第34話 あっくん
「恋は分かるけど、みんなはなんでいるの?」
「私は優が図書館で勉強するなら、私も図書館でやろうかなって、教えて欲しいところもあるし……」
「俺はテスト前で部活休みだから図書館で勉強しようと思って来たら、みんないたからさ。分からないとこあったら聞けるし、良いかなと思って」
「私はシンプルに勉強が出来ないので……あっくんにいつも教えてもらっていて、今回もそうしようかと……」
あっくん?
頭にハテナが浮かぶ。
そんな人いたっけと思いみんなの顔を見る。
福は違うし、明日香は"あ"から名前が始まってるけどあっくんって呼ばれるとは思えない。
どっちかというとあっちゃんだろう。
そうなると……恋に目が行く。
「なんだよ」
なんか恋が不貞腐れてるような表情をしている。
いや、ちょっと照れも入ってるのかな?
「あっくんさんですか?」
「だぁー、やめろその言い方。舞もみんなの前でその呼び方するなよ」
そういえば恋の名字は愛久澤だった。
だからあっくん。
へぇー、この呼び方して良いのは弦本さんだけってことかぁ。
にやにやして恋を見る。
「なんか言いたいことでもあるのかエビデン」
「いや、べっつにぃー」
「くそ!腹立つけど勉強教えて貰わねばならないから、反撃できねぇ」
人のこと、隙あらばいちゃつくとか言うからだぞ!
少し仕返しできてスッキリした。
さぁ、気合いを入れ直して勉強しようか――。
「エビデンここはどうやれば良い?」
「ここはこの公式を当てはめてみて……そう。後はそれを応用すればいけるよ」
「おう、分かった。サンキュー」
やはり恋はそこまで頭が悪い訳ではない。
まぁ奨学金制度を使えてるんだから入学した時は半分より上にいたのは間違いない。
ちゃんと教えれば分かってくれる。
問題はこっちだ……。
「優せんせー。ここがよく分からないです」
国語の主人公の心情を答える問題。
他人の心情を正解するのは相当明日香には難易度が高い。
これどう教えれば良いかな……。
「こういう問題は先に本文じゃなくて、選択肢を読んでみて。テストの時は四択とかになってるはずだから」
僕の横から出てきた西堀さんがアドバイスを贈る。
「西堀さん!?どうしたの」
しっーと人差し指を口元に近づける西堀さん。
そういえばここ図書館だった。
ボリュームを下げて会話する。
「テストの勉強をしようと図書館に来てみたら、有村君が大変そうにしてたから手伝おうかなって」
「いや、西堀さんに悪いし……」
「いいよ。私も教えることで勉強になるし」
「アリソン。ここどうやればいい?」
今度は福か……。
確かに僕1人で複数人教えるのは無理がある。
猫の手も借りたい状況だし……。
「じゃあお言葉に甘えて、西堀さん頼める?」
「任せて」
面倒なことを頼んだのに、何故か嬉しそうにそう答える西堀さん。
本当に良い人だ。
――こうして僕らは一生懸命、勉強に取り組み始めた。
僕と西堀さんでみんなの分からないところを答えでは無く、どうやったら解けるかヒントを出す感じでサポート。
答えを教えてるだけじゃ、ただの暗記だし、考えないと人って覚えないしね。
それにしても西堀さんの教え方が的確だ。
なんていうか聞き上手。
どこがどう分からないのか、
その上でここが分からないならここが大事みたいな感じで解説してるので質問してる側もすんなり頭に入ってくる。
西堀塾みたいなの開校したらすごい儲かりそう。
こんな感じで月曜日から金曜日までみっちり勉強漬けにしたが、恋はまだ不安そうにしていた。
赤点は余程のミスがない限り大丈夫そうだし、平均点も越えれそうなレベルなのだが……。
「エビデン。悪いけど日曜日にお前んち行ってもいいか?英語がどうしても不安でよ」
なんか意外だ。
恋って勝手にここまで来たら勢いでいけるだろ、おりゃーって感じだと思っていたのだが……。
思ったよりも用心深い。
まぁでも苦手な教科ってやればやるほど不安になるよね。
僕もそうだし、気持ちはよく分かる。
「いいよ。ここまで来たら俺もベスト10くらい狙いたいし」
「恩に着るぜ、エビデン。埋め合わせはちゃんとするからな」
埋め合わせなんていいのに……。
恋から目を移すとみんながこっちを見てる……あれ、これって……。
「みんなもうちに来て勉強……する?」
「「「行く!!!」」」
「図書館ですよ!静かにしなさい!」
司書さんいたんだね……。
「「「……はい」」」
こうして我が家にて勉強会を開催することになってしまった。
恋と福には同棲バレてるけど弦本さんと西堀さん相手に隠し通せるだろうか……。
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