第110話 おいしくなぁれ♡
「い、いらっしゃいませぇー、ご主人様」
「もっとだよ、もっとはっきりと!」
「いらっしゃいませ! ご主人様!」
「ここは道場かて。もっと
「ご主人様、いらっしゃませだにゃん♡」
自分を見失いそうだ……てか当たり前のようににゃんって言ってたけど猫のような語尾ってなんだ。
猫ってにゃあとは鳴くけど、にゃんって喋ってる訳じゃ無くないか。
「ばっちし撮っておいた」
未来さん?
あなたが明日香を独占するせいで俺が西堀さんから特別指導食らって、メイドやらされてるんですからね?
キメ顔でサムズアップしてると流石に怒りますよ?
あと、その動画消してください。
あなたの隣で明日香が欲しそうにしてるから。
文化祭がスタートし、わがクラスは明日香のメイド服登校のかいもあってからかなりの盛況だ。
「彼女のために頑張るね」
西堀さんがにやにやしながらからかう。
「まぁ、他の男が寄るくらいなら未来さん専属の方がね……俺が頑張ればいいだけだし」
「なるほどなるほど、じゃ、メイドさん。このふわふわぴゅあぴゅあおむらいちゅ1つ」
「なんで未来さん急に話に入ってくるんですか……っていうか明日香が目の前にいるのに俺ですか?」
「マイスウィートエンジェルがご所望だからね」
「いやー、見てたら食べたくなっちゃって」
いや、食べたかったの明日香かい。
明日香ちゃん?
あなたも一応メイドさんだからね。
メイドさんがお客さんに商品頼み始めたら、それはメイド喫茶じゃなくて、夜のお店になっちゃうよ――。
「――お待たせ致しましたご主人様。ふわふわぴゅあぴゅあおむらいちゅです」
「ふむ、それで」
「それでと言いますと」
未来さんはメニュー表の下の部分を指す。
「お、美味しくなる呪文っていうの……お願いできますか……ぷふっ」
急にたどたどしくなったと思ったら、堪えきれなくなってるじゃん……。
初めて来た感じの設定でやるなら、そこはやりきりましょうよ。
…………初めて来たのは間違いじゃないか。
そっちがその気ならこっちも考えがある。
「はい! それでは呪文を掛けさせていただきますね。でも、今日は呪文をいっぱい使わなきゃいけないので魔力が足りないかもしれません」
「朝イチなのに?」
そういう冷静なツッコミやめてもろて。
「ですので、ご主人様のお力を貸して頂けたら、きっと美味しくなる思います! 私がおいしくなぁれおいしくなぁれまで言ったら、続いてもえもえきゅーんとお願いします」
「……セリフ逆はだめ?」
「ダメです。最初の方は私達メイドじゃないと使いこなせないので」
「ん、私達?」
未来さんが呟いた瞬間、俺は明日香の手を取る。
「はい、私達、メイドしか出来ません」
「私もこのあとメイドに」
「"今"メイドの方しか出来ません」
危ない危ない、抜け道を掻い潜られるところだった。
「明日香ちゃん準備はいい?」
明日香はこくりと頷く。
「よし、それじゃ行きますよ、せーの」
「「おいしくなぁれ♡おいしくなぁれ♡」」
「……もえもえきゅーん」
かわいい。
未来さんも照れることあるんだ。
……でも、もうちょっと欲しい。
「ご主人様、ちょっと魔力不足かもしれません。もう少し力を入れていただいて」
「……」
「妹さんにおいしく召し上がっていただきたいですよね」
「もえもえきゅーん!」
ためらいがねぇ、でもかわいい。
明日香や未来さんが行動する度に人が増えてる気がする。
注目が注目を呼ぶってこういうことなんだろうな。
対応を終え、卓を離れようとすると西堀さんが手を招いていた。
「有村くん、次、角の席の人お願い。明日香ちゃんの事気になってるみたいだから、しっかり対応した方がいいんじゃない。ちゃーんと媚びるんだよ」
「かしこまりましたにゃん、只今、お伺い致しますご主人様」
まだまだ盛況ぶりは収まりそうにない。
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