第93話 手は尽くしました
「……エビデンはどうだった?」
「同じく……」
「だよなぁ」
ため息を吐いて、俺と恋は
テスト結果が出た後の休み時間、俺も恋も成績は下がっていた。
何故そうなったのか、理由は明確だ。
完っ全に、いちゃつきすぎた。
問題解いてはいちゃつき、問題解いてはいちゃつき、いちゃつき終わったらいちゃつき……というムーブをかました結果が今回の惨劇を生み出してしまった。
喫茶店とか図書館とか、やたら目立つ場所や人の出入りが多いところでカップルが勉強する理由がよく分かった気がする。
人目があることによっていちゃつかないようにしてたんだなぁ。
うざったいなと思っててごめんよ、見ず知らずのカップル達。
しみじみとそんなことを思っていると明日香と弦本さんが談笑しながらやって来る。
「舞、どうだった」
「現・状・維・持、です!」
ふふんと小さな体を突き出す、弦本さん。
あがってないんだよね?
現状維持なんだよね?
「明日香は?」
「2位」
「「は?」」
見事に恋とハモった。
「すごいですよね。明日香ちゃん」
弦本さんがよしよしとしゃがんでいる明日香を撫でると、明日香もゴロゴロと喉を鳴らして答える。
猫かな?
……てかそれ俺の役目……。
「なんで俺らだけ、成績下がってんだろうな」
ほんと、なんでだろ……一緒に勉強して、いちゃついてるはずなのに……。
「優のおかげだよ」
え?
「いつもより優と一緒に居れたから頑張ろう! って気になれたからさ」
「……私も、です。あっくんのおかげで頑張れた……気がします」
「「///////」」
そんなこと、突然言われたらどんな事言えば良いか分からなくなる。
全く女子って言うのは罪な生き物だ。
「うわ、ラブコメ臭すごいなここ」
それ、どんな臭いなんだい、西堀さんよ。
なんか甘ったるそうな感じってことかい。
「西堀はどうだったんだ?」
そうだそうだ。
西堀さんだって、福といちゃいちゃ……してる構図が浮かばんな……。
「祝 首位」
わ~、流石だね~。
ん、女子はプラスマイナスでいうとプラス、男子はマイナスということは……。
「福は……」
「あー、あんな感じ」
西堀さんは苦笑いを浮かべ、親指を後ろの方に指す。
誘導されるように視線を移すと……そこには机に突っ伏す男の姿があった。
福うぅぅぅぅぅぅぅぅ。
「西堀先生! なんでこんなことに……」
「手は尽くしましたが全く集中してくれなく……残念です」
西堀さんがずっと隣にいて集中出来なかったのか……。
ごめんよ、福、俺が変に気をつかったせいで……次からはまた、みんなで勉強会するからね――。
帰りのホームルームが始まり、先生が教壇に立つ。
「やっとテストも終わって、みんな一安心だな、少し羽伸ばして、遊びに行くでも、ゲームでもしてリフレッシュしろー。おい、福田、大丈夫か」
「……ダイジョウブデス」
福……まだ突っ伏してたのか。
「今日はこれで終わり……だけど明日からは文化祭の準備に入るぞ、明日、出し物決めるから、文化祭委員とクラス委員はよろしくな」
……え、文化祭?
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