第112話 クビの理由

「クビってどういうことだよ、真栄田」


「「そうだそうだ!」」


「不当解雇だぞ」


「「そうだそうだ!!」」


「俺たちがなにをしたって言うんだ」


「そうだそうだ!!!」


恋の反論に便乗していると真栄田君はわざとらしくため息を吐く。


「それ本気で言ってるの?」


面と向かって言われると結構ショックなものを感じる。

俺、結構頑張ってたと思うんだけどな……。


「愛久澤君はツンデレのツンが度を越してる。福田君はぼーっとしすぎ、ずっと上の空だよ」


2人ともなにしてんの……。

福はこの後の事考えるだろうからまだ分かるけどさ……。


「度を越したツンって……恋、どんな接客してたの?」


「いや、普通にさ、いらっしゃいご主人、これメニュー、まぁオムと飲み物しかないからそれでいいか、ほれ食べなって感じ」


……これはこれでありじゃないか?

クールで適度な失礼さ、嫌いじゃない。


「一応文化祭だからね。失礼のない接客じゃないと、オーダーもも勝手に決めちゃってるし」


「それもそうか、わりぃ」


素直に非を認めれるところが恋の良いところなんだよなぁ……ん?

俺は?


「ねぇ、真栄田君。俺はなんでクビなの?」


「有村君は、えーと……お連れさんが」


「お連れ?」


お連れって、未来さんのことだよね。

お連れっていうか明日香のメイド服に釣られて来てるからお釣られって感じだけど。

でもお客さんの視線を集めてるし、注目を呼んでくれてるんじゃ……あっ……。

未だに明日香にだる絡みをしている未来さんを見て気づいた。


未来さんは明日香がメイドとして働いている間は明日香を一人占めする代わりに俺と明日香のシフトが終わったらここで働くことになっている。

明日香のメイド服姿登校や教室の一角でずっと未来と明日香が絡んでることでかわいい子がいると話題になりメイド喫茶に長蛇の列。

その状態なのに未来さんがお客としていることで明日香が対応できない、イコール人手が1人分足りない&1席分回転が出来ない。


ここから導き出される答えがクビってわけね。


「でもまだシフトの時間残ってるし、この後シフトの人達来てないでしょ?」


ごもっともだね。

高校生になって初めての文化祭。

みんな楽しみなはずなんだからシフトより早く戻ってくるなんて……。


「呼んどいたよ。みんな良いって」


用意周到すぎないかい、真栄田君。

ちらりと真栄田君の方向を見ると視線に気づいたのか、ウインクを返してきた。


……これもしかして、クビっていうていで俺らを自由にしてくれようとしてる?


「高憧さん、弦本さん、西堀さんも交代で良いよ。みんな楽しんできて」


惚れてまうて。

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