第100話 恋は盲目
恋の肩を掴み、転落防止の金網にガシャリと押しつける。
「いいってアリソン! ラブちゃんの言ってること……事実だし……さ」
福……じゃあなんでそんな顔してるのさ。
事実って認めてる割には苦虫を噛み潰したような顔してるけど。
「良くないよ、今の恋は言い過ぎだよ」
例え、親友といえども、越えてはいけないラインはあるはずだ。
恋が言ってる内容自体は事実かもしれない。
でも、今日の恋は言い方もやたら語気が強かったし、最初から俺と福のやり取りを聞いていたのなら福の状態も分かっていたはず、なのに容赦の無い発言。
そしてなにより……
「恋だって、弦本さんに告白するのにどれだけ時間かかったのさ! 小さい時からずっと一緒にいて今までかかったんでしょ! 告白するのにどれだけ勇気がいるか分かってるはずなのに、なんで福にそんな……当たりが……」
言ってる途中で恋の表情が変な感じになってる事に気づく。
笑い3割、情けなさ7割みたいな微妙な顔。
まるで「分からねぇよな」と言ってるようだ。
……もしかして、そういうこと?
何故恋が福に強く当たるのか少し分かった気がする。
「わりぃ福、エビデンの言う通り言い過ぎた。すまん」
「ううん。ラブちゃんの言ってる事は間違ってないから……アリソン、ごめんね。色々嫌な思いさせて」
自分がそうだったから。
恋自身が長い間、悩んで、苦しんで、結論を出した。
そんな恋だからこそ、なかなか踏み出せない福と自分が重なった見えたのだろう。
「アリソン?」
「エビデン、どうした?」
「……そっか……ごめん」
「「なんで謝るの!?」」
なんでだろうね。
気づいたら口から勝手に謝罪の言葉が出ていた。
「俺、2人の気持ち全然分かってなくてさ、なんか、申し訳ないなぁって」
2人は顔を見合わせてきょとんとしている。
「福からしてみれば、俺から告白頑張れって言われるの腹立つだろうし、恋からしてみれば、明日香の方が先に告白してきた俺が今の状況で2人の気持ちなんて分かる訳無いのに一番怒っててさ……なんかもう、申し訳なくなり過ぎて……」
あぁ、ダメだ。
涙目になってきた。
「お、おい、勝手な想像で感傷的になって泣きそうになるなって。あー、もう、この話無し! 全員悪かったで終わり! 福もそれでいいか」
「ふ、ふふっ、あはははっ」
「「どうした急に」」
「そっちこそ急に冷静にならないでよ……いや、なんか色々と考えすぎだったかもなーってさ……だから、決めた。俺、告白するよ、文化祭の日に……西堀さんに!」
「良いのか、福」
「いいよ、もう決めた。迷わない。例え、西堀さんが他の人を好きでも、俺はやるよ。ていうか、よくよく考えたら西堀さんだってアリソンに好きな人がいるのに告白してたしね」
なんかやけくそみたいな感じだが、先程とうってかわって福の顔には自信のようなものが満ち溢れていた。
「そっか……よし! じゃあ、また作戦会議しようぜ、3人で!」
「「うん!」」
あんな暗い雰囲気だったのにいつの間にか3人とも笑いあってる。
……なんかよく分からないけど結果オーライだったのかな。
何はともあれこれで後は文化祭当日を迎えるだけ。
福の告白上手くいくといいな――。
「そういえばさ、なんで西堀さんが俺の事好きって分かったの」
「それ俺も気になってたんだよな。最近、西堀のやつ、そんな明確にエビデンの事、意識してたか? どっちかというと控えめだった気がするんだけどよ」
屋上からの階段を下りながらふと浮かんだ疑問を福にぶつける。
福から西堀さんは俺の事がまだ好きと言われたがその根拠は聞いてない。
「ああ、それはね。体育祭の後も花火大会の時もさ、ずっと見てたんだよ。アリソンの事から目が離せないって感じで」
「「…………」」
あれ、これもしかして。
「女の子があそこまで1人の異性を見続けるってそういうことでしょ」
「……ちなみに最近の西堀は福から見て誰を見てるんだ」
「え、最近は……わっかんないなぁ……」
西堀さんが積極的に攻めてたのに……。
「はぁー。どう思うエビデン」
「恋は盲目だからねぇ」
「なんか真面目に話聞いてたのがバカらしくなってきたな、行こうぜ」
俺は頷いて、恋と共にペースを上げる。
「えっ、ちょっと、2人とも。急にどうしたの? 置いてかないでよ。さっきまでの友情はどこいったのさぁーーー」
後ろからそんな叫びが聞こえた気がしたが無視して、俺と恋はペースを上げて階段を下っていった――。
※※
お知らせ!
今回のお話から土曜の週一投稿に変更させていただきます。
理由としましては新作を本格的に進めていくためとなります。
急な変更ですみません。
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りますのでこれからも応援していただけると幸いです。
るふぇ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます