第84話 作戦通り?

「未来さんはほんっっっとうに分かってない!!!」

「告白をなんだと思ってるのミックのバカ! アホ! シスコン!」


未来さんが恋愛オタクカップルに罵倒されてる……。

まぁ、でも今回は未来さんが悪いと思う。

花火大会はプログラムを全て終え、会場で見ていた人達が帰路につく中、俺達はその流れを逆行するように会場に向かっていた。

ブルーシートの回収や弟さん達と一緒にいるはずの西堀さんとも合流しないといけない。


「だ、だって、もう両思いなのは分かりきってたし」


グサッ。


「恋君がチキンのままだと花火終わってただろうし」


グサッグサッ。

未来さんが喋る度に恋に何か刺さってるからもう辞めてたげて……。


「……エビデぇン、俺も舞もそんなに分かりやすかった?」


「いいんだよ、頑張ったよ、恋は。よしよし」


恋の頭を手荒く撫でてやる。


告白の前、恋に対して未来さんは「君は行かないの? 好きなんでしょ舞ちゃんのこと。早く行かないとこの後来る、毒島君の弟に取られちゃうよ」と呟いたらしい。

毒島先輩が弦本さんを連れていった理由を知らない恋からしてみれば、毒島先輩の弟が弦本さんを狙ってるから、弟のために時間を作ってくれとお願いに来たのだと思い込んでしまった。

シチュエーション的にも花火大会のラストで時間が無い。

俺が今告白しないと毒島先輩の弟が来て弦本さんに告白してしまう……そう思い、焦った恋は勢いのまま告白したというのが先程起きた出来事の全容だ。

ちなみに毒島先輩に弟は居ないらしい。


にしてもよくあの一瞬で恋の恋心を的確に煽るような言葉が出てきたよなぁ……。

流石未来さん、ただのシスコンじゃない。

頭のキレるシスコン。


「もう許してあげてください。私はあっくんと両思いだって分かって嬉しかったです。それに……つ、付き合えることになり、ましたし……」


……見てるこっちが恥ずかしくなってきちゃう。

後ろで毒島先輩と朱美さんも悶えて転がってる。


「……私の作戦通り、もはや私のおかげと言っても良いよね。だから舞ちゃん、これからは私のことをおねえち……」


「本当に作戦通りなの?」


ずっと黙ってた明日香が疑問をぶつける。


「何を言ってるのマイスウィートシスター明日香、作戦通りにきまっ……」


「嘘を言うなら半年間抱きつくの禁止ね」


明日香が抱きつき禁止を発した瞬間、未来さんの顔色が変わる。

あぁ、嘘なんだなぁってこの場にいるみんなが心の中で思っただろう。

顔に出すぎてる。

でも抱きつき禁止=実質明日香吸いの禁止だもんね。

シスコンで明日香ヘビーユーザーの未来さんにとって半年はきついなぁ。

生死に関わるかも知れない。


「嘘……でした」


未来さんは振り絞るように自白する。


「なんで愛久澤君を煽るような事言ったの」


「……お互い好きって顔に書いてあるのに焦れったいなぁ、早く告白しないかなぁって、正直、舞ちゃんも君の事が好きだよって言っても良いかと思ったけど流石にそれは情緒というか風情といいますか、いとをかさないって感じでしたので」 


流石に最低限の道徳は未来さんにもあったんだねぇ。

それにしてもいとをかさないって……不覚にも少し吹き出してしまった。


「動機は?」


え、なにこれ、取り調べなの?


「舞ちゃん達が付き合ってそのまま結婚すれば、恋君は優君の弟な訳でじゃあ舞ちゃんは私の妹みたいになるじゃん? 二人目の妹ゲットだぜ! と思い行動に至った所存です」


「ふむ、被告人有罪。2ヶ月の抱きつき禁止を命ずる」


無慈悲すぎる。


「ちゃんと言ったのに!? 明日香ぁ殺生だよぅ。ただでさえ明日香にも朱美にも恋人が出来た挙げ句、この前知り合った舞ちゃんにも恋人が出来て、ハハハ、私って孤独だなぁって傷心中なのに……」


もうやめたげて!

未来さんのHPは0よ!

なんか悲しいものを見てしまった――。

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