第108話 策士
「なるほど……こういうことだったか……」
家を出てすぐに何故、佐和山さんがメイド服姿で登校して来てと言ったのか理解した。
周りの人からめっちゃくちゃ見られとる。
びっくりするくらい注目の的なんだけど。
道行く人達は男女問わず、メイド服姿で優雅に登校する美少女から目を離さない。
そんな視線を集めている明日香は本人は愛想良く微笑んだり、手を振ったりしていた。
順応するの早すぎない?
佐和山さんの狙いとしては明日香に広告塔となって貰おうということだろう。
うちの学校が今日、文化祭をやるということはここら辺の人はほぼ知っているし、メイド喫茶はうちのクラスのみ。
メイド服姿のかわいい子がいたとなれば自動的に1-Cのメイド喫茶に人が集まるということになる。
しかも、学校外での広告となれば、全校生徒だけでなく一般の人達も取り込める。
文化祭が始まる前から
「この調子だといっぱい、お客さん……じゃなかったご主人様、来てくれそうだね」
……わざと言ってんのかな。
俺は明日香を隠すように前に出る。
「……どしたの優」
「……」
クラスの一員としてはお店にお客さんが来ることは喜ばしいことだけども、1人の男としては彼女が他の人にそういう見られ方をするのは複雑な気持ちがある。
俺って独占欲強いのかもしれない。
そんなことを思っていると明日香はこっちの顔を覗き込むように見て、ふふんと笑う。
「私、優のそういうとこかっこかわいくて好きだなぁ」
なんでそういうこと自然に言えるかな。
小っ恥ずかしいんだけど――。
「で、どうだったかね。美少女メイドを見せびらかしながら登校するのは」
教室に着いて早々、佐和山さんがにやにやしながら近づいてくる。
「来たな、策士め」
「おやおやぁ、お褒めにいただき光栄です」
くっ、いけしゃあしゃあと……。
「鈴ちゃんシフト調整してくれてありがとー」
うちの明日香をたぶらかしてくれちゃって!
お陰で朝から…………は、恥ずかしい思いをしたし!
「有村君、Win-Winな関係だったでしょ。うちのクラスは繁盛間違い無しだし、そっちは2人の時間を多く取れるしね」
「……まぁね」
そう言われるとそうなんだよね。
っていうか俺もこのクラスに属してる以上、良いことしかない。
少し恥ずかしい思いをしただけ……っていうか控えめに言って天国でした。
ありがとうございます。
「絢ちゃんの事も、よろしく頼むよ」
ぼそりと俺にだけ聞こえるようなトーンでささやく。
その事も込みで俺が動きやすいようにしてくれたのかな。
福と西堀さん、今日が運命の日だもんな。
……上手くいってくれるといいけど。
「あ、そうだ。最後に1つ、2人ともあの人の対応よろしく」
「「ん?」」
佐和山さんが指を指した方向を見るとクラスメイト達がその人を囲っている。
ちらちら、その人が垣間見えるのだが、何故居るのだろう。
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