっくりと人差し指をこちらに向かって指す。
「アリソン……だよ」
「いや、俺は確かに西堀さんから告白されたけど……振っちゃったから……福も見てたでしょ」
体育祭で俺は西堀さんからの告白を断った。
そして、その様子は福も見ているはずだ。
「……それでも、アリソンの事が好きなんだよ、西堀さんは」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます