第20話 甘いブラックコーヒー
ブーブーとスマホが振動する。
『(明日香)すごい声聞こえたけど何かあった?』
明日香からメッセージが届いていた。
とりあえず明日香と僕の生活がバレた事を報告しておこう。
『(優)バレた』
『(明日香)へ?』
『(優)明日香と一緒に住んでるのがバレた』
『(明日香)あらら、じゃあ私もリビングに行こうか』
『(優)うん。でも来る前に洗濯物取り込んでおいてね』
『(明日香)あ、忘れてた。イエッサー』
メッセージはこれでいいだろう。
問題は……。
「おい、エビデン。どういうことだよ。高憧と付き合ってねぇのに同棲してんのか!?」
「え、有村君と高憧さん付き合ってないの?あんな公開告白されてたのに!?」
これ説明するの面倒だなぁ……。
「――ということなんだ」
「「…………」」
僕と明日香の出会いを一から説明することになってしまったが、ちょっと話が重かっただろうか。
恋も福田君も完全に固まってしまっている。
「大丈夫?恋、福田君」
「エビデン……」
「有村君……」
「良い奴だなぁお前……俺、今まで以上にお前らの事応援するわ」
「俺に出来る事があったら何でも言って、協力するよ」
二人とも目をうるうるさせてるんだけど……。
他人の事をここまで本気で考えてくれるなんて
本当に良い人達だ。
「てか、高校で高憧と再会するなんて、もはやそういう運命だろ。さっさと
「そうだね。ちょっと高憧さんが可哀想になってくるよ」
重々承知している。
本当に明日香には申し訳ない。
でも、これはケジメだ。
"私が誇れる彼氏になって"
あの日、明日香がくれた目標。
僕に生きる意味をくれた。
僕を救ってくれた明日香に対する僕なりのケジメだ。
「分かっているんだけど、もう少し自信を持ちたいんだ。せめてクラスメイトには明日香の隣にいて、ふさわしい男として認められたい。もし、そんな存在になれた時には漢見せるよ」
「「おおー」」
恋と福田君が両サイドから肩を組んで、頑張れよと応援してくれている。
とても心強い。
なんとしても頑張らないと。
「あのー、すごく入りづらいんですけど……」
明日香がリビングの入り口からヒョコっと顔を出していた。
何この子照れてるんですけど。
めちゃくちゃかわいい。
……ん?
今の話聞いてたってこと?
「――なぁ福ちゃん、やっぱこれで付き合ってないのはおかしいだろ」
「ラブちゃん、俺もそう思うけど、あんま言ってあげない方がいいんじゃない……」
僕と明日香は今、並んで正座している。
二人とも顔を赤くして、
恥ずかしくて明日香の顔を見れない、だってあんなの告白みたいなもんじゃん。
それを僕のことを一目惚れですって告白した人に自分の家で聞かれたんだよ。
しかもクラスメイト二人の前で、何やってるの僕達、これじゃあバカップル……いや、まだカップルじゃないからただのバカか。
バカだよ、ええバカですよ、バカバカバーカ。
そもそも福田君があんな発言をしなければこんなことには……。
そう思いながらチラッと福田君を見る。
何を微笑んでるんだ、イケメンめ!
そういえばなんで福田君は僕と明日香が一緒に住んでるってことが分かったんだろう。
水切りかごの茶碗やお椀、洗濯物だけで人物まで断定出来るかな普通。
「福田君、なんで俺と明日香が一緒に住んでるって分かったの?」
「あぁ、それは高憧さんが言ってたからだよ」
え?
「お昼休みの時に色々言ってたんだ。昨日、優と体動かして全身筋肉痛になっちゃってとか優が作ったおにぎり美味しいとか早く帰って優の料理食べたいとか」
明日香さん?
ご飯の事は嬉しいけど言い方どうにかしようね。
そのうち絶対誤解招くよ。
その明日香の方を見ると明日香は僕のいる方向と反対の方向を見た。
「明日香、なんでこっち見ないの」
「いや、ほら、ちょっと寝違えちゃって」
かなり苦しい言い訳だね、明日香ちゃん。
「そっかそっか、じゃあ仕方ないね。俺がそっちの方向に行くよ」
そう言って僕は明日香が向いてる方向に回り込む。
「明日香、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ。なんか笑顔が怖いよ優」
明日香が笑顔が似合うって言ってたから笑顔にしてるのになぁ……。
「なんで一緒に住んでる事がバレるような事言っちゃったの?」
「信じてもらえないかも知れないけど、今、福田君に言われて、私そんなこと言ってたんだって初めて気づいたんだ。優の名前出した覚えはなかったんだけどね」
ん?
それは……、
「えっーと、つまり、無意識に自然と俺の事を……?」
「そう……だね。私、優の事大好きだから、自然と頭で優の事考えちゃってて、それが口に出てたのかも」
照れ隠しのような笑いを見せ、そう言う明日香。
恥ずかしいのはこっちだよ。
頬はどんどん熱を帯びていき、耳まで熱くなってきた。
怒ろうとしてたのに怒る気無くなるって……。
「甘めぇなぁ……俺、視覚だけで胸焼けするの初めてだぜ」
「俺のコーヒー、ブラックなのに甘く感じるよ……」
そうだった二人いたんだった。
「ごめんね。球技大会の事で集まったのに関係ない話してて、そろそろ本題に入ろっか」
こうしてようやく球技大会について話し合いが始まったのだった。
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