第1話 涙で濡れたスカート①
告白された後の記憶が全く無い。
びっくりするくらい何も憶えていない。
「あの自己紹介は反則だよ」
彼女はそう言って隣でずっと笑っている。
彼女曰く僕は告白された後、喋りかけてもキョトンとした顔のままフリーズしてたらしい。
その後クラス担当の初老の男性教師が来て、自己紹介となったのだが、キョトンフリーズしている僕を見て、名前、好きな食べ物の順番で聞いていたのを好きな食べ物、名前の順番に変えたらしくその結果――。
「好きな食べ物は?」
「
「あなたの名前は?」
「エビです。よろしくお願いします」
頭が全く回転していなかった僕はこう答え、入学して1日で僕はクラスのいじられキャラが確定した。
もうやだ泣きたい。
ただでさえクラスメイトの前で告白されて目立っているのに、さらに目立つことになるなんて。
先生、みんなの緊張解きたかったんだろうけどネタにする生徒もう少し慎重に選んでよ……
そして今、僕は告白してきた
面識もない上に校内NO.1と言われてもおかしくない整ったビジュアル。
そんな彼女が初対面の絶賛生きた屍状態の男に告白とは正直、
告白してくる男を避けるために先手を打ったとか、それくらいしか思い当たらないのだが……
そんな事を考えて歩いていると我が家に着いてしまった。
とりあえず鍵を開け、ドアを開けると、
「ここが優の家かぁ、お邪魔します」
彼女が我が家に入る。
靴を脱いでリビングへ通すと簡易的に作った母のお参りスペースの前で彼女は立ち止まった。
小さいテーブルの上に遺影と香炉と
「
彼女はこちらを向いてそう申し出た。
何故、彼女が母を知っているのだろうか。
とりあえず、うんと頷き許可を出す。
本当に彼女は何者なのだろうか。
彼女がお参りを終えるのを確認し、とりあえず僕は飲み物を準備しだした。
「お茶とコーヒーとりんごジュースどれがいい」
「うーん。りんごジュースで」
あいよと呟き、りんごジュースを二人分用意してソファに座る。
「このりんごジュース美味しいよね。私も好きなんだ」
なんか懐かしいなとふと思う。
僕が小さいとき、よくりんごジュースをこのソファーで母さんと一緒に飲んだっけ。
それでりんごジュースを溢してソファーもカーペットもぐしゃぐしゃにってあれ……
自然と涙が出てきた。
止めたいのにポロポロと出てくる。
隣に今日知り合ったばかりの女の子もいるのに恥ずかしすぎる。
「大丈夫?ほら横になって」
膝元をポンポンと叩き彼女はそう言う。
「いや、でも……」
「いいから」
彼女は
女の子独特の良い香りと柔らかな感触を感じる。
ふと彼女を見上げると
「ちょっとチクチクする」
と微笑みながら僕の頭を撫でていた。
落ち着く。
そういえば長らく気が休まる事なんてなかった。
とても心地良い。
落ち着いてつい油断したのだろう。
「なんで君は僕に告白して、なんで母さんの事を知っていて、なんでここまで優しくしてくれるの?……初対面なのに」
気づくと僕は彼女に対して溜まっていた疑問を全て口に出していた。
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