第4話 いつもと違う朝

「はぁ……学校行きたくないな」

朝を迎え、昨日抱いだいたこれからの生活が楽しみという思いは下方修正されていた。

入学初日にクラスの超絶美少女に公開告白され、なおかつ自己紹介で教師の罠にかかったため、まぁロクな扱いを受けない事は分かりきっていた。


だがしかし、明日香がくれた目標のためにも頑張らなければいけない。

誇れる彼氏が登校2日目で不登校はちょっと頂け無いだろうし。 

頑張りますかと呟いて、頬を両手でパチンと叩き気合いを入れた。


歯を磨いて、掃除、ごみ捨て、朝食作りといつも通りの行動をしているとインターホンが鳴った。


「おはよー優、入っていい?」


どうやら明日香が来たようだ。

インターホンにどうぞと返す。

ガチャリと音がしてお邪魔しますと言いながら明日香が入ってきた。


「いい匂いだね。朝ごはん今から?」


うんと頷き、朝食の準備を続ける。


「卵焼きに焼いたウインナーにおひたしにお味噌汁かぁ。優は料理上手だね。私も少し貰っていい?」


そう言いながら明日香は朝食の並んでるテーブルに着く。

棚に入ってた割り箸を取り出し、明日香にどうぞと渡す。

くるしゅうないと言わんばかりに左手を腰に当てて右手で割り箸を受けとる明日香、パキンと割り箸を割いて、いただきますと言うと明日香は卵焼きを一切れ口に運ぶ。


我が家の卵焼きは砂糖とみりんが入っており、最後にだし醤油をかけて頂く、甘じょっぱスタイルの卵焼きだ。

みりんを入れることでふわふわ感が増す母直伝のレシピである。

反応を見る限り明日香にも好評だったようで、


「んー美味しい!優、ご飯も頂けますでしょうか」


はいよと返し、お客さん用の茶碗にご飯をよそい明日香に渡すついでに率直そっちょくな疑問を問いかけることにした。


「明日香はご飯食べてこなかったの?」


「ぐぬぅ……食べてきました」


「体重大丈夫?」


カッチーンと思い切り声がした。


「はい今、優はとっても大きな地雷を踏みました。大爆発して優は木っ端微塵です。」


怖すぎんだろ。

そんな一発で死ぬような大きな地雷なら人間が踏んでも爆発しない気がするんだけど……

ちょっとストレートに言いすぎたかな、とりあえずごめんと謝っておく。


「女の子に体重の事はタブーだよ。道徳の授業で習わなかったの?全く、もう」


そう言いながらばくばく食べる明日香。

道徳にそんな内容の授業あったっけな。


そう思いながら自分のご飯をよそい、席に着く。

手を合わせいただきますと言い、味噌汁に口を付ける。

ちょっと冷めてしまったがこのくらいのぬるさが自分の好みなので丁度良い。


にしても美少女が自分の作ったご飯を美味しそうに食べてる絵面、控えめに言って最高だ。

今日のご飯はいつもより美味しく感じる。

1人じゃないご飯なんて久々だし、なにより明日香の食べっぷりを見ていると自然と僕も箸が進む。


「ゆ、優……ご飯のおかわりとお味噌汁も貰える?」


遠慮がちに明日香がご飯と味噌汁を要求していた。

結構食べるんだなと思いながら、体重……とボソリと呟くと三度目は無いよと低い声で牽制けんせいしてきた。


物凄い威圧感……

からかうのは程々にしよう、そう心に誓い、明日香の分のご飯と味噌汁をよそいにいった。


二人とも朝食を終え、我が家を出る。


家から学校までは歩いて10分くらいなのでギリギリまで家でゆっくりできるのだが、朝食を片付けてる間に雨が降ってきたので、余裕を持って出ることにした。


「いきなり相合傘イベントとは持ってるね。」


明日香は上機嫌でそう言う。

我が家には傘が2本しか無く、1本は今使っている男性用の傘、もう1本は母さんが使っていた女性用の傘なのだが、母さんのはちょっとデザイン的に高校生が使うものとしては年相応では無かったのでお留守番していて貰うことにした。


結果として1本の傘で明日香と相合傘してる訳だが……

視線が痛い。


「あの子達初々しい~。」

「見たこと無い子達だけど一年生かな」

「男の子の方なんて必死に傘持って彼女濡らさないようにしてる」

「あ、顔赤くなった」


そりゃ、赤くなるでしょ。

わざとこの人達聞こえるように言ってるのかね。


ふと明日香の方を見てみる。

満足そうにしてにこにこしていた。

この状況すら楽しんでいる……だと。

メンタルどうなってんのこの子。


「明日香は恥ずかしくないの?」


「何が?」


「ほら、相合傘について周りの人達からなんか言われてること」


明日香はちょっと考えて、


「うーん、恥ずかしくない訳じゃないけど、今は好きな人と一緒に同じ時間、同じ空間を楽しんでるって感じがして私は嬉しいよ」


と笑顔のまま言って見せた。

本当、この子は……

なんでこう恥ずかしいことをさらっと言っちゃうのか。

こっちが恥ずかしくなる。


そんなやり取りをしてる内に学校に着いた。

下駄箱に靴を入れて内履きに履き替える。


一年生のクラスは三階にあり、進級する度に階層が二階、一階低くなっていき楽ができる。

年長者を敬うスタイル。

くっ、早く進級したい。


階段を上り終え、自分のクラスである1-Cに明日香と一緒に入ると、予想通りざわざわしだすクラスメイト、入り口のところでじゃあまた後でと明日香と別れ、自分の席へ座ると、


トントンと肩を叩かれた。

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