第89話 攻守交代

これ、もしかして、2人の仲を進展させる千載一遇せんざいいちぐうのチャンスなのでは?

いつもの6人ではなく、2人きりで出来たなら……。

間違いなく、お互いに意識するだろう。

しかも、福が西堀さんの好きになったポイントって勉強会で西堀さんがちゃんと見てくれたところって言ってたし。

普段ならば、今回はみんなじゃなくてペアでやろうとか言ったら、怪しまれるだろうが今回ならいける可能性があるはずだ。

口実もあるし、察しの良い西堀さんなら、きっと……。


俺は恋の方向を見て、片手をお腹の部分くらいまで上げてスマンと表し、再び口を開く。


「今回はさ、みんなでじゃなくて、2人ずつにしたらどうかな?」


何でって顔4つとふーんって顔1つ。

やっぱり、西堀さん分かってるなぁ。


「俺は別に良いけど、何で?」


福の返答も予想通りだよ。

ナイス!


「福、察して、せっかく俺達の目の届かないところで2人きりになれて、いちゃつけるチャンスなんだから」


「そうだよ、福田君。最近付き合いだした2人の邪魔しちゃダメだよ」


この会話により、他4人もようやくお察ししたみたい。

あら~弦本さん良い感じに照れてますわね。

恋の顔が照れながらも殺意ある感じだけど……だから先にスマンってしといたじゃん……。


「それにもうお二方も、ね。あーあ、私達は邪魔者って訳か。なんかムカついてきた。福田君、みっちり勉強教えてあげるからね!」


「え、う、うん」


よし、完璧!

ちょっと上手く行き過ぎな感じもするけどね。

西堀さん、俺の思惑に気づいて、乗ってる?

……考えすぎかな――。


「よくもだしに使ってくれたな」


久々に弦本さん、恋、そして明日香の4人で帰っていると恋が肩を組んできて圧をかけてくる。

ふぇぇ……これじゃあヤ○ザだよぅ。

弟がそっちの道に行くなんてお兄ちゃん悲しい。


「許しておくれ、これも福と西堀さんのためだったんだ……恋の犠牲は忘れないよ」


「ったく……福ちゃんのためだし今回は許してやる」


優しい……優しいヤ○ザだ。

なんやかんや恋はこういう性格だからなぁ。


「恋も実は嬉しかったんじゃないの? これで誰にも茶化されずに弦本さんといちゃつけ……」


怒った素振りをしておいて内心はめちゃくちゃ喜んでる……と踏んだんだけど。


「前言撤回、許さん」


言うべきではなかったようだ。


「あ、いっつー」


弟からデコピンを食らう兄って……。

後ろの方では明日香が弦本さんに同じようなこと聞いていて、弦本さんの顔を赤に染めさせているのに……。


「まぁ、冗談はこれくらいにしといて福と西堀上手くいくと思うか?」


冗談ってレベルの痛みじゃなかったですけどね。


「上手くいくと思うよ」

「私もそう思います」


後ろの2人が反応する。


「ちなみに理由は?」


「理由って言われてもねぇ」

「そうですよねぇ」


二人が顔を見合せ、これだから男子は……みたいな雰囲気をかもし出す。

ちょっと女子、ちゃんと言って!

男子分からないでしょ。


「うーん、強いて言うなら、絢ちゃんから福田君にアタックしてるから、かな」

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