第111話 クビ


「お帰りなさいませご主人様、どうぞこちらお座りくださいにゃん」


「お、おすすめとかありますか」


このお客さんはこういうところ初めての人っぽいし、分かりやすく丁寧な方がいいかな。


「今日は良い卵が届いたからおむらいちゅがおすすめかにゃん」


「じゃあ、それで……」


「ご主人様ありがとうございますにゃん! 頑張って作ってくるにゃん!」


オーダーを承って、隠されてる調理スペースへ向かう。


「オーダー、オム1です」


あいよーと奥から声が聞こえる。

どうやらオーダーを上手く伝えられたようだ。

なんか慣れてきたら、案外楽しい。

この調子でどんどん対応していこう。


「「まてまてまて」」


そう思って、再びホールへ出ようとすると、恋と福に肩を捕まれる。


「本業メイドの方ですか?」


「いえ、一般的な男子学生です」


「こんな一般男子学生がいてたまるか、天職すぎるだろ」


そんなこと言われましても。

ていうか、こんなって言ってるけど二人とも俺とおんなじ格好してるからね?


「さっきまで、ご、ご主人様とか言ってたアリソンはどこに行ったのさ」


「おすすめかにゃんからのオーダー、オム1のギャップがエグいぞ。エビデン……俺、今後、お前をどう見たらいいか分かんなくなるぜ」


「普通に親友として見ておくれよ……」


時刻は11時、午前シフトはもうすぐ終わりそうな時間なのだが、我がクラスのメイド喫茶は多忙を極めていた。

ずっと長い列が続いており、対応してもしてもお客さんを捌ききれない。

そんな状況が続いている。


「メイドさーん、注文」

「オム1出来たよ」


駄弁っている場合じゃない。

早く仕事に戻らないと。


「あー、有村君達」


オムライスを持ってホールへ出ようとするとまた声を掛けられる。

なんか今日、こればっかだ。


「どうした真栄田、早く店回さねぇとクレームくるぞ」


「君達、クビね」


「「「え゛っ?」」」


な、なんで?

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