第68話 近況報告


「ではこちらで以上となります。何かご不明な点等ございましたら、ご連絡ください」


「分かりました。今日はお忙しい時期にありがとうございました」


霊園の管理人さんに礼をして、俺と明日香は今一度、お墓の場所に向かう。

お坊さんを呼び、霊園の管理人さん立ち会いのもと開眼供養かいげんくようと納骨をし終えた。

母さんが亡くなってから約半年、ようやく母さんの眠るお墓といえるものになった。

この霊園は出来たばかりで綺麗だし、家からも近くて来やすく、管理費もそこまで高くない。

担当してくれた石材店の人に勧められたのでこの場所にしたのだが選んで良かった――。


「かわいいお墓だよね。なんか恵美さんって感じがするよ」


母さんのお墓はピンクっぽい色で高さは低く、横になっている形の洋型墓石をオーダーしていた。

日本によくある縦に長い、和型の墓石よりもこっちの方が母さんに似合う気がしたし、霊園ってこともあり洋型の方がしっくりきた。

この出来ならば母さんもきっと満足してくれるのではないだろうか。

すると明日香がお墓の前でしゃがみ、合掌する。

さっきまで納骨とか開眼供養で合掌してたのに……まぁ何回やってくれても全然構わないけど。


「私、優の彼女になれました。恵美さん、優を産んでくれて、育ててくれてありがとうございました。これからは私が優の事を支えます。だから安心してください」


俺がいるのに、こういうことを口に出して言うんだもんなぁ……。

狙ってやってるんじゃなくて素だし、本当、明日香のこういうところも好きだ。

俺も近況報告しとこうかな――。


「優は恵美さんに何を報告してたの?」


帰り道、明日香は近況報告の内容を聞いてくる。

そんなに気になるかな?


「守るべき大切な人が出来ましたって」


「そっか……ふふっ」


嬉しそうだね。

現状、俺の方が明日香に助けられてばかりだけど……。


「あと、親友が兄弟でしたって」


「3日後に会うんだよね、お父さんと……私も行こっか?」


「ううん。多分サシで話す事になるし、大丈夫だよ」


「そっか」


あの後、恋からメッセージは何もない。

そうだよね。

俺もメッセージを送れていない。

だって、俺が兄弟と知ったときの恋はすごく申し訳なさそうにしてたから。

以前、恋と福に俺と明日香の出会いを話したことがあったけどその時のことを覚えててくれたのかな。

だとしたら恋は辛い……よね。

父さんが浮気をして俺と母さんが苦労したってことを知ってるから。

そしてその人物が自分の父親ってことが分かってしまったから。

本当にごめん、恋。

恋は全然悪くないのに……。


っていうか父さん酷すぎない?

浮気は知ってたけど俺と恋、同じ年齢だからね?

子供がお腹の中にいるときに堂々と仕込んでるんじゃないよ!

なんかだんだんムカついてきた。


「明日香、今日はいっぱい料理作るから食べるの付き合って」


「やったー! 作るの私も手伝うね!」


このあと2人でめちゃくちゃ食事した――。


一面水色の空に縦に大きな雲が1つ。

アニメとか漫画でよく見るザ・夏の空という光景が広がっている。

俺の頭の中と真逆のような光景だ。

あれから、色んな事を考えてしまう。

今更父さんは俺と何を話したいのか、浮気をした理由は何なのか、本当に俺と母さんをを捨ててまで浮気をする必要があったのか、そして何より恋と親友のままでいられるのか。

おかけで寝不足のまま、とうとう父さんと会う日を迎えたのだった――。

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