第101話 どやー


「ねぇ、有村君……お願い……」


佐和山さんが甘くささやく。

なんで俺は密室で佐和山とこんな至近距離でこんなことを言われてるんだろう――。


時間は少し戻り、屋上から。

福との話し合いを終え、教室に戻ると相も変わらずクラスメイト達がせわしなく文化祭の準備を進めていた。

てか男達、まーた露骨にニヤニヤしすぎだろ……しかも、自分達もメイド服着てるし……。


メイド服姿の男がニヤニヤしながら女子を見てるって、ちょっと事案ぽい。

まぁ、メイド服姿の女子を見れて、気持ちは分かるけどさ……ぁぁぁっっっ!


女子の方に目をやった瞬間、ある人物が視界に入る。

その人物はこちらの視線に気づくと駆け寄ってくる。


「あ、優! 見て見て、どやー」


メイド服姿の明日香は両手を腰に当ててドヤる。

……メイドさんはそんなポーズしない気がするんだけど。


「……可愛く、ない?」


「いや、めっちゃかわいい……んだけど……」


「だけど?」


「その、さ……あまり他の人に見られたくないなって」


その言葉を聞いた途端、明日香はニヤニヤしだす。

……こういう反応されるからあんまり、言いたくなかったのに。


「んふー、最高の褒め言葉ありがと。本番まであんまり男子には見せないようにするね」


そう言い残すと明日香は再び女子達が作業している場所に戻っていった。


……あんなメイドさんいたらメイド喫茶通っちゃいそうな自分がいて怖い。

ていうか男子の皆さん?

なんでそんな怖い目つきで睨み付けてくるんですか?

うちの彼女のメイド服姿めっちゃ可愛いからどんどん見てくれよ、なんて言う彼氏なんてほぼいないんだからね。


とりあえずここにいると男子のヘイトがこちらに向きそうなので教室の外に一旦出る。


ふぅと一息吐くと、ガラガラと反対側のドアが開き、そちらから出てきた人もため息を吐く。

佐和山さんだ。


佐和山さんはしばらく下を向いてから、大きく息を吸い込むと両手を真っ直ぐ上に上げて、徐々に下へと降ろす。

ラジオ体操の深呼吸かな?


すると急に佐和山さんの動きが止まる。

なんだろうと思い顔の方を見ると、佐和山さんの目がこちらを向いていた。

完全に目と目が合う。

……まじまじと見すぎていたか。


佐和山さんは目をパチパチとさせながら顔を赤らめる。

なんか申し訳なくなる。

心の中でごめんと思っていると佐和山さんは手をこちらに向けて閉じたり開いたりしている。

マ○ハンドみたい……と思っているとその動作が早くなる。


これ、こっち来いってこと?




※※

週一投稿に変更したのに大遅刻してすみません……。

色々あってなかなか書く時間が取れませんでした。

今後は極力無いように致します。  

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