第85話 自覚の無い告白

「じゃあ、俺達はあっちだから、また恋バナ聞かせてくれよ!」


「ありがとうございました!」


貼っていたブルーシートを回収し終え、未来さんや毒島先輩達と別れる。

なんやかんやあったが明日香と花火を楽しむことは出来たし、恋と弦本さんは付き合えた。

福はまぁ、残念だったが……。

高校生活は始まったばっかりだ。

そのうち福にもいい人が出来るだろう……きっと……多分……。


さてと、後は西堀さんを迎えに行って終わりだ。

福曰く、兄弟で見てたよって言ってたから集君と隼人君と一緒に見てたんだろうな、一体どこら辺で見てたんだろ?


「福、西堀さん達はどこで花火見てたの?」


返事がない。


「ねぇ、福ってば」


「……あ、ああ。もうちょっと先だよ」


……?

なんか心ここにあらずって感じ。

そういえば公園から一言も喋ってなかった。

西堀さんに告白出来なかったことが今になって効いてきたのだろうか。

まぁ、目の前で恋達の告白見ちゃったら、嫌でも意識しちゃうか……。

頑張れよ、福。

告白してないってことは振られてもない。

まだチャンスはあるはずだ。


それにしても夏はみんな恋人作りたいんだろうか。

未来さんにも恋人が出来てないのは意外だった。

こっちもすぐ出来ると思うんだけどな。

重度のシスコンってことを除けば、めちゃくちゃ美人だし、割と頭もキレるしっかり者……。

あ、あれ?

なんか似たようなことを最近聞いたなこれ。


かわいくて、しっかり者で世話焼き。

夏休み始まってすぐ男三人で集まった時に福が言ってたタイプの人だ……。

未来さんってかわいいけどもかわいいというよりも美人、明日香さえ絡まなければしっかり者で世話焼きだ。

福の理想と多少ずれてはいるが……ま、まさかね。


そうこうしてると西堀さん達の姿が見えてきた。

こちらもどうやら後片付けをしてるらしいが……西堀さんはまだブルーシートに座ってる?

置いてかれたから怒ってるのかな……悪いことしちゃったかもしれない。


「西堀さん」


こちらも返事がない。


「絢香ちゃん!」


「うわ! びっくりした。お帰り」


明日香……その近さは流石に誰でもびっくりするよ。

でも怒ってるって感じじゃなさそう。

西堀さんも心ここにあらずみたいな感じだったのかな。

っていうか顔赤くね?


「あの、有村さん」


「お、集君! 久しぶり」


「お久しぶりです。ちょっといいですか」


西堀さんの上の弟である集君に引っ張られてみんなと距離を取る。


「どうしたの?」


「あの、福田さんっているじゃないですか」


「福? うん、さっきまでここにいたんだよね」


「はい、隼人も遊んで貰って楽しかったって言ってたんですけど……」


やるやん福。

そういう地道なのが後々効いてくるかもしれない。


「もしかして、っていうか、福田さん姉貴のこと好きですよね?」


福ぅ……。

弟にバレてるよぅ。


「……そんなに態度に出てた?」


「いや、まぁ態度にも出てたっちゃ出てたんですけど、その……電話で」


電話?

電話って……え!?


「もしかして、集君達の目の前で電話出てたの?」


「……はい」


無意識という天然というか……バカなの?

「俺だって今回は西堀さんに告白できなかったし」とか本人の目の前で言ってたってことでしょ。

ってことは……。


「じゃ、じゃあ西堀さんがあんな感じになってるのって」


「それ聞いてからずっとあれです」


福ぅぅぅぅぅ……。

やらかしてるよ、やらかしちゃってるよ。

自覚がないところで告白しちまってるよ!



……いや……でも、これチャンスじゃない?

西堀さんの反応を見る限り、意識し始めてるみたいだし。

完全に脈無しではない、はず。

この事を福に言うと逆に不自然な行動を取るかも知れないし、無自覚なら無自覚のままにしておいた方が西堀さんを効果的に意識させれるかもしれない。

そうなると後は……、


「集君はどう思う、福のこと」


集君や隼人君はどう思ってるのかだ。

特に隼人君はかなりのお姉ちゃんっ子だし。


「んー、まぁ、いいんじゃないっすかね」


相変わらず軽いなぁ……でも、評価自体は悪くなさそう。


「悪い人では無いなーと思いましたし、隼人も好評価みたいですし」


俺の時とは違い隼人君からも評価されてるならますますチャンスありそうだ。


「でもまぁ、最後は姉貴が決めることなんで」


それはそう。

でも思ってたよりも福にチャンスはありそうだった。

ここから積極的に行ければもしかすると……。


「おめでとう、やっーとくっついたねぇ」


目線の先では西堀さんが明日香に抱きつかれながら弦本さんの成功報告を嬉しそうにしていた――。

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