第99話 バーカ!
西堀さんが俺の事をまだ……好き……?
俺は西堀さんの想いを、好意を
そう、確かに断ち切ったはずだったのだ。
そして西堀さんも分かってくれたはずだった。
……でも、こちらとしても思い当たる節が無い訳ではない。
体育祭の後でも夏休み前までは視線を感じていたし、ショッピングモールで明日香へのプレゼントを買うときも、俺がお店の人に勘違いされるかもみたいなことを言ったら、西堀さんは「全然良いけど、むしろされたい」とか意味深な事を言っていた。
でも、視線は最近感じないし、ショッピングモールでの事は西堀さんなりのジョークだと思ってたんだけど……。
「……俺は、さ。西堀さんに告白して良いのかな……アリソンの事が好きな西堀さんに」
そう言う福は辛そうな笑顔を浮かべる。
……福はここ最近ずっと、この事で悩んでいたのか。
原因が分かり、未来さんの事が好きになった説は消えてほっとした一方、なんか物凄く申し訳無くなる。
……でも
「でも、それは……」
「それは違うんじゃねぇか?」
俺の言葉に被せるように後ろから声がした。
「……ラブちゃん」
「その呼び方久々だな」
ふっと笑い、恋はこちらに向かってくる。
「つけてたの?」
「そりゃお前らの様子おかしかったし、てか、俺にも声かけろよ」
ごもっともで……。
普段、明日香や恋と一緒にいるのに、何も声を掛けずに居なくなったら、そりゃバレるよね。
「そんでまぁ、本題だけどよ、福ちゃん……バーカ!」
予想外のコメントで虚を突かれる。
急にどうしたの。
「なにが告白して良いのかな、だ。エビデンは西堀に告られて、ちゃんと返事して断っただろ。その時点でケリはつけてんだよ」
「いや、まぁ、そうだけど……そうだけどさ!」
「そうだけど、なんだよ」
今日の恋、圧強くない?
なんかいつもよりキツい言い方のような気がするんだけど。
「好きな女の子に好きな異性が居て、それが親友で、その親友は他の女の子と付き合ってるんだよ」
「そうだな」
「じゃあ、俺はどうすれば良いのさ!」
「説明足らなくねぇか?」
ごめん福、これは説明足らないかも。
言いたいことは何となく分かるけど……。
「福ちゃん、お前が言ってるのは西堀がエビデンの事を好きなのに、エビデンは高憧と付き合ってるし、そもそも西堀の告白を断ってる。でも西堀はまだエビデンが好きだから俺はどうすれば良いって事だぞ。第三者として聞くとエビデンに八つ当たりしてるようにしか聞こえねぇけど」
「……」
そこまで真っ直ぐ言わなくても……。
福、黙っちゃったし。
「もっとはっきり言うとな、福ちゃん。福ちゃんはエビデンに嫉妬してる。そして、告白から逃げる理由を探してるだけだ」
さすがにそれは。
止めには入ろうとするが、恋は矢継ぎ早に口を開く。
「意気地無しだよ、ほんと……」
「恋! それは言い過ぎだよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます