第31話 仁さんごめん
「色んなお茶碗あるねー」
そうだねと返し、お茶碗が陳列されてる棚を見る。
色々なサイズ、色々なデザインのお茶碗が並んでおり、つい目移りしてしまう。
「優、見て!三人家族用のお茶碗だって、子供用のお茶碗ちっちゃくてかわいい」
そう言われて見てみると、大中小のお茶碗が並んで売られていた。
なんかマトリョーシカみたいだ……。
そう思ってふと、視線を上に移すと2つでセットになって売られているお茶碗があった。
「明日香のお茶碗も買う?」
「え、私の使ってるお茶碗欠けたりしてないよね?」
「そうなんだけどさ、今、明日香が使っているお茶碗。あれ元々母さんのお茶碗なんだ。家で食べることなんてほとんど無かったし、ちゃんと念入りに洗ってから明日香に使って貰ってるけど……嫌だった?」
「全然嫌じゃないよ。私、人が使ったとかあんま気にしないタイプだし。恵美さんのなら全然オーケーだよ」
「母さんがいなくなってからご飯を小皿に載せて仏壇にお供えしてたけど、ここに2つセットのお茶碗売ってるから、これを買って、明日香の使っているお茶碗を母さんの仏壇にお供えするときに使おうかなって」
「いいね。その案採用!そのセットのやつってどれ?」
これと指差して明日香に見せる。
「……ふぅーん、優はこれがいいんだ」
なんかにやにやしてる明日香。
なんか変だったかな。
片方が青で大きめのサイズ、もう片方が赤で小さめのサイズだがデザインは同じのお茶碗。
男女が使うならこれがいいと思ったんだけど柄が一緒なのが駄目なのかな?
「嫌だった?」
「ううん。私は好きだよ、このお茶碗。優が良いならこれで良いよ」
「じゃあ買ってくるね。お店の外で待ってて」
了解と言って、店の外に出ていく明日香。
なんか上機嫌っぽい?
なんでかなと思いつつも明日香が喜んでるならなんでもいっかと楽観的に考え、レジに向かう。
その途中、あるものが目に留まった。
そういえば明日香……。
……これも買っておこう。
――会計を終え、店の外に出ると明日香がいない。
どこにいったんだろ。
トイレかなと思ったがアミューズメント施設の事を思い出す。
ナンパ……。
土曜日のショッピングモールで美少女が1人……あり得る。
急いで探さないとと思った瞬間、ポケットに入れてるスマホが鳴った。
『(明日香)トイレにいるからちょっと待ってて』
良かったとほっと胸を撫で下ろす。
『(優)了解。さっきのお店の前で待ってようか?それともフードコートでハンバーガーかなんか注文しておく?』
『(明日香)ハンバーガー!大きいやつ!ポテトセットで飲み物は炭酸で!』
相変わらずの食欲だね……。
了解と送り、僕はフードコートにハンバーガーを注文しにいった――。
「お待たせー優、待った?」
「ううん。ほら丁度今出来たみたいだよ。本当にこれで良かった?」
「うん!食べてみたかったんだよね、ハンバーガー」
僕はこのサイズのハンバーガーあんま見たこと無いけどね。
店員さんに大きいやつってどれですかって聞いたら、このエッグダブルチーズマシマシギガバーガーをおすすめされた。
ていうかハンバーガーも初めてなんだ。
なんか意外な感じがする。
「ジャンクフードとかは私の家禁止だったからさ、憧れがあったんだよね」
仁さんならあり得るか……。
明日香、結構食べるし、塩分過多で脂肪分も取りすぎになっちゃうのは良くない。
ということは仁さんほぼ毎日、健康的な食事を作っていたのか……。
仁さんは本当に天使なんじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、いただきますと声がして、明日香が顔と同じくらいのサイズのハンバーガーにかぶりつく。
モグモグと口が動き、ごっくんと飲み込むと目が輝く。
「美味しい!ハンバーガーってこんなに美味しいんだね。ハマりそう」
ごめん仁さん。
僕のせいで娘さんに悪いことを教えてしまったかも知れません。
でも、こんな満面の笑みで食べる明日香を見てると提案して良かったなとも思う。
「ポテトも出来立てで美味しい!優はオニオンリングのセットにしたんだ。いいなぁ。ポテトあげるから1つ頂戴」
明日香はポテトを持って僕の口に近づける。
え、これってあーんってやつでは……。
ていうか僕も同時にオニオンリング食べさせるの!?
またバカップルムーブになってしまう。
周りの視線が痛い。
近くを通る人達のほとんどが見ている気がする。
さっさとやった方がいいと判断し、明日香の口にオニオンリングを運び、ポテトを食べる。
「オニオンリングも美味しいね!」
ポテトの美味しさより羞恥心が勝つ。
僕は味よく分からなかったよ……。
本当に明日香のメンタルどうなってるんだろう……。
「どうかした?」
ううん何でもないと言って誤魔化すように僕もハンバーガーを口にする。
あ、美味しい。
久しぶりにハンバーガー食べたけどこんなに美味しかったっけ。
明日香がすごい勢いで食べてるのも
まぁそれはいつものことなんだけどね。
結局、明日香はものの10分足らずで完食した……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます