第47話 修羅場……?

「弦本さん、今まで恋にどんなプレゼントあげてたの?」


「私も気になる。アドバイスが必要って相当……あれってことだよね」


あはは……と弦本さんは苦笑いを浮かべる。

ていうか誕生日プレゼント貰って嬉しく無い人っているんだろうか。

そもそも恋は弦本さん好きなはずだし、好きな人から誕生日プレゼント貰って喜ばないっていうのが引っ掛かる。


「え、えーと……去年はくまのぬいぐるみでした」


……男に?

いや、ぬいぐるみ好きな人もいるだろうけど、恋がぬいぐるみ好きな感じ……ではないよね。

でも、俺が明日香から誕生日にぬいぐるみ貰ったら嬉しいし、恋も嬉しいんじゃ……。


「ちなみに一昨年は?」


「……リボンです」


リボン!?


「三年前は?」


「……ティーカップ……です」


俺と西堀さんで顔を見合せる。

恋って女の子だったっけ?


「男の子へのプレゼントだよね?……愛久澤君なら割となんでも喜んでくれると思うけど、ちょっとこれは……」


俺もそう思う。


「そうですよね……私もそう思うんですけど、選んでるうちにどうしてもあっくんに似合いそうだなぁって思っちゃって」


ぬいぐるみ持って、リボンつけて、ティーカップに入った紅茶をたしなむ恋なんて…………あれ、割と合いそうだな。

メルヘンなテーマパークにいそう。

結局イケメンにはなんでも似合う。

ずるいよなイケメンって。


「愛久澤君って何が好きなのかな」


恋の好きなものねぇ。

……サッカーとゲーム、後は弦本さんかなぁ……。


「あっくんはサッカーとゲームをこよなく愛してますね」


これ完全的中でしょ。


「でも、サッカー関連の物はあまり欲しがってませんし、ゲームもソフトを買うっていうのは……」


確かに……。

恋ってサッカー辞めちゃったらしいし、ゲームソフトを友達に買うっていうのはちょっと違う気がするよね。

ん?

じゃあ残る選択肢って……。


「ねぇ、有村君」


思いつくと同時に西堀さんが耳元で喋りかけてきた。


「弦本さんと愛久澤君って両思いだよね、多分」


「多分ね」


多分っていうか、ほぼ確定だと思ってるけど。


「ならさ、こういうのはどうかな……」


西堀さんの提案を聞いて、俺もにやりとする。


「実は俺もおんなじこと思ってた」


――プレゼント選びを終え、3人でショッピングモール内のカフェで一休み。

時刻は12時を過ぎようとする頃。

そろそろ明日香も帰ってくるかな。

とりあえずメッセージだけいれておこう。


『(優)買い物してて家に居ないよ』

『(優)お昼ご飯、冷蔵庫に入れておいたからチンして食べて』

『(明日香)ラジャ、出来ればアイス買ってきて🙏』


暑いしね。

今日はお高いやつ買っていってあげよう。

補習頑張っただろうし、明日香に内緒で出掛けてしまったし……。

コーヒーを飲みながら、明日香にOKとメッセージを送る。


「もしかして高憧さん?」


西堀さんがにやにやしながら聞いてくる。

不意を突かれてコーヒーを吹き出しそうになった。


「なんで分かったの」


「分かるよ。顔が全然違うもん。ラブラブですなぁ」


「本当、うらやましいです」


弦本さんも乗ってきちゃった。

同じクラスの女子2人にこういう詰められ方するのは恥ずかしすぎる。


「弦本さんも恋とどうなの?」


誤魔化す為に弦本さんと恋の話に無理やり転換する。

するとみるみる顔が赤くなる弦本さん。


「こら!女の子にそういうこと聞いちゃダメでしょ。デリカシー無いなぁ」


西堀さんに怒られた。

俺ならいいのかよ!

男だって恥ずかしいんだぞ。

でも、確かにデリカシーに欠けていた。

ちょっと反省。


「あの……そんなに分かりやすいでしょうか」


「「うん」」


二人で即答する。

面食らってあうあうしてる、弦本さん。

かわいい。


「弦本さんっていつから愛久澤君の事好きになったの?」


おい!

女の子にそういうこと聞いちゃいけないんだぞ!

俺も気になるけどさ。


「……中学生の頃ですかね。それまでは面倒見の良いお兄ちゃんみたいな感じに思ってました。同じ年ですけど」


「ふんふん。きっかけとかあったの?」


ぐいぐい行くなぁ、西堀さん。

ひょっとして俺よりデリカシー無いのでは……?


「中学2年生の時にサッカー部の先輩からしつこく付きまとわれてて……。それを助けてくれたのがあっくんだったんです」


かっけぇなぁ恋。

男子の憧れシチュエーションの一つをやってのけるなんて……。

想像するのは簡単だけど、実際にそれをやるのは相当勇気がいるはずだ。

しかも、相手は同じ部活の先輩だし……。

恋は漢の中の漢だよ。


「でもその先輩があっくんに関してあること無いこと噂をばらまいて、あっくんはサッカー部に迷惑かけるからってサッカー部辞めることになってしまって」


最低だな、その先輩。

……球技大会の時、恋と福の顔が曇ったのはこれが原因か。


「でも今はその先輩いないんだよね?愛久澤君サッカー部戻っても問題無いんじゃないの」


確かにそうだ。

その先輩さえ居なければ問題なさそうだし、ブランクがあるって言ったってあれだけ上手い恋ならすぐに取り戻せそうだが……。


「そうなんですけど、その……福田君以外にも中学の時一緒だったサッカー部の人がいて、その人が先輩に加担してたって言うか……。その人も高校に入ってからあっくんに謝ったんですけどあっくんがもういいからって」


その人も謝ったなら先輩から言われて仕方なくやったのかもしれない……そうかもしれないけど、正義を貫いた恋が好きなサッカーを辞めることになって、悪に加担した人がまだ続けているっていうのがなぁ……。


「有村さん。もし良かったらなんですけど、たまにあっくんとサッカーしてあげてくれませんか。多分、あっくんもサッカーしたいと思うので」


「うん、全然良いよ。俺もサッカーしたいし、むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」


ありがとうございますと笑顔で言う、弦本さん。

こんなに思ってくれてる子がいて恋も幸せ者だね――。


目的も果たしたし、休憩も出来たのでそろそろ帰ろうかという流れになった。

席から立ち上がり、店の外に出た瞬間、後ろからヘッドロックされる。


え、なになになに?

なんか顔にたわわなものが当たってるし、良い匂いがするんですが!?

ていうか誰!?

目の前には西堀さんと弦本さんが驚いた表情をしている。

こんなにスタイルの良い女性の知り合いなんて……あ……。


「私の妹がいながら浮気とは良い身分だね、優君」


……未来さんだ。

めっちゃ怒ってらっしゃる。


これ物凄くやばいところを見られたのでは……。

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