第43話 恋人

「「「お前ら付き合ってなかったのかよ!!!」」」


借り人競争が終わり、クラスに戻ってくるとクラスメイト全員からツッコまれる。

明日香から告白されたし、恋も「お前らの負けだ」みたいなこと言ってたから、そりゃ付き合ってると思うよね。


「付き合ってないなら俺らもチャンスあったかもしれねぇのに」

「いや、それはないだろ……」

「無理無理、あんたらが有村君に勝てる訳ないでしょ」

「ぐぬぬぬ……そうだけども……」

「でもまぁ改めて、このカップル納得っちゃあ納得だよな」

「だよねぇ……高憧さんと言えば有村君って感じだし、有村君って言えば高憧さんって感じだし」

「お似合いの二人だよね」


……嬉しい……嬉しいな。

クラスのみんなには明日香の隣に相応しいと思って貰えた。

初めて自分で立てた目標をクリアできた気がする。


「おめでとう、アリソン、高憧さん」


福ぅー。

やったよ俺!


「いやぁ、お題読まれた時はびっくりしたよ。結婚したい人だもん。付き合うとか飛ばしていきなりだもんね」


うんうんと頷く、俺と明日香。


「でも、既に二人は同棲してるし、結婚も秒読みみたいなもんだよね」


笑いながら話す福に対して、あれだけ騒がしかったみんなが静かになる。

こんのバカ福!

またやらかしたな!!

前科持ちだかんなお前ぇ!!!


「なんか今福田君、変なこと言わなかった?」

「二人が同棲?高校生で?」

「んなわけないよね。ねぇお二人さん」


衝撃的すぎて、みんなまだ疑ってる。

これなら誤魔化せる!


「そんなわけないでしょ。俺ら今日、付き合い始めたんだよ?それなのに同棲だなんて……ねぇ明日香」


我ながら完璧なポーカーフェイスと演技。

これで一安心……あ、明日香?

明日香さん!?

なんでそんなわざとらしい口笛してるの!?

明らかになんかある奴の行動だよそれ。

しかもちゃんと吹けてないし……。


「ゆ、ゆ、優と、ど、ど同棲だだなんてしてないよ」


「「「してんだろこれ!!!」」」


ということでクラスのみんなに同棲がバレました――。


「散々だったなエビデン。でも隠し事無くなってこれからは伸び伸びと出来るじゃねぇか」


体育祭の帰り道、恋が励ましてくれていた。


「福はしばらく許さない」


「ごめんってアリソン」


あの後めちゃくちゃ質問攻めにされて、大変だったんだぞ!

ごめんで許されると思ったら大間違いだ!


「にしても、俺も悪かった。ごめんなエビデン。冗談で書いたお題が紛れちまってた。捨てたはずだったんだけどな」


恋は借り人競争が終わった後、先生や実行委員会の先輩にめちゃくちゃ叱られてたらしい。

道理でお昼休みの時居なかった訳だ。


でも実際、別な人があのお題を引いていたら、結構やばかったよね。

公開処刑すぎるお題でフラれた時の空気感もそうだが、下手するといじめに直結しそうだし。


「私は嬉しかったよ。グラウンド真ん中でみんなが見ている中、告白なんてなかなか体験出来ないだろうし、ありがとうね愛久澤君」


明日香……本当にメンタル強すぎない?

俺、心臓バクバクだったんだけど……。


「そう言って貰えると助かるわ。改めておめでとうな二人とも」


「おめでとう」


「おめでとうございます」


恋に続いて、福と弦本さんも祝福してくれた。

ありがとうみんな。


「今日はそろそろ分かれませんか、お二人も色々あるでしょうし」


「そうだな、熱々のカップル邪魔しちゃ悪いしな」


「あんまり進みすぎないようにするんだぞ、アリソン」


恋と福がニヤニヤして茶化す、それを弦本さんが注意しながら別の道へと行った。

余計なことを……キスまでしたのにこれ以上進むなんて……。

いや俺も男だしさ、そういう行為に興味がない訳じゃないけど、流石に告白初日にそれは早いというか……。


「進みすぎないようにってなんだろうね?家の場所なんて間違えないのになぁ」


ピュアすぎる!

俺の彼女めっちゃピュア!

なんて汚れているんだ、俺の頭は……。

ていうかそんな行為したら仁さんと未来さん逝ってしまう。

ちなみに午後になって再び仁さんと会話したのだが結婚したい人ってお題が読み上げられた時、仁さんは泣き出して、未来さんは失神して保健室に運ばれたらしい。

愛が重いって未来さん……。


「何か考え事?」


「ううん。本当に俺達、恋人になったんだなって思って」


「ふふっ、そうだね……」


嬉しそうに笑う、明日香。

そんな顔を見るとこっちまで嬉しくなる。


「ねぇ、優。これからもよろしくね」


「こちらこそよろしく、明日香」


手を取り、指を絡ませる。

恋人同士になった二人が仲良く家に向かって歩き出す。


日が沈みかけ、いつもより赤く染まる夕空。

本格的な夏が近づいていた――。



※物語の第1章(前半くらい)が終了です!

ここからは毎日投稿ではなく水曜日の18時前後と土曜日の午前の週2回投稿となります。

ご迷惑をおかけしますがこれからも読んでいただけると嬉しいです。

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