第102話 ツボ
「ど、どうしました?」
恐る恐る、佐和山さんに近づき話しかける。
「見てた……よね」
「……はい、ごめんなさい」
「だよねぇ」
佐和山さんは、はぁ~と深く息を吐き出す。
恥ずかしかっただろうけどそんなにまずいことだったのだろうか。
「有村君、そんなにまずいことだったのかなって顔してるね」
……本当に顔出やすいな、俺。
その反応を見て佐和山さんはにひひと笑う。
「まぁ、合ってるよ。でも、ラジオ体操みたいな深呼吸だっただけでそんなに落ち込まなくても」
「ラジオ、体、操…………確かに! めちゃくちゃラジオ体操だったね!」
さっきのにひひとした笑いとは違い、今度はギャハハと大笑いする佐和山さん。
どうやらツボに入ったらしい。
「……おーい、スーいるか?」
ドアが少し開き、すっごい小声で真栄田君の声が聞こえた。
スー?
佐和山さんのことかな?
そういや真栄田君が佐和山さんと付き合ってるって話してた時、す、って言いかけてたような……。
「っっふ、くっ、ご、ごめん、有村君、ちょっと他の場所に連れてって」
「え、でも真栄田君が」
「っぷふ、良いから、早く」
「う、うん」
まだツボってる佐和山さんを連れて近くにある空き教室に入る。
ここって、補習とかやるときの少人数教室か。
1-Cから近いのに入ったこと無かったな。
「っふぅー、ありがと、有村君。助かったよ」
「本当に良かったの? 真栄田君呼んでたけど」
「いいのいいの、あんなゲラゲラ笑ってる私なんて見せられないからさ」
それってどういう……。
「私さ、球技大会の頃と比べて変わったでしょ」
「そうだね。俺、こんな人いたっけってなったもん」
「ひっどww」
ぷふっと吹き出す、佐和山さん。
よく笑う人だ。
根はかなりのゲラと見た。
「まぁ、でも春頃の私が今の私見たらおんなじ感想だろうなぁ。こんなに変わるなんて思うまい」
腰に手を当ててドヤってる……なんか既視感が……。
明日香?
「恋したくなったから変えようと思ったんだよね」
「そうだよ。君と明日香ちゃん、それと絢ちゃんのせいで……っていうかほぼ絢ちゃんだ」
西堀さん?
真栄田君曰く、俺と明日香の影響って言ってた気がするんだけど。
「あんな恋する乙女を間近で見てたら、そりゃ影響だって受けるよ。あの絢ちゃんが完全にメスの顔だったもん」
メスの顔て……。
そんなメスの顔の女の子の思いに気づかなかった俺って一体……。
「結局誰かさんが振っちゃったけどさ、あの時の絢ちゃんすっごくかわいくてね。私も恋したらああなるのかなぁ、って」
なるほどね。
地味に古傷を攻撃してくるのやめようね。
「だから自分を変えようとしたの?」
佐和山さんはこくりと頷く。
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